その推しキャラってどうなの??
時間:2021年1月
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
僕こと
クラス単位で異世界召喚された僕は淫魔王と呼ばれる存在となり、チーレム大勝利のはずなのだがちっともそんな感じではない。
僕の異世界チーレム生活はどこかおかしい。
嫁紹介枠という意味不明な推薦で本田さんは愛人となった。
いずれ正式に結婚する事になると思う。
僕を好きなのは事実だがほかのお嫁さん達とは僕への『愛のカタチ』が違う。
「加原君!『ハジメちゃんが一番。』の新刊見た!?」
普段は大人しい本田さんがとある本を僕に差し出す。
これは布教用だからと手渡される。
天啓職【
僕はこの世界に漫画文化を広めるべく印刷技術を伝授した。
召喚されたこの世界の文明レベルは中世初期といったもの。
グーテンベルクの活版印刷なんてまだまだ先の話だったがチートで活版印刷を再現。
紙もチートで大量生産。
そう、僕はこの世界の漫画神になる!…予定。
「ねぇ、本田さん…質問いいかな?」
「見どころはね、フィレモン君ラブなゴットハルト君がハジメちゃんを巡って決闘する場面だね!
始めはフィレモン君への当てつけでハジメちゃんを好きだって言ったんだけどだんだん本気になり始めて…」
僕の話は華麗にスルーされる。
ちなみにフィレモン君は男、ゴットハルト君も男、ハジメちゃんも男だ。
そして登場人物はすべてリアル人物。
さらにハジメちゃんと呼ばれるキャラはスカートをはいた僕。
そう、これはリアル人物によるBL本だ。
名作少女漫画のタイトルのようなBL漫画の内容はこうだ。
とある王国の姫であるハジメ姫を巡った騎士達による恋愛バトル。
これだけ聞くと少女漫画のようだがハジメ姫は一国の姫なのに男性器がある。
それって姫じゃないよね??
物語はどったんばったん紆余曲折のあと謎の浪漫器官『やおい穴』に挿入してハッピーエンドという黄金のパターン。
僕には全く理解出来ない。
「僕と本田さんってこういった関係だよね?」
ベッドの上に裸で愛し合った2人。
本を差し出した時に胸がはだけて見えていたのに気付いた本田さんが毛布を引っ張り上げる。
可愛い仕草だな。
「なのに愛人が受けのBL同人誌を本人に勧めるのってどうなの?」
「え?ハジメちゃんは総受けだけど加原君と別人だよ?
だって加原君にはやおい穴がないよね?」
本田さんは『ω』といった顔で僕を見る。
いや、本気で別人だと思っている。
マイン先生による『ハジメちゃんが一番。』は版を重ねるごとに加筆・修正されている。
その度に僕のノーマルソードと形状が似てきたり、僕でさえ知らなかった黒子が追加されている。
本田さん以外にもマイン先生に僕の個人情報をリークしている嫁や愛人がいるのは確実だ。
「あくまで別人と言い張るんだね?」
この世界にはまだ肖像権なんてものはない。
当然個人情報も駄々洩れだ。
しかも僕自身でさえ知らない個人情報がいつの間にか広まっている。
怖い…異世界怖いです。
「じゃあ、この本田裁縫工房の新作を穿いてみてよ。
『ハジメちゃんが一番。』とのコラボだよ!」
本田さんはこの世界では珍しい天啓職【裁縫師】だ。
もともとコスプレ衣装作りが趣味だった影響で【裁縫師】という珍しい天啓職を発現した。
そんなコスプレ衣装をお嫁さんズに提供し、夜の部活動を盛り上げてくれている。
この異世界の被服史にTバックを初めて穿いたのは聖女だと刻みつけたのは本田さんだ。
「ねえ、それってブラとショーツだよね??」
どうみても女性用。
しかも大事な部分がまったく隠れない夜専用のエロ女性下着。
「これを加原君が穿いたらハジメちゃんとの違いがはっきりするよ?」
ナイワー。
でも本田さんは鼻息荒く下着を差し出す。
見た目地味で大人しい性格の本田さんは『
その気迫にたじろぐが何が悲しくて高1男子の僕が女性用下着を着用しなくちゃならないんだ?
「加原君って成長しきっていない少年だから似合うと思うよ?」
「絶対お断り!」
自分の子供っぽい容姿を気にしているんだけどな。
特にこの世界の人間はヨーロッパ風の彫りの深い顔立ちだから『平たい顔族』の僕はよく子供と間違われる。
この世界では15歳が成人だから意外と不便なんだよ。
「本田さんに似合いそうだけど着ないの?」
残念そうにエロ下着を握りしめている本田さんをからかってみる。
着てくれたらラッキーという下心もあった。
実際に似合いそうだし、同級生女子のエロ下着姿に興奮しない男子高校生はいない。
「わ、私にはまだ早いから!」
顔を真っ赤にする本田さんは可愛い。
「僕もマインの信者だからその本が凄いのは理解している。
でも『ハジメちゃんが一番。』をみんなに勧めるのはほどほどにね」
マインの描いた同人誌のクオリティーの高さは半端ない。
そして印刷というのはこの世界ではまだ貴重だ。
羊皮紙に1字1字書き写して本が完成する時代に手頃な価格で購入出来るマインの同人誌は貴族を中心に読者を広げている。
その影響力は絶大だ。
その『ハジメちゃんが一番。』が敵側の宗教関係者の手に渡り、僕とフィレモン牧師が淫らな関係にあると指摘されるなんてヨタ話さえ発生した。
結果異端認定されるなんて事も起きた。
フィクションを証拠と言い張る程度の文化しか育っていないのに、BL同人誌の販売は過激だったのではないかと考えているくらいだ。
「えー、私達ヲタクが『推し活』をしないなんて無理でしょ!」
僕もヲタクだからそう言われると困る。
「加原君はハジメちゃんが売れて欲しくないの?
もしかして嫌いなの?」
「マインの漫画はすごいから売れてくれるなら僕も嬉しい。
でもハジメちゃんって『受け』だよね?
僕的にはそこが微妙」
「加原君は総受け以外ありえないから!」
まさかの逆カプ切れ。
やっぱり僕には『腐』のルールは理解不能。
あと、何気にハジメちゃんが僕だって認めているけど?
僕って外見で『受け』キャラ認定されているっぽい。
◇◇◇ 後書き ◇◇◇
本編で時々BLネタをしますがイメージは学生時代の同級生達です。
当時は『キャプテン翼』『星矢』が流行っていました。
ヲタクである事は隠しますが腐女子(当時はこの言葉はなかったと記憶しています)の人権は声高に叫ぶ強者ぞろいでした…濃い同級生が多かった(乾笑)。
【KAC20222】ブクマ:2 PV:62 ☆5 ♡5
【 閲覧ありがとうございました 】
ペロリスト SS置き場 玄武堂 孝 @genbudoh500
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