26






互いに想いを伝え、身も心も漸く結ばれた──…数日後。

バイト先のコンビニ店は、時刻も随分遅いというのに。いつになく賑わいを見せていた。







「いや────…まっさか不和さんの本気の相手が、男だったとはねぇ…」


全てを聞かされた後輩は、さして驚きもせず告げる。






「しかも告ってソッコーヤるとか…マジあり得ねーし?」


「テメェにだけは言われたくねぇよ…。」


「けど初エッチでヤり過ぎて、お預け食らってんでしょーよ?」


「まあ…な…」


それは反省してると言うが…。

あれだけ善に発情してしまった國将に、説得力はなかった。





あれから國将の情熱は治まり切らなかったようで…

流される善に甘え、二度ならず三度と行為を続行してしまい…。


案の定、善は翌日熱を出し…その結果、キス以上の行為をずっと拒まれ続けていた。




まあそれは、単に善が恥ずかしかっただけなのだが…。






「てかストーカー姉は大丈夫なんスかぁ?」


自分を差し置いて弟に手を出した…だなんてことになれば、何をしてくるか判らないだろうと…


後輩は一応心配するのだが。






「…それなら大丈夫だろ。善と付き合ってる事話したら、なんか別のものに目覚めたみてぇだしよ…」


言葉を濁しながらも、國将はそう答えて。

なんとも曖昧な態度に、後輩はハテナと首を傾げるのだった。







「お、噂をすれば…」


その時、コンビニの入口が客の来訪を知らせて。

見やれば、國将の愛おしい…恋人の姿。






「あ…こんばんは…」


「ああ、こりゃどーも…」


律儀にペコリと挨拶する善に、後輩も釣られて頭を下げた。






「ごめんなさい、早く来すぎちゃったよね…?」


「いいって、もうすぐ上がっから。」


そうして今度は照れたよう、國将に謝ってきたから…。彼は苦笑しながらも、善の頭をくしゃりと撫でてやった。


その光景を、後輩は真顔で眺める。






「やぁ~…こんなガチでイチャつく不和さん超レアかも…。」


「うるせー、お前はとっとと帰れよ。」


恋人が来たから用済みとばかりに追いやる國将に。

後輩は唇を尖らせ抗議する。






「告ったら紹介してくれる約束だったっしょ?」


「してねぇし…お前は色々危険だから絶対しねぇ。」


ケチーと頬を膨らます後輩を、冷めた顔で蹴り上げる國将。仕方なく後輩は入口へと歩き出す。


そんなふたりを、善は不安そうに見守ってたのだが…





「ねぇねぇ~恋人ちゃ~ん?」


「え?ぼ、僕ですかっ…」


去り際声を掛けてきた後輩に、善はビクンと肩を揺らし。そんな少年へ、後輩はとんでもない台詞を吐き出す。





「もうそろそろエッチ解禁して上げてくんね~かなぁ?じゃないと不和さん、」



─────浮気しちゃうかもよ~?



そんな捨て台詞を残し…




「ッ……!!」


「この馬鹿が…」


じゃあね~と手を振り、後輩は去っていった。







客もいない、BGMだけがやたら響く店内で。




「浮気……」


「あ──…善?」


置き去りにされたカップルは、気まずい空気に苛まれる。


特に善は、後輩の言葉を鵜呑みにして考え込んでしまったから…。どうしたものかと、國将は頬を掻いた。すると…





「國将さんは…」


「ん?」


徐に善が口を開いて。

呼ばれて國将は、身を屈め恋人の顔を覗き込む。





「…浮気、しちゃうの…?」


「ッ…な……」


次には善が泣きそうな顔で、そんな事を言い出したものだから。





「するわけねーだろ…」


俺はお前に惚れてんだから…と。

言ってその肩を強く抱き寄せた。








ストーカーを気紛れに助けた事で始まった、國将と善の恋。まさかこんなことになるとは、思いも寄らなかったけれど。





「あのね、國将さん…」


「どーした…?」


暗がりにひっそりと手を繋ぎ歩く帰り道。

名を呼ぶ善が、くいと袖を引っ張ってきて。





「今夜は、そのっ…シてもいいから…」



─────浮気しちゃ、ヤだよ…?



そんな甘い睦言を、可愛い恋人が耳元で囁いたりするので────…





「なら、浮気しねぇって証拠を見せてやるよ…」


今夜、ベッドの中でたっぷりと。

それはもう、眠れない夜を宣言するかのように。



火照り出した互いの身体は、月光が照らし出す闇に紛れて…



ひとつに重なり、溶けていった。




Happy end.

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