公園の舟
白川津 中々
■
昼間からお酒を飲んでいながら、「なんと駄目なのでしょう」と咎めてくれる良人もおらず、暇を共にする友人もいない私は、一種の慰めになるかと思い公園へと向かいました。
夏の初め、じじじ、と蝉が鳴きはじめております。日照りは良好ですが、昨晩までの雨で蒸し暑く、手を握ればじわりと汗が滲む嫌な天気でした。私は公園に行くまでにへとへととなってしまうのではないかと道中懸念しておりましたが、実際に到着してみるとやはりへとへとになってしまっており、どうしてこんな真似をしたのだろうと後悔いたしました。
とはいえ公園に着いたわけですから何かしなければ気が収まりません。黙ってベンチに座って呆けているだけでもよかったですけれど、目敏く池があるのを見つけました。
そこには貸舟があって、一回幾らと看板に書かれておりました。私はこれもいい機会だと舟貸に金を払い「いい日和ですね」などとと愛想を振りまき、「えぇそうですね」というぶっきらぼうなオヤジに腹を立てつつも、一時的な所有物となった舟に乗り込んで、ゆっくり、ゆっくりと櫂をこいでいきました。
池の真ん中くらいにつくと私は手を止めて、そのまま仰向けになりました。腕は既に疲労に腫れ、掌はジンジンと熱を帯びております。それ故に、舟艇に身を預けると心地よく、僅かな揺れに、安堵を覚えるのでした。
このままずっとこうしていたい。
非現実的な欲望を考えながら目を瞑っていると、遠くの方から声が聞こえてきました。それは男女の楽し気な笑いでした。
私は急に惨めになり、起き上がって急いで櫂を泳がせて停泊所まで戻りました。舟貸のオヤジが「お早いお帰りですね」とニヤニヤしながら声をかけてきましたが、返事はしませんでした。
後ろから、男女の笑う声が聞こえます。舟など借りるんじゃなかったと思いながら、私はまたへとへとになりながら帰路につくのでした。
公園の舟 白川津 中々 @taka1212384
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