第2話 男性会員

◆◇◆◇◆◇◆◇

コーヒーを飲んでいた私はなかなか繋がらない電話に今日は終えようかと思っていたら、

「男性とつながります」とアナウンス。何度聞いても一番緊張するタイミング。

「もしもし。」

と、男性にしては少し高めの声かな。

私も、もしもしと返す。

男性会員さんの最終的な目的は会ってセックスすること。だからまずここで品定めをされるのだ。

名前とどこ住みを聞かれる。

いつも、適当な名前と住んでる場所を伝えるんだけど、この時は本名とちゃんと住んでるところを伝えてしまった。

男性会員も結構シビアで第一声でぶちって切られる、どこ住みかで切られることもよくあった。まず最初の3分はお給料が発生しないので、サクラにとっては一番の頑張りどころなのです。なのに、そうやって3分が持たない。

この人は、そんなこともなく、普通に話してくれた。

その時話した内容はほとんど、いや、全く覚えてないなぁ。

毎回違う人間を演じて会員さんと接しているので本当に内容は覚えていない。

かなり特徴的でないと、声も覚えてること少ないかなぁ。

普通におしゃべりしてその時は終わったような気がする。

その日はそれで終わり、夕食を作って食べて寝た。

次の日以降、仕事も忙しかったのと、あまり気乗りしなかったのでサクラのバイトはしなかった。


当時の私にはセックスフレンドがいた。

月に1回程度の割合で向こうから連絡があった時にホテルに行きセックスして仕事やプライベートの話をしていた。友達以上恋人未満っていう感じの大切な友達だった。

その人と会った次の日だった。

久しぶりにサクラのバイトをした。

最初につながったのは、先日話したあの男性だった。男性の方が覚えてくれていたみたいで、前回話した内容を話してくれたので、何とか思い出せたけど、覚えてないことが申し訳なくて。

でも、話は弾み、いっぱいお話をして、もうけさせてもらったのだけど、いい人過ぎてだんだん心苦しくなっていった。

今までも話が弾んでたくさんお金を落としてくれた方はいたけど、男性のときのような気持にはならなかった。普通にラッキーくらいしにか思わなかったのに。


素性を教えることは自己責任、でもそれは電話でお話ししているときのこと。前に話したように会うことは規約違反。個人的な連絡先を教えることも規約違反。

私は一度その規約を違反していた。先程のセックスフレンドは「お客さん」だった。

まぁ、とってもいい人で良い関係を築けただけかもしれないが、今思えば、本当は怖いことだったんだと思う。

そして、また規約を破ろうとしていた。

男性に固定電話の番号を教えた。

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声の魔法 ふじみ @Fuji_Mi

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