第72話 アルトの復活

 俺達3人がリングに上がると、観客からすごい声援が上がった。


 その声援の中には、『【不適合者】の子! がんばれ!』『【不適合者】でも最強だってとこを見せてくれッ!!』などと俺を応援する声も聞こえる。


 ははっ、マジか……今までさんざん【不適合者】と罵られてきたが、俺も声援を貰えるくらいに認めてもらえたと言うことか……。


「良かったなアルト。お前はもう【不適合者】だからと罵られることは無くなったみたいだ。こんなことは過去にないだろう。胸を張れアルト。お前は凄いッ!」


 そう言って俺を応援してくれるドロウ先輩。


 ユミル会長も俺にニカッと笑ってサムズアップをしている。


「ははは……本当にいい仲間を持ったな俺……。この期待に応えるためにも、この試合は本気を出してやろうじゃないか」


 俺はこの何ヶ月かずっと瞑っていた目をゆっくりと開ける。


 ああ、世界が違って見えるな……。


 それほど俺の感知力が上がったのだろう。


 俺は目でサーシャとソフィアを見る。


 サーシャ達は俺の目が開いていることに驚き涙を流していた。


 1人で座っているアナの方を見ると、満面の笑みで、『頑張ってください』と言っているように感じる。


 そしてアナがもう一つ口パクで何かを言う。


 えっと……『後で伝えたいことがあります』か……ん?


 俺はアナをじっくり見ると、今までに見たことないほど真っ赤になって恥ずかしがっていた。


 これは速攻で終わらせなければ、男が廃る!


 俺は意気揚々とリングに張られている結界の中に入った。


 





♦︎♦︎♦︎





 

 リングに先に入っていたドロウ先輩達が俺を見て驚いている。


「アルト、目は大丈夫なのかい?」


「はい、もうしっかり見えます。本当はもう少し前に見えるようになっていたのですが、修行の一環として閉じてました」


「なるほど……そう言うことか……で、どうだ? 修行の成果は」


 ドロウ先輩にそう聞かれたので、俺はニッと笑い頷く。


 ドロウ先輩はそれを見ると僅かに微笑み、相手へと視線を向けた。


 それに釣られて俺もユミル会長も女神教校に目を向ける。


 相手の制服はなんか修道服? みたいなもので、胸のところにはロザリオ的なものをくびにかけていた。


 いかにも信者って感じだな……。


 構成は男2人に女1人。


 男2人の強さは、意外にもドロウ先輩達と同レベルみたいだ。


 そして女はその2人よりもだいぶ強い。


 これはちょっと驚きだな……。


 そう思っていると、司会が合図を出す。


「それではっ! 学園対抗決勝戦スタートっっ!!」


 その瞬間に相手の男2人が向かってきた。


 ユミル会長が俺たちに指示を出す。


「アルトは男2人を倒してくれ! そして倒したら俺たちのカバーを頼む! ドロウは僕と一緒にあの女子生徒をアルトが来るまで押さえ込むんだ!」


「「了解!!」」


 ドロウ先輩とユミル会長は女の元へ向かう。


 それを邪魔しようと男2人が先輩達に攻撃しようとしていたので、2人に前に立ち塞がる。


「さぁお前達の相手は俺だ! さっさと終わらさせてもらおう!」


 俺が声高らかにそういうと。


「「【不適合者】とは神に見放された者達! そんな者に私達は負けん!!」」


 綺麗なハモリで返してきた。


 おお……お前たち双子かなんかかな?


 俺がそんなことを思っていると、2人が物凄い連携で攻撃をしてくる。


 まぁこれだと多分先輩達も苦戦していただろうなぁ……。


 俺はそんなことを思いながら余裕をもって避ける。


 パンチを避け、杖の攻撃も避け、蹴りも避ける。


 この光景は誰が見ても明らかにどちらが強いか分かるだろう。


 それは1番本人達がわかっているのか。


「くそッ! 神に見放された【不適合者】の癖に信徒である俺たちの攻撃を全て避けるなんて……」


「あり得ないッ! 俺達の連携は信徒一だ! それをこんな奴に通じないなんて有り得ないッッ!!」


 そう言って更に攻撃が激しく速くなっていく。


「うーん……昔の俺だったら多分苦戦していたんだろうけど、今の俺は視覚という戦闘において重要な物が見えていなかったから、今ではお前達の筋肉の動きまでよく感知出来るぞ?」


 俺はそう言って攻撃をされる前に、相手の体制では絶対に避けられない攻撃を繰り出して、2人とも同時に吹っ飛ばす。


「「がはッ!?」」


 俺はその2人に追撃とばかりに一瞬で移動して、相手が動くのを感知して妨害をする。


 そして怯んだところを……。


「【本気のパンチ】2連撃ッッ!!」

 

 思いっきり殴って一瞬で気絶させる。


「おおっとおおおッ!! まさかのアルト選手、怒涛の連携攻撃を全て避けきり、たった2発で相手選手2人をKOッッ!! まさに圧倒的!! アルト選手は先ほどまで目を瞑っていましたが、目を開けている!! これがアルト選手の本気なのかあああ!!」


 ふぅ……久しぶりの視界だったけど、戦闘がめちゃくちゃ楽だな……。


 よし! 2人を倒したことだし、ドロウ先輩のところに行くか!!


 俺は先輩達の元へと向かった。


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 やっとアルトの復活です!

 これからアルトの無双劇が始まりますよ!

 この章も、とうとうクライマックスを迎えます!

 お楽しみに!


 作者の新作である、


『モブ以下転生者のゲーム世界無双~序盤で死ぬモブの女の子を守るために最強になったら、物語に巻き込まれました~』https://kakuyomu.jp/works/16817139556823421872


も見ていただけると嬉しいです。


 ではではまた次話で。

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