失恋カルテ2(加奈子ちゃんの遠距離恋愛)

@ramia294

第1話

 今日は、加奈子ちゃんと、駅前ホテル。

 いつものケーキバイキング。

 たくさん、食べ過ぎ私たち。

 ホテルマン?

 バイキング担当さん?

 顔を覚えられました。

 

 加奈子ちゃんの恋人、野々乃のののくん。

 とっても生意気ひとつ年下。

 ただ今、遠距離恋愛中。

 最近とても忙しく、なかなか会う事出来ません。


 加奈子、最近愚痴っほく、野々乃くんに、焦がれます。

 

「最近、連絡も取れなくて、メールも“らいん”も途切れがち」


 加奈子ちゃん。

 野々乃くんに、会いたくて、とても心が、乱れています。

 いつもより、ペースの上がるケーキバイキング。


「私、このまま失恋かも。睦美の診療所。お世話になろうかしら」


 その夜、私は、相談しました。

 私の大事な先生に、私の大事な加奈子ちゃんの事。

 このまま失恋しちゃうのかしら?


「とにかく診察してみましょう。加奈子ちゃんのご予約、とってください」



 それから数日後、加奈子ちゃんが、私の働く診療所。

 大事な先生の大事な失恋診療所。


 先生は、失恋内科のお医者さま。

 加奈子ちゃんのお話を 私も交えて、聞きました。


 温かい紅茶と、素朴なクッキー。

 診療中の患者さんにお出ししています。

 診察室のアイボリーの壁

 加奈子ちゃんのお気に入り。

 甘いものが、大好き加奈子ちゃん。

 遠距離恋愛の不安に押しつぶされそうな加奈子ちゃん。

 それでも、パクパク食べました。


「眠れない夜は、1週間に、何回ありますか?」


 先生の質問。


「先生、ごめんなさい。私に眠れない夜は、有りません。夜のデザート、ショートケーキ。食べると、すぐに、眠ります」


「毎日ですか?」


 先生には、加奈子ちゃんの甘いもの好きを事前に説明していましたが、それでも驚いたようです。


「今のところ問題なのは、ケーキの食べ過ぎですか?」


「はい。それと私の心」


 その日、それから、たくさんの話をして、加奈子ちゃんは、帰って行きました。

 次のご予約。

 来週です。


 その夜。


「先生、加奈子ちゃん大丈夫よね?夜だって眠れると言ってたしね」


「いや、油断出来ない。彼女のケーキ好きが、彼女自身を救っているだけだと思う」


 先生は、深刻そうな、顔をした。

 ダイエットマシン。

 再び出番でしょうか?


「加奈子ちゃんの彼氏さん。野々乃くん。あまり話が、出なかったけど、君は、会ったことあるかい?」


「2回くらいあるわ。でも、加奈子ちゃんにゾッコンというのかしら、見ていて、可笑しいくらい。加奈子ちゃんを振るなんて考えにくいのだけれど」


「とにかく、次回は少し検査して、加奈子さんの本当の気持ち観てみましょう」


 今日は、加奈子ちゃんの診察日。

 笑顔の見えない加奈子ちゃん。


「どうしたの?」


 と、私。


「お母さんにケーキ禁止にされた」


 と、加奈子ちゃん。


 やはり食べ過ぎ加奈子ちゃん。

 不安でいっぱい加奈子ちゃん。

 お母さん。

 さすがに心配したようです。


 私の大事な先生の失恋内科のレントゲン。

 カメラの前に、立つ加奈子ちゃん。

 心臓を狙うカメラ。


「大きく息を吸って…。ハイ止める」


 カシャッ!


 黒いフィルムに写るのは、やはり彼女の思い人。

 大きなフィルムの片隅には、小さな少女が、膝を抱えて、泣いてます。

 不安いっぱい加奈子ちゃん。


 レントゲンのデータ。

 パソコン画面に、出しました。

 パソコンに繋がった聴心器。 

 加奈子ちゃんの心の声。

 スピーカーから流れました。

 小さな少女の泣き声。

 

「とても、危険な心の状態です。しかし、加奈子さん。あなたの大事な野々乃君。彼の気持ちは確かめていますか?」


「先生。私は、怖いのです。彼の気持ちが、離れていれば、私は、どうにかなっちゃいそう」


 それでも、先生は、確かめる事を薦めました。


 私の大事な先生の失恋内科のCTスキャン。

 遠距離恋愛の不安。

 取り除いてくれます。

 ちょと、遠くの恋人の胸の内をスキャンしよう。

 CTスキャン。

 恋心の盗撮。

 恋の反則。


 ベッドに横たわる加奈子ちゃん。

 少しのダイエットマシンを点滴で、身体に入れました。


 ダイエットマシンは、ナノマシン。

 自己増殖型。

 空中に浮遊している元素を使い、自己再生していきます。

 私の治療の時に、少しだけ漏れ出したダイエットマシンが、自身のコピーを作り続け、世界中に広がりました。

 ダイエットマシンのナノマシンネットワークで、世界中のあらゆる場所の情報を手に入れる事が、出来ます。

 

 ゴーグルを付けた加奈子ちゃん。

 ダイエットマシンのナノマシンが、加奈子ちゃんの恋のエネルギーをCTスキャンに伝えます。


 野々乃くん。

 失恋内科のパソコン画面に。

 独りで一生懸命働く姿、見え始めました。

 更に画像を拡大。

 傍らには、指輪。

 エンゲージリング。


 『加奈子ちゃん。受け取ってくれるかな?断られるかな』


 不安いっぱいなのは、野々乃くん。

 プロポーズの不安。

 結婚直前カップルの甘い、甘い、夜。 

 加奈子ちゃんの頬に涙。


「先生、私から…。」


「いいえ。あなたのする事は、恋人を信じる事」


 加奈子ちゃんの失恋内科。

 これで、診察終了です。


 それからしばらく。


 今日は、嬉しい夏祭り。

 浴衣の加奈子ちゃんと野々乃くん。

 同じく、浴衣の私と先生。

 4人で、花火の見物です。


 もちろん、私と加奈子ちゃん。

 綿菓子片手に持っています。

 私の左手には、うちわ。

 加奈子ちゃんの左手には、あの指輪。

 …と、リンゴ飴。

 加奈子ちゃんのはじける笑顔。

 

 甘い、甘いお菓子の様な彼女の恋。




       おわり

 



 

 

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