二人きりでゲーム

 寿司を満喫してお店を出た。


「それにしても、奢ってもらっちゃって良かったの?」

「うん、いいのいいの。ショウくんを養ってあげる約束だもん。その第一弾だね」


 いや、すでに同居させてもらっている時点で第三弾――いや、第十二弾はいっていると思う。


「次は、俺が奢るよ」

「気にしないで。ショウくんが幸せになってくれるなら、わたしはそれで満足だから」


「とは言ってもなぁ。なあ、桜花。なんでそんな優しくしてくれるんだよ?」


 そこがずっと引っ掛かっていた。

 学校では軽いノリで言っただけかと思っていたけど、今日は本当に同居することになったし、飯も奢ってもらった。


 ここまでくると理由が知りたかった。


「わたしの本心が知りたいのね」

「そうなんだ。教えてくれないか。このままだと気になって夜も眠れないよ」

「あはは。じゃあ、教えない」


「え、ひどっ! 眠れないじゃん!」

「なーんて冗談。理由なんて単純なんだけどね。幼馴染なのもそうだけど、一緒にいて楽しいし、一番信頼できるし、ドキドキするから」


 えっ、それって……もしかして俺のことが。


「そ、そうなのか」

「ショウくん、顔赤いよ~?」


「み、見るなっ。ジロジロ見ないでくれ、余計に恥ずかしくなる」



 俺は視線を逸らす。だが、桜花はそれでも見てきた。さては、からかってるなあ!?



「え~、ずっと見ていたいなあ」

「くぅ……」



 桜花の顔がまともに見れなくなった。正直、そこまで思ってくれていたとは思わなかった。



 そわそわしながら、マンションへ戻った。


 またあの最上階にある部屋へ帰宅。


 リビングにあるソファに座って、まったりしていると桜花が冷たいコーヒーを出してくれた。



「どうぞ、ショウくん」

「ありがとう。ん、それは?」


「このゲームソフトで遊ばない? 協力してゾンビを倒していくヤツなんだ」

「へえ、面白そうだね。やってみよう。って、桜花ってゲーム買うんだ」


「うん。配信とかでもやってるし」


 それもそうか。ちゃんと実機でプレイしているんだな。このリビングにもたくさんのゲーム機があった。あんな大画面で遊べるとか贅沢だな。


 桜花はゲームをセット。


 俺の隣に座った。

 ち、近いなぁ。


「桜花、そんなべったり……」

「気にしない気にしない。昔だってこんな風な距離感だったじゃん」


 確かに、そう言われるとそうだ。子供の頃は、一緒になって遊んでいたっけな。そうだ、別に今も昔もそんなに大差はない。ただ、体が大きくなっただけのこと。


 ゾンビゲーを起動。


 ロードが始まってタイトル画面へ。

 どうやら、一人称タイプらしく、画面が半分に別れた。なるほど、FPSなんだな。


 ショットガンを手にし、荒廃した街を歩く。そこら中にゾンビが徘徊している。ノロノロと歩き、こちらに気づくと牙を剥く。


 やられる前に銃を撃ってゾンビを撃破。



「おぉ、雰囲気あるし、怖いなこのゲーム」

「リアルだよねえ。この血のドバドバ感とか」



 バンバンとゾンビを倒していく。生存者を救出し、仲間に引き入れていく。どうやら、そういうサブミッションも存在した。


 だが、道中で生存者が裏切り、しかも武器やアイテムを奪われた。なんてヤツだ!


 結局、その裏切者がラスボスだったオチ。ゾンビモノって、なんだかんだで人間の方が怖いって話に収束するんだよね。



「ふぅ、面白かった」

「怖かったねえ、人間が」



 その通り。人間の方が怖かった。

 もう後半は裏切者のなんでもあり状態。ゾンビを駆使して嫌がらせの限りを尽くしてきやがったし、攻略大変だったな。



「桜花とこうしてゲームするのも楽しいな」

「良かった。わたし、ゲームはヘタクソだから、慣れている人がいると助かる」

「そうなのか。配信では上手くやっているように思えるけど」


「ぜんぜん。リスナーさんが指示してくれるから、そのおかげ」



 ああ、いるよな。コメントで指示する人。という俺も、たまーにスパチャで指摘していたけど。本当にたまにだけど。



「そうか。じゃあ、これからは俺がゲームを教えてやる」

「ほんと? すっごく助かる。ゲーム上手いVTuberって注目浴びやすいからね」



 なら、その悩みを解消する為に、俺は頑張ろう。この日、時間を忘れて桜花と共にゾンビゲームに没頭した――。



 * * *



 俺は、桜花をゲーム指導者として支えていく。桜花はシズカとしてVTuber活動を。Win-Winな関係でこれからも、生活を続けていく。





【あとがき】

 ここまでありがとうございました。VTuberモノは初めてでしたが、楽しく書けました。もともと短編でやるつもりだったので十分続けられました。応援も多くいただけて嬉しいです。はじめてにしては伸びた方かなと思います。皆様のおかげです!


 また懲りずにVTuberラブコメをやろうかなぁと思います。もしくは、この作品の続きを書くかもです。応援いただければ続くかもです。



 とりあえず、いったん完結とさせていただきます。本当にありがとうございました。



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No.1のVTuber(幼馴染)が俺を養ってくれるそうです 桜井正宗 @hana6hana

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