エピローグ2

 最近、リーゼンブルク王国からセルドリア皇国に向かって、しっかりと舗装のされた専用路が出来上がった。

 そこを走るのは特急馬車と呼ばれる赤い馬車である。

 その馬車はとても頑丈に出来ていて、その馬車を引いて走る馬も、軍馬として育てられたものの、戦では使えないと判断された馬であった。

 馬車を盗賊達やならず者が襲おうにも、その速さは尋常ではなく、馭者もとある武家に仕えていた者達なので、一人でもめちゃくちゃ強かった。


 安心、安全、高速。と、三拍子揃った特急馬車は、賛否両論となったものの。

 外を見るから怖くなるのだという結論により、


 怖けりゃ、外を見なけりゃいい。


 と、今も継続されている。


 何より、皇国側の女性達がそれを許さなかった。

 特急馬車が運ぶのは人だけではなかったからだ。


 王国からカシュー侯爵家に運ばれるが途絶えてしまえば、効果が消えてしまう知れないと、夫や息子達に継続を求めたのだ。

 鬼気迫る妻や母親達の様子に、彼らは頷くしかなかった。

 だって、その後ろには、娘や妹達も構えていたのだ。


 美を追求する女達を敵に回してはいけない。


 皇国の男達は、その言葉を深く胸に刻み込むこととなる。


 ※※※※※※※※※


「アディ。最近はあまりようだね」


 二人きりのお茶会で、カイエンは楽しげにそう問いかけた。


「まあ、カイ様。私だって休みたい事はございますのよ?」


 優雅な所作で紅茶を口にしながら、アディエルはチラリと視線を向ける。


「そうだねぇ。今回は少し忙しかったかな?」


「あまり表沙汰に出来ないことが多かったので、仕方ありませんわ…」


「…リネット嬢は、かなりご機嫌だったみたいだけどね」


 恐らく今回一番得をしたであろうリネットは、現在はエイデンと共に皇国へ行っている。

 エイデンはシルフィアの婚約関係の話をしに、リネットはヒルシェールに新しく仕入れた東国の薬草の栽培方法の確立を頼むためであった。


「皇国との関係が良好となりましたが、我が国との間の二国に対しても、何らかの手を打たねばなりませんわね……」


 王国側はそう問題ないが、皇国側の国には対応が必要だろうなと、カイエンも考えていた。


「そうだね。近々、あちらから第二王子と第三王女が来るそうだよ?」


「まあ。それは忙しくなりそうですわね、♪」


 にっこりと微笑み合う二人。

 その姿を遠くから目にした貴族達は、二人の仲睦まじさにこれからも王家は安泰だと喜んでいた。

 しかし、周りの使用人達は、心の中で。二人の目が笑っていなかったからだ。


 絶対に何かをしに来るんだ!?


 近々やってくるであろう他国の王族に、頼むから余計なことはしないでくれ!と、二人を見てきた使用人達は心の中で祈るのであったーーーー。



〖完〗


 ※※※※※※※※※※

 これにて続編も完結です!

 お読みいただきありがとうございます。

 明日は番外編置き場にて、番外編も公開致しますので、興味のある方はお読みください。


 最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。

 その内、また続続編を書くかもしれませんけどw

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【完結】侯爵令嬢は今日もにこやかに断罪する ミアキス @miakis81

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