第19話

 庭の方からキャッキャと小さな子の騒がしい声が聞こえる。


 ビニールプールをだしてやったら、二人とも大はしゃぎで遊んでる。

 水着とかはなく、そのまま裸で入ってるので、そっちには近づかない。

 着替えとタオルだけ渡し、遊び終わったらちゃんと着替えるよう言いつけてある。


 幼女はセーフだとしても、師匠である少女は間違いなくアウトだ。

 イエスロリータ、ノータッチなんて言ってる場合ではない。


 それはさておき、願わくばこちらを煩わせることなく、長時間二人だけで遊んでることに期待だ。


 いいから、仕事させてくれ。

 他の事に煩わされることなく仕事させてくれ。


 なんか仕事中毒みたいな言い方だけど、俺がやらねば誰がやる、ではなく作業工程表をみながらため息をつく。

 もー、どうすんだよ、これ。


 工程表を眺めながらため息をつくくらいなら手を動かせってのはわかるんだけど、なんか気分がのらない。


 先延ばし行動と呼ばれようと、なぜか急に食料在庫が気になり台所に行って確認を始めてしまった。

 試験前に掃除がしたくなるのと同じだ。



 パンも白米もなくなり、主食は玄米と素麺だ。

 それもずいぶん少なくなってきた。

 ここに住む人間も3人になったのだからしょうがないのかもしれないが、このままだとまずい。


「お~い、メルモの友達たちが来るのはいつの予定だったかな」

「確か明後日にはくる予定になっておるはずじゃ」


 庭に向けて大きな声で問いかけたが、答えは予想外に近くから返ってきた。

 メルモは水色のシンプルなワンピース姿で髪をタオルで拭きながらこちらにやって来る。

 濡れてぺしゃんとした髪からは小さなが覗いている。

 エルフと獣人のハーフらしいが、なんの動物かは聞いていない。

 尻尾の方はスカートに隠れている。

 最初は下着のパンツを嫌がってスカートだけ履こうとしたが、さすがにやめさせた。

 今ではパンツの後ろに穴をあけて、そこに尻尾を通してワンピースを着たりスカートを履いたりしている。

 メルモの師匠の方はTシャツに短パンという簡易な服装だ。

 こちらはただのエルフで耳が長く、超可愛い以外は普通で、尻尾とかはない。

 そしてどうも二人ともゴテゴテした服はあんまし好きではないみたいでシンプルな服装を好んでるようだ。


 彼女たちは台所まで来ると冷蔵庫をあけ、麦茶をコップに注ぎゴクゴクと飲んでいる。

 もうこの家での暮らしも慣れてきたものだ。


「早く来て欲しいな。今度は野菜とか色々持ってきてくれるんだろ」


「ちゃんと頼んでおるから、安心するがよい。それより仕事とやらはよいのかの?」


 あー、もうこんなことしてる場合じゃねー。

 リモートワークだテレワークだなんていって自宅で仕事してると緊張感が保てないんだよな。

 そういう点では会社に行って仕事したほうがはかどる気がする。

 そんなんこと考えてる場合じゃねーわ。

 現在勤務時間中で、今は離席のサボり中だった。

 早く戻って仕事仕事っと。



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