耳の聞こえない私が出会った運命の相手は同じ境遇を生きる一人の女の子でした

ゆいとき

耳の聞こえない私が出会った運命の相手は同じ境遇を生きる一人の女の子でした


「おはよう愛華まなか


 家の前で待つ愛華に向けて笑顔で挨拶すると、私の存在を待ち望んでいたかのように勢いよく右腕に自身の腕を絡めてくる。いつもの事だけど、いきなりこんなことをされるのは心臓に悪い。前にそれを指摘したら「早く慣れて」と聞く耳を持ってはくれなかった。


「おはよう紗香さやか、学校行こ?」

「うん、行こっか」


 絡めた腕はそのままに、私達はいつもの通りを歩き始める。一日の始まりを知らせる合図は起きた瞬間でも日差しを浴びた瞬間でもなく、愛華の手に触れ言葉を交わすこの瞬間だった。






 まだ誰もいない教室に着く。とある理由から周りの人達に気味悪がられている私達が後から来ると、皆からの視線と表情が嫌でも目に入って何を考えているのか分かってしまうのでいつも早めの登校を心がけていた。

 特別決められた私達の席に座り、自然な動作で彼女と体を近付けながらお互いに持ってきている本の話を中心に様々な話題で雑談に興じる。人が来ても関係ないとばかりにその会話が終わる事はなく、それはホームルームの始まる先生が教室に到着するまで続くのだ。そんな時間が、私にとってなによりも大切で、それはお互い共通する所だと思う。


「紗香は行きたい高校とか決めてるの?」

「私はまだ……そういう愛華は? まだ勉強できる私の方が愛華に合わせた方がいいでしょ」

「私もまだだよ。正直どこでもいいと思ってるけど、出来るなら生徒の質が良い所に行きたいよね」

「それは私も同じ気持ちだけど、実際通ってみないとそういうのって分からないものだしねぇ……」

「そうだよねぇ……うぅ、勉強しなきゃ……」

「でもまだ一年は先の話だから。少しずつ頑張っていこ? 私も協力するから」

「紗香ちゃん……やっぱり秀才で性格までイケメンの紗香ちゃんしか私にはいないよぉ」

「性格イケメンよりも可愛いって言われたいんだけど」


 そうやってお互い笑っていると、窓側に座ってこちらを向いている愛華の目がチラリとドアの方に向いた。それも一瞬の事で、すぐにその視線は私に戻るのだが、その一連の行動から何を見ていたのかが容易に想像が出来る。


「笹山さん来ちゃった」

「そっか、いつも早いもんね」

「うぅ、二人きりだったのに……」

「仕方ないよ、教室だからね」


 本来、振り向いて二人でクラスメイトに挨拶でもするのが普通なのだろうが私達はそれをしない。それをしても彼女たちの想いを知って辛くなるだけだと理解しているからだ。


「笹山さんなんてどうでもいいよね。紗香との時間を別の人の話題で潰すなんて勿体ないや」

「愛華は本当に私が好きだねぇ」

「えへへへ、好き~!」


 目の前で彼女が今日一番の笑顔を浮かべて私の腰に頭を押し付け腕を回し抱き着いてくる。いきなりの行動に心は慣れないまま、身体は既にそれを受け入れる態勢になっている程には洗練されていた。

 左手を彼女の背中に触れさせて右手で頭を撫でる。椅子に座っている為多少の痛みが足に響くが、その程度は彼女の無垢な少女の如く浮かべる元気な笑顔の前では無痛に等しい。

 愛華の髪の触り心地に安心感を覚える。変態的な行為をしているのは理解しているが、彼女自身は勿論彼女の行動一つ一つに私を引き付ける魅力が備わっているのだ。

 幸せを噛みしめながら自分に出来る相手への愛情表現を惜しみなく向けていると、やはり幸せのまま過ごしていけるほど甘くないのか、背中越しに声が聴こえた。


『またやってる、気持ち悪い』


 戻したくも無い思考を無理矢理現実に引き戻され、苛立ち隠さぬまま頭だけ振り向いて思い切りその発言主である笹山さんを睨みつける。

 すぐに気が付いた彼女は先ほどまでの甘い表情から一転した豹変具合に委縮してしまい頭を下げて教室を後にした。「怖い怖い」と怯えながら逃げていくその姿には思わず失笑してしまう。

 ────そう思う位なら、最初からこっち見ないでよ。


何も直接的な被害や迷惑はかけていないのだから、何も言われてもこの愛華との時間の接し方を変える考えを持つ気は無い。勝手に気味悪がって勝手に怯えて勝手に逃げるのだからせわしないものだ。

