第20話

「%$&!!”#%&%」


 仕事中だというのに外から大きな声が聞こえる。

 あの3人組が来たのだろうか。


「おーい、メルモ、ネミア、客が来たみたいなので見に行ってくれ!」


「わかったのじゃ、今いいとこなのでもうちょっとしたら行ってみるぞ」

「そうだ、少し待てい」


 例によってまたアニメを見ていたみたいだ。

 しょうがない、行ってみるか。


 車庫側の門の外にはあの3人と背が高い男の人がおり、その男がなにやら叫んでいる。いや、怒鳴ってるのか。どちらにしても大声をだしているのに変わりはない。

 彼らの前に姿を現すと、なんとかメルモもネミアももう少ししたら来るはずだっていうことを伝えようとジェスチャーしたがやはり伝わらない。

 言葉が通じず文化も違うのだからジェスチャーも違って当然だよな。

 とりあえずペコペコ頭を下げてそこを後にするべく背を向け歩き出したら、背後が明るくなったのを感じ振り向いた。

 ビーチボールくらいもある火の玉がこちらに迫ってきている。

 咄嗟に手を顔の前に持ってきて庇う姿勢をとったが、火の玉は当然のごとく見えない壁に阻まれ霧散した。


 当然だわな。

 いや、でも結界無効化なんちゃらってのを加えた魔法だったら透過できるのかも。

 絶対安全というわけでもないのか。

 それならさっさと退散するに限る。

 男は杖を叩きつけ、他にも魔法を唱えようとしていたが、こちらは尻尾を巻いて逃げ出した。


「お~い、ふたりとも、早く行ってきなさい。なんか怒ってる人がいるぞ」

「「もうちょっと~」」


 気にはなったが自分にできることはないので、再び仕事にとりかかった。




 しばらくすると二人は両手に一杯色々なものを抱えて部屋に入ってくる。


「それでなんだったんだ?」


「あ~、それな」


 少し気まずそうにネミアが口を濁す。


「師匠の父上が来ておったのじゃ。あやつは過保護じゃからの、娘が捕らわれて結界から出られなくなったと聞いて居てもたってもおられずやって来たのじゃ」


「まぁ、そういうことだ」


「ミリンの父親ということは、魔法の腕はお前たちより上なのか?」


「いや、あやつはあまり魔法を得意とはしておらぬ。じゃが、杖の材料の木を持ってきてくれた。ほれ、これじゃ」


 抱えているものの中の枝というか棒みたいなものを顎で指し示す。

 両手が塞がっているとはいえ、少しはしたない。


「ほう、それと抱えているのは野菜だろ。台所まで一緒に行くから、置いてこようよ」


 二人を促し台所に行き、野菜を冷蔵庫の野菜室に放り込む。

 ほぼ全部見たことがない見た目をしていた。

 色彩もカラフルで、これはないわ~ってのも中にはあったが気にしない。

 ちゃんと食べられるものを持ってきてくれたのだろうしね。



 その日の夕食は結構豪華だった。

 見ただけではどんな食材か分からなかったので、二人に聞きながら料理をしたのだが、ほんとやばいくらいの色をした料理の数々がテーブルに並ぶことになった。

 大丈夫なんだよな。

 味見をしながら作ったので味は大丈夫だけど、後でお腹を壊したとか嫌だからね。


 少しぼそぼそしていて食べづらいが、長時間水に浸した後に炊いた玄米ご飯。このよく知ってる食べ物をまずは口にする。

 次はこちらの世界に来てからよくお世話になっている肉、といいたいところだけど、ギガントランドドラゴンじゃないよな。

 あれはもう食べきったし、生息数が少なく強敵だってことだからたぶん違う肉だよな。

 よく分からない肉なので、味付けを濃い目に味噌焼きにして山椒の葉をちぎって散らす。

 うん、美味い! だが、肉が美味かったのかどうかはよくわからん。でも脂身がなく少し硬い肉だと感じた。次は素材の味が分かる料理にしよう。

 最後はカラフルな、いや正直に言おう自分の感性からいくと毒々しい色をした野菜炒め。

 火を通した方が安全だろうと生野菜サラダではなく野菜炒めを選択した。

 銀色をしたキノコ、真っ黒い葉物野菜、ピンクの根菜。よく火を通したのにジャリジャリとした食感が少し馴染みがない。

 しかし二人は美味しそうに食べている。


 食材として乾燥した虫や爬虫類の干物とかもあったけど、それは他の食材がなくなった時のためにとっておこうと心の中で決めてある。

 まだ余裕があるうちは口にしたくはないもんね。



 夕食後は皆でリビングでゆっくり雑談したりしながら過ごすことになった。

 以前は夕食後もアニメ三昧だったが、アニメの視聴時間を制限したからだ。





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異世界転移しても日本のブラック企業に縛られています~ロリコンと呼ばないでこれでも紳士です~ @ganzalost

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