上質な悲しみの物語

名前の付いた登場人物の多くは、大切な人を亡くしています。とくに時折挟まれる亡くした息子との回想のシーンは涙なしには読めません。

ですが、この世界では死は終わりではない、自己という記憶の消滅ではないのです。

通常、どんな偉業を成し遂げても、記録もしくは他者の記憶という形でしか世界に残すことはできません。しかしこの作品では、個人が記憶と技量を他者に受け継がせることができます。読者や主人公に見せられるのは記憶のほんの断片だけですが、読者の想像力を掻き立ててくれます。

昨日見つけて気づいたら朝でした。