 腕に力を入れている事に気が付いてすぐに緩めてみると、やはり息苦しかったのか、文句の一つでも言いそうなジト目でこちらを見ている。


「もう、どうしたの急に!」

「ごめん、可愛すぎて強く抱きしめすぎちゃった」

「……もう、そうやって可愛いって言えば許されると思ったら大間違いなんだから! えへへ」


 思い切り頬が緩んでいる所を見るに、もう機嫌は最高潮の様だ。こういっては彼女に悪いがあまりにもチョロすぎる。


「今チョロいって言った?」

「いっ、いいい言ってませんけど!?」

「なんで動揺してるのかな? さやかさぁん」

「ひぇぇぇ!」


 お仕置きとしてしばらくわき腹を擽られまくった。死ぬかと思った。

 


 こうやってふざけているが、笹山さんが来たことを考えるとそろそろ一気にクラスメイトが登校してきてもおかしくは無い。流石にずっと抱きつかれたままなのも問題なので自分の席に座るよう促すもなかなか離れてくれない。そんな諦めの悪い姿も可愛いのだが。


「学校終わったらまたいくらでも抱き着けるから。どうせ一緒に帰るんだし、ね?」

「うぅぅ、紗香成分が足りてないのに……」

「愛華はまだそんなこと言って……」

「あるんだよ! 私にだけ効く紗香成分が!」

「さいですか……」

「その反応は信じてないな! 本当にあるんだから!」


 ぶーぶー喚きながら私の成分の効果と効き目を説明しだす愛華を見て癒される私の図。その姿は私に頭を撫でられながら気持ちよさそうに目を瞑っているの。話題が割と馬鹿らしい所を抜かせば、それでも見ているだけで癒される効果が愛華には存在する。彼女の言う私の成分と言うのもそれに似たようなものなのだろう。


「あっ、先生来ちゃった」

「え? 本当だ、前向かなきゃ」


 そう言われて気が付くと、先生が来たことにより急いで皆がそれぞれの席に着こうと動いている最中だった。その中にはさっき逃げるように教室を出てった笹山さんも勿論いる。私の方を見ていたのか、ビクッと肩を震わせてすぐに先生の立つ教卓の方へと視線を戻した。見世物のようにいちいち見られては見つめ返すとすぐに視線を逸らされる。毎回こんな反応をされては流石にストレスも募ってしまう。

 今そんな事を考えては仕方がないと、先生が来ては流石に離れなければと席に戻った愛華から視線を先生の方へと移す。全員の視線が集まったのを確認してから口を動かし始めた。

必要な連絡を説明しているのだろう、口をパクパクと動かし皆に話しかけるように体の向きを変えながら喋っている。

 


「この時間暇だねぇ」

「そうだね、仕方ないけどすぐ終わるだろうし」

「いちいち事務連絡の載った紙貰いに動くの面倒なんだけどなぁ」

「先生も面倒だと感じながらやってくれてるんだから文句は言えないよ」

「そうだけどぉ……本能が動きたくないって叫んでるよぉ」

「いつからここまでぐーたらになってしまったのか……」


 向きはそのまま、私達はホームルームの最中でも会話を止める事は無い。そしてそれに誰も反応することも無い。クラスメイトの耳に聴こえるのは自然の音を背景にした先生の声のみで、私達の会話が聴こえる事は無い。

 話が終わったのか、気が付いたら先生が教室を出ていこうとしていた。生徒各々が立ち上がり、自分のよく話す友達のいるグループに移動して談笑している。まばらだが、一人で本を読んだり、本当に寝ているのか分からないが寝る姿勢に入っている姿も見受けられる。この教室も、他のクラスの例に漏れず自由なクラスだった。


「今日家に帰る前にコンビニ寄っても良い? お菓子買いたい」

「一日が始まったばかりなのにもう帰りの相談とは……流石愛華」

「えへへ、でしょ?」

「褒めてはいない」


 愛華の思考も可愛らしい程に自由だった。

 

 私達のグループは勿論私と愛華の二人のみ。そもそも私達と付き合っていける人がいるとは思ってもいないし期待もしていない。過去の出来事でそれを思い知ってからは周りに視線を向ける事も無く、私達はお互いのみを捉えて会話をしている。冗談でもなんでもなく、私達の世界は家族を除いていつも私と愛華だけの独占状態だ。

 他の存在も概念も、全ては不純物なので目にも入れない。最初からここまで捻くれた性格だった訳では無いが、過去から今までの成長過程において私達以外の存在を許容させないだけの事をこの世は与えてきているのだから仕方がないと思う。

