エピローグ1
「あの…お陰様で子が出来ました……」
本日、恒例のお茶会にはシルフィアとロゼッタが参加していた。
マキシオの一件から二人は社交界に仲睦まじく寄り添う姿を再び見せるようになり、無事に両者が正しい知識を得たせいか、妊娠もしたようである。
「あら。それはおめでとうございます」
真っ赤になって、恥じらいながら報告してきたロゼッタに、扇で口元を隠しながら、アディエルがふんわりと微笑む。
「……ふむふむ。やはり、東国の医術はこちらよりも詳しいようですわね…」
眉唾物の妊娠法よりも、東国で試されることが多いという妊娠時期の計測方法を調べてロゼッタに伝えていたリネットは、真っ赤になったロゼッタから話を聞いては控えている。
「……………」
取り残されているのはシルフィアだけである。
しかし、その事を彼女が気にしてる様子は無い。寧ろ、心ここにあらずであった。
「わたくしの事よりも、シルフィア様ですわ!シルフィア様。この度はクリューセル皇太子殿下とのご婚約おめでとうございます!!」
「ふぇっ!?え?えぇ、ありがとう、ロゼッタ…」
両手を顔の前で合わせて、本当に嬉しそうに言うロゼッタに、真っ赤になったシルフィアが礼を述べる。
そう。シルフィアとクリューセルが婚約したのである。
きっかけはクリューセルが例の特急馬車でリーゼンブルクを訪れたことだった。
馬車から下りるなり、真っ青な顔で倒れかけたクリューセルを、出迎えたシルフィアが慌てて支えた。
幸い、近くにいたエイデンの護衛がさらに支えたので、二人して倒れ込むことはなかったが、どうやらその時に互いに意識するようになったらしい。
クリューセルは婚約を打診するなり、皇国に連絡。あっという間に婚約を成立させた。
「皇国の皇妃となるために、早めにあちらに向かわれるのですよね?おめでたい事ですが、寂しくなりますわ…」
「でもロゼッタ達の子が産まれるまではこちらにいてよ?貴女達の子供を見てから、あちらに行きたいわ♪」
手を取り合い微笑む二人の姿に、周りの使用人達も温かい目で見守っている。
「皇国と言えば、あちらの皇弟殿下も何やら様変わりなさって、侯爵家の方とご婚約なされたとか?」
シルフィアはそう言って、チラリとアディエルに視線を向ける。
………絶対に何か関わっていると思うのですけれど…。
世の中には開けてはならない
シルフィアは気にしないことにした。
自分の幸せ、大事!
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