【実話】ほんとにありました、心霊話
久瀬ゆこ
住み続ける”貴方”
ガチャッ! バタン!
真昼間からロッカーの開け閉めの音がこの会議室に静かに鳴り響いた。
「(はぁ、またか)」
私が受付アルバイトをしているここの市民プールには、”お化けさん”が住んでいる。
といっても、この部屋__会議室によく現れる。
会議室は中に入ると、ど真ん中に、奥に長いロッカーが位置しており、それを挟むように、左に受付の休憩場所、右に社員さんが休憩する場所がある。ロッカーの音は右側から聞こえるから、実際にロッカーが開いたり閉まったりするところは見たことがない。
プール内で仕事をしている監視員によると、誰もいない女子更衣室から声が聞こえたという証言もあったけど、会議室のほうが被害が多い。
今みたいにロッカーの開け閉めの音が鳴ったり、勝手に暖房がついたり、消していない電気が消されたりしていた。私はこの3つすべてを体験しているけれど、他の人はロッカーの開け閉めの音以外は経験がないみたいだ。
ここのプールで事故が遭ったわけではないから、この近くで事故が遭ったのかなって考えてる。それか、このプールが本当に好きで成仏できないとか、このプールに何か隠されてるか。水のあるところに集まるって聞くしなぁ。
まぁ、そんなこと考えたってお化けさんの気持ちはわからない。
とにかく、ロッカーの開け閉めの音はうるさいし気が散るからやめてほしい。でも、音を止める方法が一つあるらしいから試してみた。
「うるさいよー」
うるさい、と言えば止まると聞いた。実証済みみたいだからやってみたら、本当に音が止まった。
「おー」
しかし、一人で感動しながらバイト服に着替えている時、やばいことが起きた。
急に、左耳から8割、左耳から2割、足音が聞こえた。
スッ__スッ__
さらさらの地面を歩くような音が耳に入ってきた。
幻聴だと思って頭をふっても音は途切れない。その音は右側のロッカーから聞こえて、だんだんこちら側にやってきていた。
「……っ」怖くてフリーズした。
近くにいる気がして、視線をかなり足音がした左に向けた。
すると、なんとなく、誰かと目が合っている気がした。
怖いからただの勘違いかもしれない。でも、そこにいる気がした。
5秒後、私はすぐ視線を戻して下を向いた。
足音はまだ聞こえる。でも、私の真後ろを通りすぎると、足音が消えた。
「……はぁ」
こわっ。
この後は、何事もなかったかのように事は過ぎた。
むしろ私はこの怖い体験を忘れていて、次の日の夕飯時に思い出した。
カレーをほおばりながらお母さんにその話をしたら、こんなことを言われた。
「どんまい」
【実話】ほんとにありました、心霊話 久瀬ゆこ @hisase
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