 一時限目の授業が始まり、昼休憩を挟んでから午後の授業の終わりまで、誰にも介入出来ない私達の秘密の会話が止まる事は無い。

 そんな彼女との密談に興じながらも、私は愛華との出会いと親密になるまでの過去の出来事を慈しむように思いを馳せていた。






 私は昔から耳が聞こえなかった。生まれつきのもので、物心ついた辺りもその異常性と恐怖からずっと泣き続けていたのだとか。

そんな状態から始まった生活にも慣れ始めてきた小学校に入学してすぐの話。私にはある変化が起きていた。


「小学校での生活が心配だが今の所トラブルが起きている訳ではない。心配のしすぎだろうか」


 一切機能していなかった耳が父の言葉を捉えていたのだ。

だが見出した希望も一瞬で、最初は耳が治ったと小さい子供そのままにひたすら嬉しさが募ったものだが、治ったなら聴こえるはずのテレビの音や、自分の部屋へ戻る際に開けた扉の音が一切聴こえなかったのだ。

もしかしたら、さっきの声も自分を心配していてほしいという親からの愛を求めた結果の幻だったのでは無いか、そうネガティブな思考回路に陥ってしまった私はその場にへたり込んでしまう。外の陽ざしが入り込み、熱気をふんだんに感じていてもその空間はひたすらに虚無であった。

 なんで、どうして、と今までの喜びがそのまま哀しみへと変換された状態を母親に見られてしまう。

 そして確かに聞こえたのだ。目の前の母親の口は何を言っているのか分からないが、その動きは私を心配するもの。「どうしたの? 大丈夫?」とかその辺りなのはその表情から把握できた。

 だが、その時に聴こえた声と言葉は全く別の、負の感情そのものだった。


「まだ小さいとはいえ、何も喋らない何も聴こえないときた。正直、我が子ながら不気味ね」


 その時小さいながらに確信したのだ。有り得ない事ではあるが、今現在事実として起きているのだから信じる他にない。というよりも、そうであると信じたかったと思う。

 私には、相手の感じている感情や考えている事がそのまま言葉として聞こえるのだと。



 それから私は実験に実験を重ねた。実の母親に不気味と思われていたのは軽くショックだったが今はそれどころでは無い。もしかしたら私にも、誰かとコミュニケーションを取る可能性を見出す事が出来たのだ。色々と実験をして今後に生かす以外に道は無かった。


 最初に確かめたのは、どうすれば相手の感情が聴こえるのかという事。家にいる間、同じ空間には家事をする母親がいる訳だが、実際に母親の声が聴こえたのは数回程度。近くにいればいつでも聴こえるという訳では無いらしい。

 そして気が付いたのは、共通して母の姿を実際にこの目で捉えていた時のみであるという事だ。この目で見ていれば、その姿は前でも後ろでも関係なく聴こえてくる。ずっと見つめている私に対して怯えた様子の母親からはまるで呪詛のように私への恐怖を連ねた想いが声として聴こえてくるのだが、流石に小さい子供に言うような内容では無く、頭の中でも辛いなと感じた瞬間には先程までうるさく永遠と響いていた声は一切聴こえなくなっていた。

 私自身が実験として母親を使い、声が聴きたいと好奇心のまま耳を傾けていたので分かりにくかったが、どうやらこれは相手を視界に捉えつつ、更に相手の声に私自身が意識を向けなければ聴こえないらしい。何度考えても非現実的な事である。


 次に、声の聴く事の出来る範囲について調べる事にした。自分の家から左に進むと、ずっと遠くに横断歩道があるのだが、そこを通る全く面識のない女性が歩いていたので視界に捉えてみると、なんとすんなりその声が届いてきたのだ。もしかしたら、どれだけ距離が離れていてもその姿さえ見えていれば問題なく聴きとる事が可能なのかもしれない。

 ちなみにその心からの声は「お金使いすぎた……借金も返せない……どうしよう……」だった。あんな大人にはならないように気をつけようと心に誓った。



 更に分かってしまったのは、いくら相手に目を向けていなくとも、その感情の大きさによって声が聴こえてしまうという事だった。

 感情の爆発は私自身の関心を無理矢理に意識を向けさせる程に強く引き寄せられてしまうらしい。その強い感情の向く先が私でなければ何も聴こえないのだが、その対象が私の場合そういう訳にもいかず、聴きたくなくても聴こえてしまうというのだから面倒である。その矛先が私であるという部分が尚質の悪いことこの上ないのだ。


 そして最後に大きな収穫として、相手の声を聴きながら私の言いたいことを相手にぶつけるように念じると、その声がその相手にのみ伝わるという、念願のコミュニケーションの取る方法が見つかった瞬間だった。後から読んだ本で偶然見つけた単語で言う念話、テレパシーとも言うらしい。今まで聴こえてきた声に関してもこの念話と言う部類に入る。

 この結果、今まで耳に聴こえてきていたと思い込んでいた父や母の声に関しても、直接脳に伝達されていただけで耳が治っていた訳では無い事実に悲しみもした。


 この事実が判明した時は、母の『気持ち悪い』や『こっち見ないで』だとか、見てもいないのに聴こえる声に流石に煩わしく感じていた。意味の無い行為だと分かっていても心の感じるままに五月蠅いとぶつけたところ、目の前にいる母親から聴こえていた罵詈雑言がピタッと止み、怯えた表情は変わらぬままこちらを見て震えていた。

 何かがおかしいと思いながらも、口元はぽかんとしながらも「少し黙ってて」と言ったところその震えは酷くなり、罵倒の言葉ばかりだった彼女の声は『助けて』だとか『怖い』だとか言いながらリビングを出て行った。

 この時に、相手だけで無く私の思った事も相手に届ける事が出来るという事に気が付いたのだ。




 次の日には学校を強制的に休まされて、有休を取った父の運転する車に乗り、母を家に残したまま病院へと連れていかれた。昨日の母親の異常な反応と態度を見て話をしたのだろうと簡単に予想はついた。


 簡単に言えば、病院での私の検査結果に耳の問題を除いての異常は存在しなかった。それも当然、病院に着いてから一度も声を聴くことも、念じる事もしなかったのだから。

 その検査結果に満足していないのか、父は色々と渋っている様子だったが、やがて諦めたように私の手を取りここに来た時同様に車に乗り込み病院を後にした。


 それからの家での出来事は地獄だった。家に帰り、結果を待ち望んでいた母へと父が説明をしている姿を横目に自分の部屋へと退散する。部屋に戻ってからは時たま母から聴こえる怯えた声に頭を痛くしていた。何も機能していなはずの耳を思わず塞いでしまうが、その行動に当然意味は存在せず、気の休まる瞬間の無いままその状況がしばらく続いていた。


 それから数週間が経過し、突然母親が家から姿を消した。父がその状況に大した焦りも無く、実際大事になっていないという事は、とりあえず失踪した訳では無いのだろうと一先ず安堵する。なにより母をそんな状況まで追い詰めたのは私だというのに。

 それと同時に、内心では不安を感じ続けていた。やっと他人と話せる手段が見つかったと当時小学生の私は喜んでいたというのに、その方法をとっても相手を怖がらせるだけであり、そんな存在を受け入れてくれる人はそうそうにいないと母親で分かり切ってしまった。

聴こえないはずの声と、自分の考えが読まれているというのだから当然かもしれないが、それでも普通に会話することすら出来ない私にはいわば革命的な発見だったのだ。

 それらを全て拒絶されてしまうというのを母の件で身に染みて理解してしまったために、その現状起きてしまった事実は、そのコミュニケーション手段しか存在しない私にはあまりにも受け入れがたい話だった。



 父親との二人での生活になり、学校から帰っても家に誰もいないのが普通になった事に慣れ始めていた夏の日。隣に引っ越してきたとある少女との邂逅が、私の運命を大きく変える事となる。



 その日は家で学校の課題をしながら、母の件も幾分か頭の中から薄まり、教室でのボッチ生活を何とかしたいと考えを巡らせていた時の事。ドアが開いたと思いきや、父が手でついてきてと招くように手を振ってきた。何かあったのかなと思いつつその後ろについていくと、玄関には見知らぬ人が三人、視線はこちらに集まっていた。

 父親がお辞儀をするのに合わせて、私もそれに倣いお辞儀をする。

改めて目の前にいる三人の家族に視線を向けると、おそらく家族なのだろう、優しそうな男性と女性は私の父親と話をし始めた。恐らくは私の事情でも話しているのだと思う。

 私はその視線を先程から母親にしがみつく形で後ろに隠れている少女へと集中させる。とても可愛らしくしばらく見惚れていると、小さな声で「よろしく」と聞こえたので、彼女に伝えない形で「よろしくね」と返した。こんなに可愛い女の子と知り合えたのだから、いきなり相手に声を念じて伝えても怖がらせるのは悪手だと考えたからだ。

 そんな私の思いとは裏腹に、彼女は酷く驚いたように、口は大きく開いたままこちらを見ている。そして、次の瞬間には有り得ない内容の彼女の声が聴こえてきたのだ。


「もしかして、私の声聴こえているのですか?」


 次は私が驚く番だった。私は心では挨拶をしても彼女に伝えるように念じた訳では無い。

 にもかかわらず、彼女は私の声が聴こえていたかのような反応を返してきたのだ。


「ていうことは、私の声も聴こえてるの!?」

「! 聴こえる!! 聴こえてます!!」


 彼女も私と同じく生まれつき耳が聴こえない状況で生きてきたらしく、つい最近聴こえないはずの声が聴こえるようになり怖い思いをしていたらしい。まさにこの広い世界で同じ境遇の存在とこうして出会えた事は、これから先の人生にも起こり得ない運命の出会いと言って違いなかった。



 友達が出来ずに一人でいる事が多かった私と引っ越して来たばかりの彼女は、まるで元々友達だったかのようにその距離を縮めていた。最初の頃はそんな私達の姿を見て父親と彼女の両親は呆然としていたが、まるで少し肩の荷が下りたというように、その光景はいずれ日常の風景として定着するまでに受け入れられていた。

