目が覚めると・・・なんて王道展開は望んでない。②
「おいおい、まだ気絶してるのか?」
「薬使いすぎたんじゃないか?」
きぜつ?くすり?耳慣れない言葉に祐希は心のうちで首をかしげる。そもそもこの男たちは誰なのだろう。
「ラッキーだったなぁ!異世界人が気絶してるなんてさ!」
「おい!声がでかいぞ!!」
いせかいじん・・・・・・?どういうことだろう。完全に消えた友人のいたずらという線に思わず縋り付きたくなる気持ちを押さえつけてとにかく息を殺してやり過ごすことだけを考える。だって、ここがどこかなんて、あの人がだれかなんて関係ないのだ。仮に本当に異世界だったとしても、現実世界のままだったとしても祐希の今の状態は通常ではない。考えるだけ無駄なのだから。
「異世界人は高く売れる。商品として丁重に扱えよ。」
まるで何かのリーダーのような男が喜びを抑えきれない声で仲間たちに指示を出す。ひとまず、殺されることはなさそうなのだろうか・・・・・・?淡い期待とともに声を発するかどうかの迷いが生まれていく。しかしそれを切り裂くように男の声が響いた。
「動くな!!王国立警ら隊だ!」
刹那、男たちの悲鳴が、怒号が、金属がこすれる音があたりを埋め尽くす。祐希はとにかく身を小さくしてまるで嵐が過ぎ去るのを待つように、ひたすらに耐える。どうしよう。巻き込まれてしまった。どうやって逃げればいいのか。ぐるぐるとめぐる思考の最中、一人の男が声をかけてきた。
「大丈夫か?」
知らない男の人の大きな声にびくりと肩を揺らす。
「意識はあるみたいだな。今、目隠しを・・・・・・」
そう言いかけた声をまた別の人が遮る。
「おい!この惨状で外したらまずいだろ!!」
こめかみあたりで何かがピクリと揺れた。諌められた男性はそれもそうだな、と呟く。
「ちょっと怖いかもしれないが、目隠しをしたまま抱えても良いだろうか。」
「ああ、異世界人には刺激が強いと思う。安心してくれ・・・・・・と言っても信用できないと思うが・・・・・・」
真剣に言葉を重ねる二人にこの人たちは信用しても大丈夫かもしれない、祐希はぼんやりとした頭で小さく頷いた。
「はい、お願いします・・・・・・。」
最後まで発声できていたかもわからない。ただ、祐希の意識の中で最後だったのは慌てた様子の声とおそらく地面にぶつかったであろう鈍い痛みだった。
異世界アイドル成長奇譚〜あいろま〜 七篠愛 @nanashi_mei
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