千歳の祖父であり、偉大すぎる画家・月代白阿の死後からはじまる物語。
祖父の絵画はどれだけ評価されていたのか克明に描写はされるが、その絵画自体の描写が、意図的なのか曖昧にぼかされています。
(第1話の『一般人から見ればなんてことない風景描写などなど』と)
そのため、本作で重要となるであろう、祖父と千歳の『才能の差』がどれほどなのか、このレビュー時点の最新話(第4話)では不明なままになっています。
それは、これから千歳の『絵を描く』という行為と意味によって明らかにされるのだろうと思われます。
文章は若干詩的でそれが読みづらくも感じました。
しかし、千歳の心象など、丁寧に描写されている部分もあるため、その書き分けがうまくできれば、詩的で美しい文章になるのではないかと思います。
たとえば、第2話の最後、千歳が絵を描くシーンなどは、三人称一元視点の千歳の独白と神視点が混じり合ったような印象を受けました。
『それはきっと千歳の色』までの文章は、千歳の心象が丁寧に描写され、これから彼がどのような絵を仕上げるのかワクワクするような書き方だったため、その書き分けがやはり重要なポイントかと思いました。
公開されている第3話まで拝読しました。
偉大な芸術家を祖父に持った主人公。彼自身も優れた画家だったが、祖父の圧倒的な才能の差に絶望し、筆を折ってしまう。物語はそんな偉大な祖父の死から始まります。
『芸術』を題材にしている点がなかなか他作品にない個性として、キラリと光っています。私も文章を『書く』という創作をしていますが、やはり何かを表現する世界にはそれぞれの葛藤がありますよね。登場人物たちの描写が丁寧な文章で書かれていて、タグにある純文学にふさわしい濃厚な内容でした。
主人公は女性的な容姿をした男性ということですが、『彼』と『彼女』の表現が入り混じっていたことで少し混乱してしまいました。何か意図されたものがあるとしたら、自分の読解力のなさを嘆くばかりです……(泣)
が、物語はまだ始まったばかりです。新たな来客や、筆を折った主人公が最後に描く桜も気になります。
透き通った文学の世界に触れたい方、ぜひご一読ください!