催眠原罪犯
@HasumiChouji
催眠原罪犯
「ああ、なるほど。恋人を得る為に、催眠能力が欲しいと……」
繁華街の雑居ビルの一室で、その男はボクにそう言った。
「そうなんです……。女の子は、みんな……ボクみたいなオタクだけど善良なヤツじゃなくて顔はいいけど心が汚ないイケメンばかり好きになって……」
「あの……フられたって言っても、せいぜい、5〜6人でしょ? それで『女はみんな』なんて言うもんじゃないですよ」
「でも……ここって、お金さえ払えば……」
「判りました。1回だけ使える催眠能力を授けてあげましょう。報酬は成功報酬で結構です。最後に確認します。他人を催眠で操っても、貴方の心は痛まないんですか?」
「で、どうだった?」
翌日、ボクが学校に行くと、あの「1回だけ使える催眠能力を授けてくれる男」の話を教えてくれてくれた通称「青眼鏡」が、そう話しかけ……。
話しかけ……。
話し……。
何だ、この気持ちは……?
ああ、そうだ……。
人間は顔じゃない。
心だ。
イケメンだけど心が汚ない男になびく女どもだって……きっと心が汚ないに違いない。
ボクと同じように心が綺麗な子が、すぐ近くに居たじゃないか……。
一昨日、来た高校生と、そいつに催眠をかけて、昨日、ここに来るように仕向けた別の高校生から成功報酬が振り込まれた。
俺だって人の事はとやかく言えないが……誰かを陥れて金を儲けるなら、獲物は、自分を小悪党だと気付いてない小悪党に限る。
悪人になっちゃいけない理由は……もっとタチの悪い悪人に食い物にされるからだ。
やれやれ……。
一言、「やっぱり、やめます」と言いさえすれば、俺が、あの阿呆高校生どもにかけた催眠を解いてやったのに。
全く、救い難い馬鹿どもめ。
同性だろうが異性だろうが「自分を小悪党だと気付いていない最低の小悪党」同士のカップルの末路などロクな事にならないに決ってる。
催眠原罪犯 @HasumiChouji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます