戦闘描写練習1
sinthita
第1話
その瞬間、互いの存在を感じた。わずか10メートルほどだ。
お互いを無視できない存在であると認識したのだ。
大男はその場で銃を男へ向ける。
男はすぐさま物陰へ隠れる。
刹那、まぶしい閃光とともに銃声がとどろく。
大男が持つ軽機関銃が男の隠れるコンクリートの柱を削っていく。
銃弾が男の灰色の軍服をかすめる。男は一切の焦りも見せずに、フラッシュバンを大男の目の前に投げ込む。
爆音と閃光が鳴り響く。大男から視界と聴覚をわずかな間奪った。
その短い時間に男は別の柱へと移り、そこから顔と銃だけを見せて大男に向かって発砲する。
男が撃ったアサルトライフルの弾丸は大男がいた場所を通っていく。
歴戦の兵士は簡単には予測できた。視界を奪われる前に見ていたことに従ってすぐさま隠れていた。
一つの攻防を終えて、静かな時間が流れる。お互いの行動を見て、次の行動を考える。相手の予測を裏切るように動こうと考える。
方針はほぼ同時に決まった。そして、同時に動き出す。
わずかに早かった男が先手を取る。柱から横に転んで飛び出して1回転した時に足を立てて射撃の体制をとりすぐさま撃ちだす。
軽機関銃ほどの連射速度ではないが大男が顔を出せないようにするには十分だ。
男は立ち上がり弾倉から弾がなくなる前に柱に隠れる。
この瞬間を待っていた大男は腰のポーチからグレネードを取り出し、ピンを抜き、レバーを外す。
冷静だった男はここで焦りを見せる。数秒後にはここに向かってグレネードが投げられるだろう。その瞬間死ぬ。逃げる場所はない。
そのピンチを打開する方法は一つしか思いつけなかった。
大男は落ちると同時に爆発するぐらいまで待つとグレネードを投げる。
投げるために踏み出した足音を聞いて男は飛び出す。右手には拳銃、左手にはナイフを持っている。姿勢は低く、一直線に駆ける。
大男は驚きに全身が固まる。だがグレネードはもうすぐ爆発する。男に当たるように投げようにもそうなれば自分もダメージを受ける。仕方なく、放り捨て、すぐさまナイフを引き抜く。
男は走りながら拳銃を大男めがけて撃ち続ける。
大男はそんなものにはビビらず、向かっていく。走りながら拳銃など充てることは難しすぎるのだ。
しかし、男は腕に自信があった。近接戦の構えをとる大男の左腕に命中させる。
その時二人の距離は2メートル。もう拳銃などいらない距離だ。男は拳銃をおとしながら左手のナイフを右に持ち替え走った勢いのまま突っ込む。
まず、男がナイフで突く。
大男は左手で胴体に向かうナイフをそらす。痛みに顔をゆがめる。
それでも、左手で男の腕をと胸倉をつかむ。大男は腰の右側と腰を男に押し付け柔道の投げ技を繰り出す。男はきれいに飛ぶ。
床はコンクリート。致命傷だ。男はそれでもあきらめない。
受け身をとり、ダメージを最小限にする。
全身が折れそうなほど痛む。それでも、右手を付き、大男の足を刈る。
バランスを崩した大男はその場に倒れる。つかんでいた手は緩む。
そのすきに男は腕を振り払い立ち上がる。
その場にフラッシュバンを落とす。それは互いの視界を奪った。
男は大男が倒れこんだ位置めがけて両手でナイフを振り下ろす。
肉を裂く感覚が腕に伝わる。視界が回復し刺さったのは左胸だった。
男はフラッと立ち上がり、元の道を進んでいく。
戦闘描写練習1 sinthita @sinthita
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます