第6話 ニワトリかサキュバスか唐揚げか

「なぁらんぷ、これってどう見てもニワトリだよな?」

「え?どう見てもサキュバスだけど」

今俺の目の前にはいかにもニワトリっぽく首をひねったり、戻したりしながら目玉焼きをつついているニワトリがいる。

いやどう見てもニワトリだろ!?

「なぁ、これやっぱニワトリだよな?」

「何言ってんのよ響、ニワトリは白色でしょ?そんなんも分からないの?」

可哀想な人をみるような目で見てくるらんぷ。

うぜぇコイツ!

「さっきから人の事ニワトリニワトリって失礼ね〜どーせアレでしょ?もっと巨乳美女求めてたんでしょ?人間っていつもこうよね、そんなの100Lのせーえき飲んだ子しかなれないのに。ならちゃんと餌やりなさいって話しよね。てかこのせーえき古すぎ無理」

いや無理はこっちのセリフなんだが?

「えっと…お前はサキュバス、なんだよな?」

「ええそうよ。どう見てもそうでしょ」

「ほらサキュバスじゃない」

どう考えてもサキュバスは無理なんだよなぁ…

サキュバスといえば、めちゃくちゃ巨乳で、黒色の角と翼とかが生えてて、紫や黒を基調とした胸の開いた服を来ているものだと思う。

こいつに関しては黒の翼しか合ってない。というかこれ翼じゃなくて羽だろ。

「なんでもいいから早くせーえき出しなさいよ。私、1人でも人間を搾りとらないと魔人協定で魔界に帰れないんだけど?」

またこのパターンか…

呼び出した以上は協力してやりたいが、さすがにニワトリでイケというのは男子高校生であろうとも難しいと思う。

「搾り取る以外に方法はないのか?」

ニワトリはバカかコイツみたいな顔をしながらこちらを見ている。コイツニワトリのくせに表情豊かで腹立つ。

「あるわけないでしょ?バカなの?」

あと言動がいちいち腹立つ。俺が言えたことではないが口悪すぎだろ。

だが困った。コイツを返すには100Lの精液を与えてニワトリからサキュバスに成長させてから俺が搾り取られるかニワトリのまま搾り取られるかしか選択肢がなさそうだ。100Lも精液を出していたらいくら若くても搾り取られる前に干からびる。かといってニワトリとは普通にできないし、息子も戦闘態勢には入れない。

うーむ…

俺は自称天才の頭をフル回転させ2秒ほど考えた。そして1つの答えを導き出す。

それは―

諦める。ということだ。

いや、普通に無理だろ。たしかに俺が呼び出したけどさ、こんなやべぇのが出てくるとは思わんじゃん。責任は俺にあるかもしれんが、俺は逃げるぞ。責任なんて美少女に「好きにさせた責任とってよね♡」以外はいらねんだから。

というわけで…

「自称サキュバス」

「誰が自称よ。なめてんの?」

「俺は諦める。帰るためにまぁ頑張ってくれ」

そして俺は今日発売のラノベを買いに行くべく部屋を出た。

「…」

「…」

一斉に無言になるらんぷとニワトリ。何事も無かったかのように部屋を出ていったクズ男に対して言葉もでなかった。

「ちょぉぉぉぉぉぉ!!どーするのよ!アイツ最低ね!」

叫ぶニワトリ。

「わかる!!ほんと最低よね!私も響のせいで帰れないから気持ちすごくわかる!!」

便乗して悪口を言いたい魔人。

クズ男への悪口は本人が帰ってくるまで彼の妹も交えて続いたという。








「ただいま〜」

ふぅ、なかなか限定版がなくて何軒も回っていたら時間がかかってしまった。

帰ってきたらあのニワトリなかったことになってないかな…

俺は僅かな希望を賭けて部屋のドアを開け…

「ほんとダメなのよ兄貴ったら」

「ほんとよほんと〜」

「それほんとなの?最低ね」

おっと、これはもしかしなくとも俺の悪口ですね。

少し聞いてみようと思った。どうせ今行ってもコテンパンにされるのは火を見るより明らかだ。ワンチャンいい話も聞けるかもしれないしな。

「それで兄貴中学生との喧嘩に勝ってさ、まだそこまでならいいじゃん?」

「小学生5年生で中学生に勝つなんて響意外とやるのね」

「それであの男はどうしたのよ」

「うん、倒れてる中学生を背負って近くの川に投げ捨てたんだよ」

「ほんとに最低ね」

「下手したら死ぬわよ、それ」

いや、あれは別に俺は悪くないだろ。解説すると俺が公園で漫画を読んでるときに中学生の不良に絡まれて、その漫画を川に捨てられたから同じことをしてやったという話だ。

「でもね、それには理由があって」

「ふむふむ」

「ほうほう」

あれ?アイツに漫画捨てられたこと言ったっけ?

「私の為だったの」

は?なに言ってんだこの子は。

「どゆこと!どゆこと!」

らんぷの期待する声が聞こえる。

「うん、その不良中学生ってね前に私に絡んできて川に私の大事なストラップを投げ捨てた奴らだったから」

知らねぇぇぇぇぇ!!

んなこと知らねぇぇぇぇぇぇ!!!

「あの男意外とやるのね。少し、ほんのすこーしだけど見直したわ」

「響もカッコイイとこあるじゃない。あれ〜恋美ちゃんすごいニヤニヤしてるよ〜」

「ほんとね〜あれだけあの男の事を嫌いだのうざいだの言ってたのにねぇ〜」

「うるさい!うるさい!ニヤニヤしてないし!」

恋美よ可愛いじゃねぇか。

「そいえば恋美があの男の話をする時って最後結局褒めるよね〜」

「たしかに私たちはただの悪口なのにね〜」

よし、らんぷは裸エプロン、ニワトリは唐揚げにすることを今誓った。

それにしても、勘違いとはいえ恋美って意外と俺への好感度高かったんだな。まぁこないだ酔ってた時もすごかったしな…

いかんいかん愚息よ鎮まりたまえ。

今日の恋美の唐揚げは大盛りだな。

さて…唐揚げを作るのには材料が必要だからな。そろそろ捕まえに…

「それにしてもこの本すごいわね」

俺はドアノブにかけかけた手を止める。

「あーこれは兄貴のコレクションだから…」

「ほんとに白髪の子が好きなのねぇ…もしかして私狙われてる!?」

狙ってねぇから安心しろタコ。

「古い精液がすごいたくさん着いてるわ…これで100Lいかないかしら」

いくわけねぇから安心しろ唐揚げ。

「ちょっと読んでみようかしら」

「やめときなよ、バカがうつるよ?」

だれがバカじゃタコ。

まさか俺のエロ本読書会が始まるとは。

これマジで入るタイミング逃したな。今入ったらこの本のことでイジられることは確定してるし。つか今までスルーしてたけどなんで各自部屋があるのに俺の部屋を集会所にすんの?

まぁ今はそんなことはいいか。

どうせすぐ飽きるだろ。

俺は買ってきたラノベをリビングに降りて読むことにした。









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青春と魔法のランプ しののめしのめ @sinme

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