戦う理由、君の愛した世界で

最初から侵略者は手加減なく襲いかかってきた

基地内へ侵攻するも30分近く進みきれずにした


「くっそこいつらしぶとい」

「一点突破で進む結!」

「分かりました!」

「はぁぁぁ!」

「やぁぁぁ」


雫と結は先陣を切り無理やり前線を押し上げる


「今だ!進め!」


ほんの少しの隙を見つけ総攻撃をして一点突破で中へ侵入する

基地のコアさえ破壊すれば周辺の侵略者は弱体化する


「数が多い!」

「一体一体はそこまで強くないが油断すると一気に持ってかけるぞ!」

「切り裂け」


斬姫の能力で次々と倒していく

(このままじゃコアまで辿り着けるか怪しい)

進む事に数が増え次々と仲間がやられていく

他部隊からも連絡は無い


ひたすらコアの予想位置まで蹴散らしながら突っ走る

どのくらい進んだか分からないがこちらの人員の3割はもう居なくなっていた


「ここは奴らが居ないのか?警戒しながら休憩するぞ……このままでは持たん」


隊長の指示で交代で休憩する


「……ダメだ他部隊と連絡が取れない」

「電波妨害でもされているのでしょうか?」

「可能性はあるな。我々は進むしかない、この休憩が終わったらコアまで突き進むぞ」

「「了解!」」


時間にして10分にも満たない休憩だったがそれでも多少体力は回復していた

そこから数時間かけて何とかコアまで辿り着いたが生き残ったのは極わずか


「コアを破壊する、総員突撃!」


片腕を失っている隊長は叫び突撃する

コア周辺の敵は先程までの敵とは段違いの強さを持っていた

数こそ少ないが苦戦を強いられていた

一体一体数を減らし進む

疲労により一瞬隙を見せた雫に回避も防御もできない一撃が飛んできた

死を覚悟し目を閉じるが生暖かい液体が顔にかかりはっと目を開ける


「はぁぁぁ!」


胴体を貫かれた結は残った力でその敵を切り裂き倒れる

雫はすぐに結を抱きしめ必死に声をかける


「結」

「よかった……守れた」

「良くない、全然良くない。結が死んだら」


雫は涙を流す

部隊は全滅、残っているのは致命傷こそ負っていないがかなりボロボロの雫と瀕死の結のみ

まだ敵が残っているが構わずに結を助けようと応急処置を試みる


「無理です、私はもう」


結は血を吐く


「嫌だ、死なないで……皆して私を置いてかないでよ!1人はもう嫌だ」

「澪さん伊織さん……他にも……貴女の仲間は……居るから……1人じゃない」

「遅かったか……くそが!」


遅れて現れた澪が怒りを顕に近くにいる侵略者を蜂の巣にする


「結死なないでお願いだから……」

「あの傷じゃあ……」

「無理だ助けられん」

「まだ助かる方法が……」


錯乱状態の雫はどうにかして助けようとしているがどう見ても助かる傷ではない

澪は雫を殴り胸元を掴む


「え?」

「俺たちの任務はまだ終わってねぇ!結は助からねぇ」

「澪は結を見捨てろと!」

「あぁ、そうだ!俺達はこれまで多くの命を犠牲にしてここに来た!このチャンス逃せばもう二度と来ない!俺たちは何のために戦っている?」

「守りたかった者を守れない私にもう戦う理由なんてない」

「結……まだ喋れるな?」

「……私の愛した……椎名雫は」

「ダメ喋らないで」

「止めるな聞け、伊織時間稼いでくれ」

「了解」


伊織は銃を持ち敵を引き付ける

澪は手を離す


「美しくて優しくて……他人の為に……戦い続けた……私はもう……傍には居られないけど……お願い……私の愛した……たった1人の……私の……英雄……世界を救って……誰も……悲しまないように」

「結……私も貴女を愛してる……今まで伝えられなくてごめん……愛してくれてありがとう」

「……貴女は生きて……幸せになって……ね」

「…………」


結はゆっくりと目を閉じ息を引き取る

ゆっくりと雫は結を抱き寄せる


「埋葬する為にもここは勝つぞ」

「離れたくない」

「彼女の願いを無駄にする気か?」

「もう失いたくない……彼女のいない世界で生きれる自信ない生きたくない」

「お前もう1回殴ってやろうか?」

「気が済むまで何度でもすればいいよ」

「何度やろうが気が済むわけねぇだろ……死んだら今のお前のその気持ちも無くなるぞ」

「この苦しみが無くなるなら……」


斬姫の刃先を首元に向ける


「苦しみだけじゃねぇ、お前があいつを愛する気持ちもだ……お前は生きろと言われた救えと言われたならあいつの気持ちを無駄にしない為にも生きろ!その苦しみも痛みも抱えて生き続けろ」

「そんなのただの地獄……」

「あぁ、地獄さ。それが生きる事だ、生きてる奴だけが死んだやつの事を思い弔う事が出来る。あいつの事を忘れたくないなら生き続けろあいつという人間の生き様をお前が覚え続けろ。俺が戦う理由は俺が愛したいおりを死なせない為ただこれだけだ……もしそいつが死の直前に世界を救えというのなら俺はそいつの為に世界を救う」


銃を構える


「失わなきゃ何も分からない」

「あぁ、分からねぇな……だがお前は結の思いも願いも全部見捨てて死ぬのか?あいつが愛した世界もあいつとの記憶も何もかもを捨てて……それでもいいなら死ね」

「終わった?」

「すまん長引いた。ここからは俺に任せろ」

「一緒に戦うよ〜」


(失う辛さは失わないと分からない……何を偉そうに)

雫は動かない

頭の中で澪の言葉がループする


『お前は結の思いも願いも全部見捨てて死ぬのか?あいつが愛した世界もあいつとの記憶も何もかも捨てて……』


(そんなの捨てたくない……思いも願いも叶えてあげたい……記憶だって死んでも無くしたくない)

ふと幻影剣舞が消えていないことに気がつく

具現者本体が死ぬと能力で生み出されたものは本来消える


「……力を貸して結」


幻影剣舞の一刀を手に取る

死んでいる事は確定している……なのにどうして未だに消えていないのか分からないが


「斬姫」


剣を召喚し敵を斬る

(せめてこの戦いだけは傍にいて結)


「ようやく動いたか……疲れる」

「流石澪ちゃん」

「もっと褒めてもいいんだぜぇ……さてそろそろか」


他の部隊の生きていた隊員達が次々と集結する

数はかなり減っているが一気に戦力が増えた


「あと一押しだ!お前ら行くぞ!」

「うぉぉぉ!」


澪が叫ぶと呼応するように皆叫び敵へ突っ込む

その中には雫も居て前線で戦っている

最後の一体に斬り掛かる雫の頭上から凶刃が襲いかかる

死角からの攻撃だ、雫は気付いていない


「避けろ雫!」


澪が叫ぶも反応に遅れ間に合わない

完全に雫を捉えていたはずの攻撃は雫の体をすり抜け地面に突き刺さる

雫はすぐに攻撃に切り替えて斬姫で斬りかかり能力でとどめを刺す


「避けたのか?……それよりもか伊織!トドメだフルで行くぞ」

「了解〜」


こと殲滅力、瞬間火力に関してはトップクラスの具現者2人による絶え間無く続く弾幕によってコアは粉砕される


「よくやった雫……てか最後どうやって避けた?」

「結のおかげ」

「?」

「結の能力は任意で物体をすり抜ける事が出来る」

「だからか……あれなんで結の武器残ってるんだ?」

「私にも分からない」


雫が大事そうに抱きしめると幻影剣舞と斬姫が一瞬光り消える

(消えた……)

一瞬残念そうにすると澪が剣を指差す


「おいその剣なんだ?」

「斬姫……じゃない」


姿が変わっていた二刀一対の結の幻影剣舞に似ているが色合いが斬姫と同じ


「これは一体?」

「初めて聞く状況だな」


結とこの場に残っている数人の死体を回収して帰還する

この作戦での死者は大量に出たがそれでもこの基地を破壊出来たことは大きい

十数年発見されてなかったレベルの大きさの基地、これの破壊によって世界的に見れば小さいがそれでも多くの土地を奪還に成功した


〜〜〜


数年の月日が流れても未だに戦争は終わらない


「作戦会議の時間だぞ〜」

「分かってる、すぐ行く」


結と一緒に写ってる写真を見て


「結行ってくるよ」


そう言って雫は部屋を出る



君を忘れない為に生きる

君を愛する為に私は生きる

私が愛した君が愛した世界を救う為に

君の願いと思いを抱えて戦う

君のいないこの世界で君を想い続ける

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それ故に死神は戦場を駆ける 代永 並木 @yonanami

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