ふたりの間に空いた穴
ばーとる
本文
大学生になり、生まれて初めての
「ここって
「うん」
は? どういうこと? どうして
「どうして?」
「たまにはいいじゃん。神社も」
そうじゃない! 神社は神社でも、どうしてよりによって
「神社はいいんだけど、ここで何をするの?」
「何をって、神社に来たら参拝するんだよ」
何? もしかして
「ここじゃないとダメだったの?」
「ダメってわけじゃないけど、どうして?」
「どうしてってここ
「そうだよ? それがどうかしたのか?」
ここに来て、
「いや、ごめん。なんでもない」
とは言ったものの、やはり何かが引っかかる。私たちは鳥居を
「ねえ、
「ん?」
「単刀直入に聞くけど、どうして今日ここに来ようと思ったの?」
「だってここ、有名じゃん。
えっ? それだけ? 有名って
やっぱり
「どうしたの? 顔色悪いよ?」
何か返事をしようとしたが、自分が泣き出しそうになっていることに気づいて口を結んだ。
「ちょっと休む?」
あれ? 私の事、
もう、
私は
なんとか境内の中心部まで来た。気が付くと街の
「これ、やってみる?」
周りの参拝客を見ると、お札を持って穴をくぐっている人が何人かいる。
これはついに、
「嫌」
「えっ?」
「
そう言って、自分だけあの穴をくぐるんでしょ? もうわかった。いいよ。
「こっち来て」
私が別れを受け入れかけた
「ここでなら周りの人に聞かれないだろ。なあ、どうしたんだ? 今日の
今さら何を言い出すの?
そう言いかけたが、私の中のどこかがやはり別れないことを望んでいる。強く望んでいる。だからその可能性に賭けて、当たり障りのない答えをとりあえずひねり出す。
「何でもない」
「何でもないことはないだろ」
「だから何でもないって言ってるでしょ!」
「
そう言いながら、いつの間にかあふれていた私の
「ごめん……」
私はゆっくりと
「私、
「そうか。お前も
そして、彼も話し始めた。
「実は
そうか。
「だからさ、今日のことはお
私は
「えっ? 今? 撮った?」
「後で送ってあげる」
「もうマジ最悪ー」
でも、心はとても温かかった。たぶん写真には、ぐちゃぐちゃになった私の顔が映っているのだろう。そんな私の顔を、いつか笑って
「でさ、あの
「わかった」
私たちは札に願い事を書いた。それを持って、二人で順番に
きっとまた
ふたりの間に空いた穴 ばーとる @Vertle555a
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます