第2話 嘆き
ドッカーンッ!!
バキュンッ!!
「今更気づいたけどさ……」
激しい戦場の方に近づいて来たはいいが、偶然そこに在った岩に隠れてびくびく震える俺。
「言葉とか通じんのかなぁ……」
ここは異世界。言語が同じとは考えにくい。
それにもし通じたとしても、怪しいやつは容赦なく撃ちそうだし……。
――不安に不安が重なっていく。
「どうしよう漏らしそう……」
緊張から唐突に現れた尿意。いやでも……
「漏らす心配よりもまず食料の確保だ。漏らしても死なないが、食料がなければすぐに死ぬ!」
今のところそこまで腹は減っていないが、後回しにして餓死したらどうしようもない。
「よし……行くしかない! 大作戦再び開始じゃい!」
そろりそろり……。
――ドッカーンッッ!
――バキュンッ!!
――パンッ! パンッ!
――ジジジジジドッカーンッ!!!
「…………やっぱむりぃぃぃぃぃ……!!!!」
……声かけただけで殺されるって。はぁ……平和な国に生まれたかったわぁ。ひどいって……ここ物騒なものしかねえし。
――バンッ!
――バンッ!
――ドッカーーンッ!
「もういやだぁぁぁ――っ!!」
俺は頭を抱えて叫ぶ。爆撃が鳴り響き、戦場で戦う人たちには聞こえないだろうが、大きめな声で。
運が悪かったぁ! 記憶もないし……うん、たぶん俺は男で、日本人で……でも名前も家族も大切な人も誰一人憶えていないし‼
……死んで俺は転生した…………俺は新しい自分になった……でも……! それで俺に何ができるって言うんだよっ……!!!
俺は自分で惨めだとわかっていながら、嘆いた。その嘆きがだれにも届くことがないだろうと知りながら。
――と、俺が瞳を涙で濡らしかけた、その時だった。
ピピピッ……――
「 全 軍 に 告 ぐ!!!」
――砲撃や銃撃が質素に見えるほどの、大きな声が響いたのは。
機会を通した声ではない。誰かの、透き通るような、それでいて厚みのある、まさに軍を統率するのにふさわしいであろう人物の肉声が響いた。
「 今 こ の 瞬 間 ッ! 私は勝ちを確信したッ!! なぜなら我が軍に魔法の使える少女が加勢してくれると通達があったからだッ!!」
「「「「うぉぉ――っ!!!」」」」
――低いその声で、全軍に向かって告げられた言葉。その言葉によって、一方の軍から歓声が沸き起こった。
……………え?
「普通に日本語じゃん。ていうかまるっきり他人任せじゃねえかよ。魔法の使える少女? 少女に戦場を歩かせる気かよこの野郎」
――俺は涙を拭き――
――惨めに嘆いた自分を後悔し――
――そして――
――声のする方向へ突っ走った。
「ちょっと俺の嘆き返してくれませんかねぇっ!」
多分普通に日本語通じるぞ。よぉしちょっと目的違うけど、悔しいからあっちの軍の奴を殴りに行きます。
あ、でもせっかく戦争なんで、潜入して後で裏切ろう。何の恩もないけどこっちの軍に恨みあるから勝手に肩入れしまーす。その代わり食糧分けてくださいねー。前世の知識自体はあるみたいだし、きっと役に立つでしょう。
じゃあそろりそろり作戦は破棄して。
「待ってろよクソ爺そしてあわよくば魔法の使える少女とお近づきになろう大作戦早速遂行!」
悔哀凛戦 星色輝吏っ💤 @yuumupt
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