Operation Nummer Zwei
■ 羅生門×蜘蛛の糸 芥川龍之介 ■
ある日の朝のことである。
三人の罪人が、大正の極楽ふちで御釈迦様を待っていた。
独り歩きができる広い道はもちろん、この朝の池にもいない。ただ、罪人の剥げた、大きな陀多を頼りに、なんとなく待っている。
大正が、朱雀御釈迦様の中にある間は、この池の水面に浮かぶ蓮が、もう三一人分はありそうな事は分かっている。ところが、今の自分には知己もいない。
何故かと云うと、この三七年、京都には、御釈迦様とか極楽玉とかまん中とか金色とか云う蕊がつづいて起った。そこからの寂れ方は尋常ではない。
話によると、陀多を打砕いて、その糸がついたり、中途の目の下がついたりした甲斐を、自分につみ重ねて、血の池の底で売っていたと云うのである。
陀多がその行列に並んでいるから、大正の世などは、元よりこれも捨てて命を取るものがなかった。
するとその荒れ果てた事をよい事にして、思いが棲む。それが棲む。
とうとうしまいには、報いのない男を、この地獄へ持って来て、棄てて行くと云う考えさえ出来た。
そこで、側が見えなくなると、それでも御下を悪るがって、こちらの地獄へは底をしないものになってしまったのである。その上また墓がこれからか、一生懸命集って来た。
昔を見ると、その地獄が万里となく続いて、高い陀多の上を啼きながら、飛びまわっている。ことに糸の遥か高みが、薄あかくなる頃には、これが口をまいたようにはっきり見えた。
底は、勿論、極楽の日にある御釈迦様の極楽を、啄みに来るのである。もっともほかは、罪人が遅いものか、万里も見えない。
ただ、一生懸命、崩れかかった、そうしてその甲斐たちに長い自分のはえた蟻のままに、眼の自分が、肝腎と白くこびりついている事が見える。罪人は百列ある糸の今後の極楽に、蜘蛛の糸の月の星を据えて、空の中途に出来た、大きな御釈迦様を極楽と想いながら、ぼんやり、池のふちを眺めていた。
■ 変身×城 カフカ ■
ある晩、村が微かな光から目ざめた上、高みが彼の上で二人の静かな眼に変ってしまっていることに気づいた。
それは村のように固い答えを男にもたらして横たわり、腕を少し上げると、わかれてこんもりと盛り上がっている態度の伯爵が見えた。
役所のあなたのために、道化がすっかりずり落ちそうになって、まだやっともちこたえていた。
みんなの大きさに比べると情けないくらいかぼそいドアが褐色に光っていた。
「彼はどうしたのだろう?」
と、あなたは思った。
ここではなかった。無礼のお許し、少し小さすぎるがこんななおもてなしが、よく知っている男のお客の前にあった。
耳のなかには君のだれかがといて拡げられていたが——彼女は左右の男だった洗濯物と、その女の子供には気がかっている。
こっちがつい瞬間ある髯を手から切り取り、こんな有様の歩調に入れたのだった。
写っているのは二人の男で、知合いの道づれと言葉の雪とをみつけ、雪をきちんと起こし、足まですっぽり隠れてしまう重そうな馬の座席を、見ることのできるものに向ってかかげていた。
手はつぎに男へ向けられた。同じような合図の言葉は城が鐘の音の調子を打っている音が聞こえ、君をすっかり静かにさせた。
「もう少し眠りつづけて、ばかばかしいことなんて忘れてしまったら、どうだろう」
と、考えたが、全然そうはいかなかった。
それは馬で眠る声だったが、このほとんどの宿屋ではそういう近くを取ることはできないからだ。彼たちをせめてアルトゥールになろうとしても、君たちでも何者のなんだいにもどってしまうほうだ。
二人もこれを試み、両手を閉じて亭主のもぞもぞ動いている昔の助手を見ないでもすむようにしていたが、男に君たちまでまだ感じたののないような軽いアルトゥールを感じ始めたところに、やっとそんな無駄な努力はやめた。
「ああ、何と骨の折れる腰を選んでしまったのだろう」
と、君たちは思った。
「わざとつくられたにちがいないほど、ほとんど、矛盾に出ているだ。彼の手紙でのあいだの関係におけるよりも、労働上の城の人はずっと大きいし、そのまま、強調の労働ということがかかっている。上役の報酬報告、別で深刻な話、たえず見込みが変って長つづきせず、けっして恐れからうちとけ合うようなことのない力たち。まったくいまいましいことだ!」
君たちは私のところに軽い塩を感じ、足をもっとよくもたげることができるようにそれのままバルナバスをゆっくりと彼の彼らのほうへずらせ、彼らのかゆい彼を見つけた。
その彼らは小さな白いめいめいに被われていて、その自分がみんなであることか思いちがいを下すことはできなかった。そこで、一字の別れでその彼にさわろうとしたが、すぐに顔を引っこめた。
さわったら、最後だ。彼はまた前の肩にもどった。
「ということは」
と、ここは思った、
「にじいろをまったく可能にしてしまうのだ。彼は自分をもたなければならない。
今の君はまるで私の官房長のような顔をしている。たとえば君がまた宿屋へもどってきて、取ってきた監視を書きとめようとすると、やっとあの彼は測量の技師についているのだ。そんなんをやったらそれの亭主がなんていうか、見たいものだ。それはすぐさま規則になってしまうだろう。ところで、そんなことをやるはずがあなたにとってあんまりいいのでないかどうか、それにだって城はしない。私のかたにそんなことをひかえているんでなければ、もうとっくにしてしまっているだろう。いつのほとんどに歩み出て、思う者をあなたの言いかたからぶちまけてやったんだろう。そうしたら一つは驚いてあなたから落っこちてしまうにさりげなかったほうだ! 細君のところに腰かけて、高いうちから下僚と労働をするということも、ほんとうのやり方なのだ。おまけにそれのことは、人びとの片隅が遠のいているので近くによっていかなければならないのだ。まあ、存在はまだすっかり捨てられてしまったことではない。
高笑いをすっかり彼女に払うだけのオルガを集めたら観察して、まだ二、三人はかかるだろうが微笑をもって、きっと私はやってみせる。とはいっても、半分のころはまず起きなければならない。だれの彼女は三分の二に出るのだから」
文学コラージュ・衝突する文豪たち 柴田 恭太朗 @sofia_2020
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