 そんな彼女も通う先は同じ小学校で、ここにも運命が発揮しているのか同じ教室に転校生として入ってくることになった。

 当然私達は学校でも一緒にいれると喜んだ。もしかしたら愛華の両親が事情を説明して干渉している可能性があったかもしれない。


 転校当初から物珍しい眼で周りから見られていたが、事情が事情で私と同じ存在だと先生からの説明で分かっていたのだろう。彼女たちから無理に関わってくる事は無かった。

 おかげで私達は常に一緒に行動する事が当たり前になっていた。そんな時に、学校内では初めての聴きたくも無い声を聴かされることになる。


『いつも一緒で気持ち悪い……明らかに友達の関係にしては距離が近すぎるし、そんなに二人がいいなら私達のいない外でやってくれないかな』

『二人で学校不登校にでもなってくれないかな。正直関わらないとはいえ、いるだけで息苦しくなる』


 昼休憩の時間、給食を食べ終わってからいつも通り愛華と二人で子供向けの本を読みながら談笑していると聴こえてきた声。その主の方向を見ると、いつも一人で本を読んでいる大人しい女の子だった。意識外から急に聴こえてきたという事は本心なのだろうが、一人でいる所を見るに、私達はお互い特異な存在なのに友達がいるというのに自分にはいないという嫉妬の感情をひしひしと感じる。


「そんなに見たくないなら寝ててよ。そうしたら私達の事を視界に捉える事も無いでしょ」


 普段は何か声を聴いても一切の無視を貫いてきた私だが、今は傍に愛華がいる。彼女は私に心を開いてくれてはいるが、元々は心の弱い不安定な子なので心配なのだ。私と同じという事は、彼女にもさっきの私達を貶すような発言が聴こえていた筈。それを聴いて不安定な心に拍車がかからないかが心配で、ついつい反応して今も読書に集中している彼女に思わず感情をぶつけてしまっていた。


 いきなりの声にびっくりしたのか、顔を勢いよく上げるとそのまま後ろに倒れてしまい、椅子共々転んでしまう。それでも彼女は驚いた顔も隠さずに未だに呆けながら、その視線をゆっくりと私に向けてきた。対して私は思い切り笑って返してやる。笑うとは言っても、端から見れば意地の悪い笑みだったとは思う。

 そんな私を見た瞬間、怯えと羞恥と色々混ざった感情に耐え切れなくなったのか、勢いよく立ち上がり、そのまま教室を走って出て行ってしまった。教室に残ったのは、いつも通りの私と、何が起きているのか分からない様子で呆然としている愛華を含めた数人のクラスメイトだけだった。

 結局走り去った彼女は帰りのホームルームの始まる前に戻ってきた。仮病でも使って保健室で休んでいたのだろう。確かにあの焦り具合を見ては保健室にいる先生も認めざるを得なかったとは思う。

 帰り道、それとなく昼休み中の件を気にしていないか聞いてみたが、その返事は思ってもいない程拍子抜けたものだった。


「あぁ柳さん? どうしたんだろうね。なんか取り乱してたけど」

「え?」


 彼女には、彼女の私達への僻みは聴こえていなかった。あれは私にしか届いていなかったのだ。

 私達は全て同じだと思っていたがどうやら違ったらしい。彼女は聴きたい時に、声の主を見ている時にしかその声は届かないらしい。彼女の性格的に、私のように聴きたくも無い声を無理矢理聴かされると精神的にすぐ折れてしまう可能性が一抹の不安として残っていたので助かった。


「いきなりどうしたの? もしかして、紗香が何かしたわけじゃないよね?」


 何かを疑うような目でこちらを見る愛華に思わず笑ってしまう。この時、私よりも聴こえる声の少ない彼女の事は何としても守っていこうと誓ったのだ。




 それから愛華には全てを話した。母親の事もあるので過去の事を話し、私達に向けた悪感情の籠った声を聴きたくなくても聴こえてしまう時がある事。柳さんがその一人だった事も全て話した。

 その辺りから、その話が原因か元々の性格なのか不明だが、愛華は私と家族以外の存在の人間に関心を向ける事が無くなってしまった。と言うよりも、より私に考えが似てきたというのが正確だ。私の過去話と教室内での柳さんの件に加えて、普段のクラスメイトの反応を情報として共有してしまったため、周囲の人間への考え方が似てしまったのだ。

 そんな私にも変化が起きない訳もなく、ただでさえ周囲への関心が薄かった私が愛華以外の存在に目を向ける事は当然減り、友達を作りたいという希望を持っていた過去の私はどこへ行ったのか、愛華という存在一人を私の全てのように感じるようになったのは早かったと思う。



 そして小学校でも最高学年の六年生になり、もう数ヶ月でこの小学校も卒業と言うタイミングで愛華から告白された。


「紗香さん、私と付き合ってくれませんか」


 学校の無い休日。外では綺麗な雪の結晶が降り積もり、そんな背景を窓越しに二人で眺めながらだらだらしていた時の事だった。

 剛速球なまでの出来事に反応するのがかなり遅れてしまったが、それがおふざけでも嘘でもなんでもない、本気の告白であることは彼女の真剣な表情と、私の名前をいつもとは違う慣れない雰囲気で呼んでいる事から見て分かった。


「私も、付き合うなら愛華がいい」


 そういうと彼女は真剣だった表情から一転、喜々としてその喜びを隠す事も無く両腕を広げて隣にいる私の体にダイブしてくる。大げさともいえる反応に少々の苦笑いを漏らしつつ、その本心は愛華の感じている喜びと同等の感情を隠せてはいなかった。

 色恋沙汰にしてもこうなるのは必然だったのかもしれない。同性異性関係なしに、深い繋がりを持っていた私達は、その関係を更に深める赤い糸で結ばれることになった。






 そんな親友兼恋人と言う小学生にしてはかなり進んでいるともいえる関係を満喫していた私に、考え方を改めて考え直される事件が起きた。

 

 恋人となった日から僅か二週間後、私は「話があります」という内容の手紙を下駄箱で貰ってしまった。中身は場所や時間の指定のみが書かれており、愛華との時間が割かれるのは不本意なのだが、後から面倒事に発展する可能性も拭いきれず、愛華に迷惑をかける可能性を考えたら無視する事も出来なかった。


 放課後、すぐに戻ると愛華に伝えて教室を出る。心配してくれているのか、付いて行くとも言われたが手紙には要件も書かれていなかったので、何が起きるか分からないために流石に連れていくには憚られた。



 指定場所の体育館裏に着くと、一人の男子生徒が一人佇んでいる。名前は分からないが、確か同じクラスの人間だったと思う。周囲には細かな雑草が生い茂っているばかりで、その自然の中に私と彼の二人が存在するだけのこの空間はなんとも心寂しく感じる。

 彼が私の姿を認識すると、その手に持った手紙とペンを一本私に渡してきた。恐らく返事をこのペンで書いて伝えてほしいという事なのだろう。

 手紙を開いて読み進めると、ずっと好きだったが耳が聞こえない私相手にどう話しかければいいかが分からなかったという事。一目惚れで、ここが好きと言うには外見を褒める他にないが、普段の愛華と接している時の表情などを見て性格も優しいと信じているという事。これからはなんとか手段を考えつつコミュニケーションを取れるように努力して助けていくので、自分と付き合ってほしいという事。

 まさかのラブレターにどう反応してあげるのが正解か分からず思わず固まってしまう。

愛華にしか既に関心を向ける事が出来ないでいた私だが、ここにきて初めて愛華以外からの純粋な好意を向けられてしまい、流石に興味が無い相手だとしても慣れない感情に動揺してしまう。

私には既に世界で一番の彼女がいるし、断る他に選択肢は無いのだが、ただごめんなさいと突き放すには寂しい気もした。

 もし彼が私達の事を理解できる人で、せめて友達になってくれるような人間なら、私達の交友関係も広がって今まで以上に楽しい日常が送れるかもしれない。そんな余計な事を考えてしまっていた。

 だから私は、渡されたペンも使う事なく彼に念じる形で思いを届けた。届けてしまっていたというのが正確かもしれない。


「ごめんなさい、私には好きな人がいるので付き合う事は出来ません。振った相手にこんな事を言うのはあまり良くないかもしれないけど、もし良かったら私と友達になってくれませんか?」


 彼だって、一目惚れだったとか言うくせに今まで話しかけてこなかったし、わたしが優しい性格をしている事を信じているなんて身勝手な信頼を置いてくるくらいの失礼具合なのだ。私だって、これくらい失礼な事を言ってもいい権利はあるはずだと思いながら彼を見ると、私の声を初めて聴いた彼は、今まで私の声を聴いてきた人たちの例に漏れず呆然としていた。

 その声が私の口が動いていないのに聴こえてくる声に加えて、それが耳に届くと言うよりも脳に直接届いている事に気が付くとその表情は一気に色を変えいく。

 さっきまで好きだとか一目惚れだとか思っていた相手に対して向けるような視線では無く、まるで化け物を見る目でひたすらに怯えながら、私とは反対の方向に逃げるように走り出していた。


『なんなんだよこいつ! 人が下に出てればいい気になりやがって!』

『そもそも気持ち悪い、あの里垣愛華とかいう女もだけど、こいつは特に気持ち悪い』

『やっぱりこいつは化け物だったんだ! 口も開けずにあんなはっきりと声が届くなんて普通じゃねぇ!』

『お前みたいなやつを好きになるやつがこの世にいる訳が無い! 顔が良いから告白してやったのに、振るなんて信じらんねぇ。気味が悪い』


 酷い言われようにその場にしゃがみ込み思わず耳を塞いでしまう。そんな行為は関係ないと、その負の感情が私の脳に届く声が遮断されることは無い。大抵の事なら流せたが、ここまで私の存在を否定されて、彼には関係のない私のこれからの人生にまで口を出されてしまい流し切る事が出来なかった。

 やはり無理だったのだと思い知らされる。彼のように一度好きだと言われても、自分をそのまま見せれば化け物だと非難される。友達を作るなんて希望持つだけ無駄だったのだと再度理解させられた。せめて念話では無くペンで返事をしていればここまでの惨状になる事は無かったとは思うが、あの心の叫びを考えると私が断った時点で友好的な相手になる事も叶わなかっただろう。


 目から涙が出そうになり、無意識に最愛の存在へと助けを求めようとする。そして、本能が救いを求める前に、震えて泣きそうになりながら膝をついている私を抱きしめるように後ろから抱きしめてくれる愛華がそこにいた。


「……うぇ…? なんで、愛華が……?」

「ごめんね紗香。言う通り教室で待ってようと思ってたけど怖くって、そこの体育館の角の方でばれない様に二人を見ていたの。そうしたらさっきの声が私にも聴こえて我慢できなくて」

「そん……な……」


 なら、さっきの罵詈雑言の嵐を全て愛華にも聞かれていたことになる。中には私含めて愛華の事も気持ち悪いと示唆する発言があった。あんなのを聴いたら絶対に傷付くと思っていたのに、目の前にいる彼女からは泣き出す素振りも気配も感じない。


「気持ち悪いとか気味悪いとか、実際思われてるんだろうなって分かってた。でもやっぱり、直接聞かされて思い知らされちゃった。普通じゃないんだって」

「直接声を届ける事が出来るなんていって、それが普通じゃないって事も分かってる。普通は出来ない事も理解してた。でもいちいちあんな怯えられて怖がられて、そんな姿を見せられても私にはどうするのが正解なのか分からない……」

「普通じゃないって言うけど、じゃあ普通って何なの! こんな考えてることが透けて聴こえたり聴かせたり、そんな事が出来るのが一般的に異常だってのは分かってる。でも、私も愛華も生まれた時から耳が聴こえなくて、その上で出来る事があったから活用して、それが私達の普通なのにそれを普通じゃないって言われて。そんな拒絶の言葉で私の今まで頑張ってきた事が全部否定された気がして……なら私達はどうやって生きていけばいいの……分からなくなっちゃった」


 心のどこかで思っていた事。私には愛華がいて愛華には私がいる。それだけでも楽しいけど、私達の特異性を理解してくれる人が一人くらいいるかもしれない。そんな人と接点でも持てたなら、そこから人間関係も繋がりが広がるかもしれない。無意識にそれを考えないように押し込めながら、私達にはお互いの存在さえいればいいと期待を持たずに生きていた。

 今回私に好意があると告白してくれた彼を見て、その期待が希望に変わったのだ。その希望にしがみついて、私の心に抑え込んでいた理想が顔を出してしまった結果。現実の残酷さを思い知ってしまった。

 背中を擦りながら、愛華は私の言う事を全て真剣に聞いてくれていた。守ろうと考えていた相手にこうやって癒しを求めてしまっている私が実に滑稽に見えてしまう。私は強くあろうとしていただけで、その実愛華よりも断然弱く脆かった。悔しさで心がいっぱいになってしまう。


「私はね、紗香が色々言われるのが一番辛くて悲しいの。自分が馬鹿にされるよりも、紗香が色々言われるのが何よりも辛い」

「私だって、愛華が何か言われたら私が色々言われるよりも悲しいよ! それに愛華はか弱いから、私が守らなきゃって思って、頑張ろうって思ってたのに……こんな事で私は……」


 抱きしめる腕の力が強まり、結果より一層密着する。それだけで満たされて、辛いと感じていた出来事も塗り替えられていくように癒されていくのが身に染みて分かる。


「いつもありがとうね。紗香のおかげで私は助かってばかりだけど、その度に私だって強くなってるんだよ? だから、私を紗香が守ってくれてるように私が紗香を守るから。だから無理しないで、ね?」

「でも……」

「でも、じゃないの! 紗香は黙って私に身を任せればいいの! その分、私の事は紗香に守ってもらうから!」


 その言葉にハッとする。私みたいなただの弱い人間が自分の事も愛華の事も守って生きるなんて大層な事を考えている中で、彼女はより大人の思考をもって私にそれを説いている。

