真逆の二人が恋に落ちると 2022

美乃坂本家

第1話 真逆な二人

「それでは、1月期のクラス委員長は、根と中木で、やることで、いいか?」50代過ぎた担任の杉谷が、クラスの全員に呼びかけた。


クラスのひとかたまりは、笑っていた。そう、じつは、根達夫をクラス委員長にしてから、困らせようと、企んだ張本人たちだ。よくいるイジメっ子である。


一方の中木ミオは、頭がクラス一番の成績優秀な生徒。また、真面目を信条として、生きる生徒。


「断っちゃいなよ」


隣の仲良しである、秦野乃花は、心配そうに、根に言った。

「ノノ、心配いらない」根は、そう、野々花に、告げた。


「よろしくお願いします」とミオは、根に挨拶した。


根は、黙って席をたった。


「なに、アイツ」ミオは、不満そうに言った。



試験が終わった日、「根」は杉原先生から、呼び止められた。

「じつは、テストの点数を、計算する時間がない。電卓が早い生徒を、集めてきてくれないか」


根は、わかりましたといって、クラスへ向かった。


「だれか、電卓の早いヤツ、いないか」根は、その場にいる生徒たちに、呼びかけた。


しかし、誰も、返事しない。いや、無視してる。


根は、やっぱりなと、一人悪態をついた。



アタシ、行くよと、野々花が、助け舟を出した。


「頼む」根は、野々花の存在に、安堵した。


「あたしも」ミオも名乗り上げた。しかし、根は、断った。


「俺と野々花で十分だ」そう言って、根は、その場から、離れた。


「あたし、嫌われているのかな?」ミオはそう、つぶやいた。



▲▲▲▲▲



放課後、「野々花、彼ってどんな性格してるの?」ミオは、野々花に相談した。

「なに、惚れたの、根に」野々花が、冷やかした。


「彼、変わってるね」そして、

「あたし、あんな男みたら、イライラするの」とミオ


「そうなの」と野々花は、ミオを見て言った


「ミオがイライラするのは、なんでだろう」と野々花が、ミオに尋ねた。


「それは」と言いかけたミオ。わからないから、聞いているのに。


「なになに」興味津々といった野々花。そして、ミオは


「アタシに冷たいから」全部言えて、少しスッキリしたミオ


「そうなんだ、ミオは彼が私に冷たいと、思っているのね」野々花が反芻した。


「ミオ」野々花が、問いかける。

「今夜、カラオケ行こーか」と野々花


「あたし、そういうところ、苦手かな」ミオは、そう言って、立ち去ろうとした。


「俺も混ぜてくれ」なんと、根が目の前にいた。


ミオは、顔が赤くなるのを感じた。それに、ほたっている。


「野々花、いいだろ。」と根は、言った。


「でしゃばるんじゃないわよ、この変態」野々花は、仲良いだけに、ズバズバ物を言う。


「だって、俺と仲良くなりたいんだろう、中木は」


「そんなんじゃないわ」まわりに、ひびく声で、ミオは否定した。


「怒った顔も、かわいいねえ」と余裕の根。


「根、ミオを困らせてどうするの。そういうところ、昔から変わらないね」と野々歌。


△△△△△


カラオケの帰り道、「ムーンライトANGEL'S」という看板が、あった。


歌が流れていた、あの歌の名前は、確か、上白石萌音の、「白い泥」だと、根は思った。


そう言えば、こいつも、真面目なところは、萌音そっくりだと、思って笑った。


「なに、1人笑いしてんのよ、気持ち悪い」とミオが、怒った。


「おまえ、本当に、シャイだな」ますます図に乗る根。


まわりには、浴衣を着た女性たちが、集まってきた。何かあるのかなと根は、思った。


あっそうか、今日は、花火大会が、あるんだったなと根は、思い出した。そして、


「野々花、疲れているだろ、ここで、帰れ」と野々花に、ささやいた。


そう言われた野々花は、察して


「手を出したら、明日死刑」と忠告した。


「ミオ、わたし、帰りは、こっちだから」と言って、去っていった。


ミオは、ドキドキしてきた。何を話せばいいの。


二人、川辺を、散策した。たまに、魚が跳ねていた。ポチャ、ポチャ。


根も、緊張していた。よくしらないから、居心地が悪い。


△△△△△


バンバン。衝撃波が、ふたりの身体を、突き抜けた。

「打上花火」が、空を駆け抜けた。


「わっ」とおどろいたミオは、根に抱きついた。


「おばけじゃないから、驚くな」根は、落ち着いていた。


「あったかい…」ミオは、根にもたれかかり、そう思った。


「走るか、俺の手を、離すんじゃないぞ」根は、月明かりに照らされた土手を、


ミオとともに、下り坂を、駆け抜けて、わざと転んだ。二人は、抱き合ったまま、


転げ落ち、そして、止まった。


「泥だらけ」ミオは、そう言った。


「俺もだ」と根。

ふたりは、ゲラゲラと、笑った。理由なんて、何もないのに。


「なぜだろうな?」と根

「えっ」とミオ


「性格は、お互い真逆なのに、俺は、今お前に惹かれてる」

「それは、わからないけど、私は、はじめから、あなたを見つめてる」


ドンドンドゥルルル、連続花火が、空を舞った。それは、二人を祝福しているかのようだった。


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