第3章最終話 英雄譚の始まり

 俺が先輩達の方に行くと、結構押されていたが、何とか持ち堪えていた。


「先輩! 大丈夫ですか!?」


「ああ……何とか大丈夫だよ。けど残念だが僕たちじゃ倒せない……」


「すまないアルト。どうやら俺達はまだまだ弱かったようだ……」


 そう言って2人は肩を落とす。


「いえ、2人は凄いですよ。格上相手に戦って、こうやって俺が来るまで持ち堪えているんですから」


 俺がそう言うと、2人は少し笑って。


「「後は頼んだアルト」」


 そう言ってどこかに消えてしまう。


 どうやら2人は魔法で保健室に転移されたそうで、場外と言う判定になった。


 俺は相手に向き合う。


「あら? 次は貴方がお相手? と言うことはあの2人を倒してきたのね? へぇ……年下なのにやるじゃない」


「すいません、美人に褒められるのは嬉しいはずなんですけど、どうやら貴女には褒められても嬉しくないようです。もしかして整形でもしました?」


 俺がそう言うと、相手の女子生徒がいきなり手に持っていた鞭で攻撃してきた。


「お前、絶対にぶっ殺す!」


「ちょっと! そんなに怒らないでくださいよ! それでも信教者ですか!?」


「五月蝿い!! 女神様は信者が何をしても許してくださるのよ! だからとっとと負けて泣いて謝りなさい! 私の顔が整形と言ったことをね!」


 どうやら整形のことでめちゃくちゃ怒っているらしい。


 と言うことは……。


「整形というのは図星ということですか!?」


 適当に言ったつもりが、どうやらあっていたようだ。


 女子生徒は更に顔を真っ赤にして攻撃してきたが、その全てを余裕で避ける。


「くそッくそッくそッ! 何で当たらないのよ! いい加減当たらないと……ふふっ」


 俺が鞭の攻撃にかすり、上半身裸になると、突然俺の体を見て笑ってきた。


「ひっ!? な、何だよ今の……無茶苦茶ゾクッとしたんだけど! こいつはなんかやばい気がする……さっさとぶっ飛ばそう。うんそれがいい!」


 俺は反撃に出る。


「オラッ!! 【本気のパンチ】ッッ!!」


 俺の本気のパンチは、ソニックブームを発生させて女子生徒に迫るが、ギリギリの所で躱されてしまう。


「チッ、躱されたか……」


「いや何なのよあの攻撃はッ!?」


「え? ただの本気のパンチですが?」


「えっ? 本気のパンチ?」


「そうですよ。ただ単に本気でパンチするだけです」


 俺がそう言うと、女子生徒は突然笑い出す。


「は、ははっ。まさかこんな化け物がいるなんて……。こうなったら枢機卿に貰ったこの注射器を刺すしか……」


 そう言って女子生徒が注射器を首に刺す。


「や、やめろッッ!!」


「もう遅いわッッ!! あはははははははは!! 最高の気持ち!! あはははははははッ!!」


 そう言って狂ったように笑い、俺に向かって先ほどまでとは速さも重さも全てが桁違いになった鞭が放たれた。


「くッ……また止めることができなかった……注意していたのにも関わらず……」


 俺は魔族のようになり、狂ったように笑う女子生徒を見て思わず唇を血が出るほど噛む。


「すいませんでした……今から助けます……」


「あははははははッッ!! 何が助けるってッ!? とてもいい気持ちなのにそれを邪魔する奴はぶっ殺す!!」


 そう言って俺でも直ぐには倒せないほどの強さになった。


 俺が攻撃しようとした瞬間、突然全ての女神教校の生徒が、この女子生徒のような姿に変わり、暴れ出す。


 まるで学園での光景をもう一度見ているようだった。


 くそッどうする……? こいつらの強さは前回の奴とは比にならないくらい強い。


 コイツらと戦えるのは現時点でサーシャとソフィアとアナしかいない。


 これは俺が【精密感知】で確認したから確かだ。


 俺は現状を把握して、とてもやばいことになっていることを知る。


「はぁ……これは出し惜しみをしている暇はないな……」


 俺は新しく作った魔法に一か八かかけることにした。


 俺は目を閉じて全ての感覚を遮断する。


 すると時間の感覚すらも朧気になっていく。



 ————代償魔法【永久の瞳】




 再び目を開けると、全ての物が限りなく停止に近いくらいの速度で動いている。


 よし、それじゃあやるか!


 俺はまず戦っていた女子生徒の腹を思いっ切り殴って真上に上がるように調整する。


 そしてその後にリングの外に出て、サーシャ達が相手をしている個体以外の、全ての化け物になった女神教校の生徒を気絶させていく。


 その全てにかけた時間は、0.1秒にも満たない。


 俺はすぐに【永久の瞳】を解除して、元に戻った世界で新しい魔法を唱える。


「頼む成功してくれよッッ!! 【代償変換・呪いの人形】ッッ!!」


 俺がそう言った瞬間に、俺に降りかかるはずだった代償が、突如現れた人形に吸収されていく。


 俺は人形が崩壊しないように、絶えず大量の魔力を送り込む。


 それから2秒ほどで代償が終わり、呪いの人形が完成する。


「はぁはぁはぁはぁはぁ……せ、成功だ……はぁはぁはぁ……魔力使いすぎだろうがよ……」


 俺はその瞬間に意識を失った。  


 




♦︎♦︎♦︎

(三人称)






 サーシャ達が一体ずつ倒した後、周りを急いで確認すると、全ての化け物が気絶していた。


「あ、アルトはッ!?」


 3人は一斉にリングを見ると、禍々しい魔力を纏った人形が落ちており、その近くにアルトが倒れていた。


 急いで駆けつけると、アルトは気絶しているだけで、他に特に異常はない。


「よかったぁぁぁ。もしアルトに何かあったら私死んじゃうよ……」


 サーシャはそう言って泣きながら崩れ落ちる。


 ソフィアも同じく泣きながらアルトを心配していた。


 アナは、長年アルトに仕えているため、アルトは大丈夫だと信じて、先に呪いの人形をどうにかすることにした。


 アナは取り敢えず封印魔道具に入れて、自らの影へと収納する。


 こうして学園対抗戦の幕が降りた。


 この騒動により、のちに邪神教が世界に知られることとなる。


 なぜならこの学院にいる全ての人が、生徒が化け物になる姿を見ていたからだ。


 きっとこれから更に大きな騒動に巻き込まれることになるだろう。


 そして必ずアルトやサーシャ達は、その戦いに参加しなければならなくなる。


 しかし今、この瞬間だけは、そんなこと考えなくてもいいだろう。


 誰も被害を出さずに済んだのだから。


 1人の【不適合者】の活躍によって。





♦︎♦︎♦︎





 これは、のちに更に大きなことを成し遂げ、世界の英雄となる人物の序章に過ぎない。


 そして世界の人々はその人物をこう呼ぶこととなる。



 ————【異界の覇者】————と。





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 これにて第3章も完結です。

 第4章は学園卒業後の話です。

 お楽しみに!


 大変身勝手ながら、明日はこの作品の投稿をお休みするかもしれません。


 なので、作者のもう一つの作品、


『モブ以下転生者のゲーム世界無双~序盤で死ぬモブの女の子を守るために最強になったら、物語に巻き込まれました~』https://kakuyomu.jp/works/16817139556823421872


 を見てもらえると嬉しいです!


 ではではまた次話で。

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異界の覇者〜【不適合者】になった転生者は、銃と無属性魔法で異世界を生き抜く〜 あおぞら @Aozora-31

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