 私達の想いは一緒だと言っておきながら、私が愛華を守りたいと決心している裏で愛華も私を守ろうと考えている事にすら気が付けていなかった。

 私はまだ、未熟なままに不安の種を蒔いていただけの子供だと気付かされた。


「……うん、ごめんね愛華。心配させちゃった」

「大丈夫! これでちゃんと紗香が分かってくれたなら、もう大丈夫」


 ポンポンと背中を優しく叩かれて、目の前にいる愛華の存在に安心する。しばらくの間、私達はお互いを抱きしめながらその体温を身に感じていた。やはり私には愛華しかいない。私を肯定してくれるのも、支えてくれるのも彼女ただ一人だと今回の件ではっきりと身に染みた。



 こうして私達の考え方は固定化されていった。

私達の事を理解してくれる存在は家族やお互いを除いて誰もいない。いくら最初はフレンドリーでも後から裏切られる。なら最初からその関係を拒絶するのが一番だという考えが私達の心得となり、その考えを念頭に置いて残りの学校生活を愛華と過ごして卒業した。






 そしてその信条を心得とした生き方は今でも変わっていない。通っている中学の校舎は既に遠く、用事を済ませ私達の家に向かいながらその時の話を思い出すように話していた。


「あったねぇそんな事」

「そんな昔の事でもないけどね、まだ二年も経ってないくらいだよ」

「一年超えたら昔だよ! それに、紗香はそんなもう名前も覚えてない女とか男とか忘れて私の事だけ考えてればいいの!」

「出た、独占欲権化の愛華」

「嫌い?」

「大好き」


 それに満足した愛華が私の手を取り恋人繋ぎに指を絡めてくる。感情が高ぶると私への接触に時と場も考えずに抑える事が出来なくなるのだとか。

 そんな可愛らしい恋人を横目に眺めながら、これからの未来について想像を膨らませる。

 今はまだ二人のまま、生きていく分には家族の力も借りてなんとかなっている。学校生活も事情の知っている教師陣と、なにより愛華のおかげで嫌な思いも全て吹き飛ぶほどには楽しめているつもりだ。

 だからこそ、現状に満足したまま大人になり、何の特技も無いまま生きていくのは将来的にまずいというのを段々と頭で考えるようになってきていた。

 明確な未来予想図を今のうちに考えておくのは困難で、なにより知識も実力も無いのだから仕方ないが、それを仕方がないと言えなくなる時が必ずやってくる。

 それでも、隣に愛華が横にいてくれるだけで何でも頑張れるという確信があった。私は愛華を頼り守って、愛華は私を頼って守る。これは私達が死ぬまで守り切ると約束した生き様で、この約束を破る事は永遠に訪れない。お互いをこれだけ想いながら生きていく未来が悪いものになるとは微塵も思えなかった。


「愛華」

「なーに? もしかして、何か買い忘れた? コンビニ戻ろっか?」

「違う……頭の中食べ物しかないのか……」

「ちゃんとお菓子だけじゃなくて紗香も入ってるよ! 失礼な!」

「そうじゃなくて! もう……」


 すぐにふざけるし勉強は出来ないし、そのくせ食べ物の事になると人一倍目を輝かせる彼女。その憎みきれない態度を取る彼女に、呆れながらも可愛いと最初に感じてしまう時点で私はもう彼女にべた惚れなのだ。絶対に離してやるものかと、彼女の手を握る力を強める。


「……ありがとう、私と友達になってくれて」

「紗香……こちらこそ! 私と恋人になってくれてありがとう!」


 初めて出会って友達になり、そこから五年以上の歳月を経て恋人になった私達。出会うまではお互いに恐怖も絶望もいっぱい感じて、私は母親を失いながらも愛華と出会い、お互いを支え合ってきた。あれからもう六年以上が経っているが、私達のラブラブ具合はより一層増して、これからもお互いに向ける愛の形は大きく膨れ上がり続けるのだろう。私も彼女も、もう死ぬまでお互いを離さず、永遠と私達二人の世界で生き続けるのだ。

 私達は常に一緒。それは、いつか命尽きるその瞬間も例外では無い。

 愛華は一度立ち止まり、私の前に出たと思えば、顔を前のめりにしてその唇が近づけられる。私もそれを受け入れるように目を閉じて、外である事も忘れて吸い寄せられるようにお互いの唇が重なり合った。

 周りの何も感じない、今あるのは唇の感触だけ。こうしている瞬間、私達の想いだけでなく身も心も重なる。それを実感した時、私達の未来がどんな状況になったとしても二人で乗り越えられると、そう確信できた。






 そしてこの後調子に乗って胸に触れてきた愛華への罰として一週間のキス禁止令を命じたものの、そんな状況にお互いが耐えられるわけも無く禁止令を破り私からキスをねだってしまったのは余談である。

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耳の聞こえない私が出会った運命の相手は同じ境遇を生きる一人の女の子でした ゆいとき @YUITOKI

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