第3話再会

とうとう、明日は拓斗君と会う日。

私は今から…いや、ずっと緊張している。

拓斗君からの告白の手紙を貰ってからずっと。

あれから私は、手紙を送った。

告白の返事を書いた手紙を。何度も何度も書き直しをしたりしていたら、拓斗君から手紙を貰ってから一週間以上たっていた。

その手紙を出してからは拓斗君から手紙はない。メールも電話もないまま明日、会う。


再会当日。

お父さんは拓斗君達を向かうに空港に行った。私とお母さんはバーベキューの準備をして待つことにした。

準備なんてしてられない!心臓がバクバクとなっているのが分かる。ここから逃げ出したい!私は恥ずかしさでいっぱいだった。

「ただいま~」

お父さんが帰ってきた。

ってことは拓斗君も、だよね…。

私は下を向いたまま、準備を手伝っている風にしていて、しばらく拓斗君を見る事さえ出来ずにいた。そんな様子を見ていたのか拓斗君の方から声をかけてくれた。

「久しぶり…だね。元気だった?」

「うん。元気。拓斗君も元気そうだね?」

「うん…。」

しばらく沈黙が続いた。

拓斗君も何だか緊張している?

お父さんが「乾杯!」と一言言った途端に、大人達の賑やかな話し声が響きわたる。

今日は拓斗君家族の他にもうひとり、拓斗君のお父さんの友達も来ている。その人がとにかく豪快な人で、私の声なんて届かない。

私は乾杯をしたジュースと、お母さんがとってくれた、お肉や野菜を食べ始めた。もう、食べるしかない!

拓斗君も私の隣で黙々と食べ始めた。


1時間くらい経った頃に、拓斗君が口を開いた。

「手紙、ありがとう。」

「う、うん…。」

私は、あの時の手紙にこう書いた。

《 私も拓斗君が好きです。》

と。ただ、それだけを書いて送った。

「びっくりしたよ、ね?ごめん。何か…。実はさ、前の手紙に一音ちゃん、気になっている人がいるって書いたの覚えてる?」

私は黙って頷いた。確かに書いた。どうせ、私の事なんて気にしてないだろうと何気に書いたやつだった。

「あれさ、結構ドキッとして。一音ちゃん、日本に好きな人がいるんだって。でも、自分の気持ちを伝えないまま、無しにするのはしたくなくて…。」

拓斗君は恥ずかしながらも真剣に話してくれた。拓斗君もまた、小学生?ってくらいしっかりした人だな。

だから、私も真剣に。

「わ、私ね、拓斗君は私の友達の零の事が好きなんだと思ってて…。」

「え?そうなの?あ、もしかして、手紙に零ちゃんの事を聞いたりしてたから?」

「う、うん。ほら、前に零との写真送った事があるでしょ?それみて、拓斗君が零の事、一目惚れとかしたのかな~って、思って。」

「そっか。ごめん。うん。確かに一目惚れなんだよ。それは、僕ではなくて、剣(けん)がなんだ。」

「剣、君?」

「覚えていない?もうひとり、日本人の霧島剣。いつも、野球の帽子をかぶっているやつさ。そいつが、たまたま写真を見てさ。零ちゃんが気になったみたいで。」

「そ、そうなんだ…。」

「剣が零ちゃんの事、色々知りたいとか言うもんだから。ごめんね。そんな、一音ちゃんが気にしてるなんて思わなくて。」

「いいの。知れて良かった。」

私はホッとした。そっか。そうなんだ。私は手元にあるジュースを一気に飲み干した。

少し手が震えていた。

安心なのか緊張なのか。きっと、両方なんだと思う。拓斗君は私の手が震えているのに気付いたのか、ゴソゴソと自分の鞄から紙とペンを取り出し何かを書き始めた。

紙にはこう書かれていた。

《一音ちゃん。これからも僕と文通して下さい。好きなんだ。一音ちゃんも、一音ちゃんが書く文字も。》

私もその下に返事を書いた。

《はい!私も拓斗君が好き。拓斗君が書く文字も、大好き。》

と…。

私達はまだまだ子供だし、すごい遠距離だけど大丈夫!

文字と文字が私達を繋いでくれる…。

これからもずっと…。













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初恋~君に捧げる文字~ @asa-gao

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