生きる

バブみ道日丿宮組

お題:空前絶後の小説の書き方 制限時間:15分

 彼の特徴をあらわすならば、平民。

 容姿は普通。成績も普通。なにもかもが普通といったほうがいい彼。

 そんな彼と付き合う私は、ただの普通。

 それでもきちんと愛し合ってる。

 クリスマスだって、さんざん抱き合った。

 大学生も終わるそんな頃に彼は語った。

 自分の精子には種が入ってない、と。

 やたらと中出ししたがった理由はそこかと。

 私の避妊行為は意味がなかったのか。ちょっと怒り。

 でも、そうか。

 彼と結婚しても、子どもは望めないのか。

 出産ていう一大イベントをこなしてみたかったけど、いいかな。

 子どもは産まなくても作ることはできる。

 そう話すと彼は泣いてしまった。

 泣かせるつもりはこれっぽちもなかったというのに、どうして?

 落ち着いた彼は、私が別れると思ったらしい。

 そこは信じてよ? 今まで何年恋人やってたと思うの? 高校からだよ!

 えっ、高校から中出し? ちょっとやばい。気持ちよくがってる場合じゃなかったね。

 ムードというか、その場の勢いで受け止めてたけど、種あり精子だったらもう妊娠してるよね?

 そっか……そうだよね。

 結婚するか、しないかの会話がそのあとにでた。

 そんなプロポーズのしかたある?

 もちろん、私はOKしたよ。

 それからニ年が経って、子どもはどうするってことになった。

 そうして孤児院を周り、孤児を引き取ることにした。

 年齢は一歳。

 そう一歳の赤ん坊を引き取った。

 どうしてこんなにかわいい子を孤児院前に捨ててくのか。心底信じられなかった。

 いろいろな手続きをして、家に連れ帰り育てる。

 すぐに懐いてくれて、名前も改めてつけた。

 そこからさらに十年後ぐらい。

 子どもに血の繋がりがないってことを話した。

 泣かれた。家出をされた。

 喧嘩をしたらいつもいく場所でしくしくと泣いてた。 

 どうやら愛がないから、捨てるとかそう思われたらしい。

 誰がそんなことをするか。産み親と同じことなんて絶対しない。

 私たちは愛してる。

 抱きしめたら、より泣いた。

 可愛い子が台無しだ。私も泣いてるから、より台無し。

 そこからは普通だった。

 普通の家族ができた。

 百歳になるかならないかの歳に彼はなくなった。

 私も追うかのように病気にかかり、入院し続けなくてはいけなくなった。

 子どもは夫婦になって、いろいろとしてくれた。

 孫も可愛かった。

 私がはやく死ねば、もっと楽になるなと話したら、叩かれた。

 お母さんはわたしを救ってくれたんだから、そんなことを言わないでと。

 嬉しかった。引き取ってよかったと思った。

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生きる バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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