第7話 カエ参上!

「はーい」


 と、ドアの向こう側の人に返事する。偉い人なら夜中に訪ねてはこないだろうし、ライムPなら事前にメールをくれるはずだ。


「失礼するのですわ」


 お、おお……。品を感じさせる手つきで入室し、すごく幼い声で断りを入れる……黒髪縦ロールツインテの幼女……。


 かわいらしいアニメ声に、顔から手からお人形さんのようなパーツ、そして雰囲気に合わねぇ和装……に、妙に映える黒髪の縦ロールツインテ……。


「噂はかねがね、聞いているのですわ」


 昨日ここに着いたばかりなのに? 噂広まるの早いな。


「あなた」


「はい」


偶像ゆうしゃを目指しているようですわね」


 違うんです偶像アイドルなんです、とは言えなかった。


 ライムPとの裏契約だし……。守秘義務とか契約違反とかの言葉が脳裏にちらつく。


「わたくし、偶像ゆうしゃを潰す会の会長なんですの」


「はい?」


「魔王討伐を偶像ゆうしゃ一人に任せるなぞ、ばかばかしい」


「はい??」


「これからの時代は相互扶助! 皆が皆を助け合って生きる社会!」


 ここでそんな選挙の演説みたいなこと申されましても。


偶像ゆうしゃただ一人が活躍しても、そこに生きる人や生活、文化が成長しなければ、意味はありませんわ。生まれつき能力をもっている人だけが輝く世界は、おかしいですの」


「たしかに、それはそうですね」


「ですわよね? そうですわよね??」


「自分だけじゃなくて、周りも見れてこその偶像アイドルですよね。そして努力がきちんと認められて、世界ジャンル全体に活気があふれる状態がいいですよね!」


「そうですの、そうですの! あれ、わたくしは何を?」


「幼女さん!」


 アタシは幼女さんの両手を握る。


「アタシ、協力します!」


「本当ですの!? それはとっても嬉しいですわ! あれ、これで合ってますの?」


 さっきまでのモヤモヤが、一気に晴れた。


 そうだ、アタシが望むのはアタシひとりがチヤホヤされて、輝いて、人気になる世界じゃない。アイドルという世界ジャンルのなかで、輝くアタシ!


 つまり、すべきことは。


偶像アイドルを探しましょう! 偶像アイドル候補を!」


「さすがですわ! 既に見込みのある人をリストにしてありますの!」


「あ、そう言えば名乗ってませんでしたね。アタシ、ミイナです」


「急に自己紹介ですわね……。わたくしは、カエと申しますわ」


「よろしくお願いします!」


「どうぞ、よろしくお願いするのですわ。……わたくし、偶像ゆうしゃを増やそうとしているように見えるのですけど、気のせいですわよね?」


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アイドルになりたいアタシは勇者になりたいわけではない!! 空間なぎ @nagi_139

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