第六章 彼女の事情
11(※1)月14日(金)
本当は翌日に書いているのだけど、14日の気分で書きます。
今日俺は(僕というのはやめた※2)本山さんと放課後話しをした。
三限目のあいの時間に「今日いっしょに帰ろう※3」といったら、何かいけないことがあったみたいなので放課後にした。放課後、二人だけになった(はじめ教室に山下(※4)がいたが遠慮してもらった)そして聞いたら、お父さんやお母さんに言われたらしい。それにもう受験だし、テスト続きで卒業になってしまう。この時俺はもういっしょに帰らないと思うから、学校であんた(※4-2)からも話し(かけ)てとか言っていた。いろいろ話して楽しかったのは事実だったが、これでいいのだろうか。あの人に迷惑をかけていないか。それに親にかくれているみたいでいやだ。俺は別に親とかに知られても何も気にしない。けっこう理解していると思う。だけど向うの人はそういうことについてはだいぶうるさいそうだ。だから俺が不良学生みたいになっているかもしれない。自分はそんなふうに思ってないし、そんなこともしない。けど人にかくれてつき合ったりするのは何かいやだ。
あの人は市立は●●館を受けて公立は通ったら三郡(※5)だと言ったが、それはてれくさいからで、●●館だったら絶対通ると思う。俺は三郡一本やりだからいっしょの学校へ行けたらいいと思う。だから今はがんばらなければならない時期でやはりつきあいはやめるべきかもしれない。(※6)けどそんなことになれば余計に気になると思う。
一つだけ言えるのは俺は俺自身、あの人はあの人自身がんばらなければならないと思う。それに俺はあの人の学力なんかはあまり知らない。俺はひそかに約束しようと思う。今、クラスでトップを走っているのは園田(仮名)という女の子だ。その子を抜いてみせる。卒業までは絶対に。 さようなら日記さん。
※※※※※※※※※※※※※※※
※1
1月と間違えたみたい。先日と同じ。
※2:今日俺は(僕というのはやめた)
かわいい・・・。
※3限目のあいの時間に「今日いっしょに帰ろう※3」
好きだって、確かめたのに。
一緒に帰ることさえ、できませんでした。
※4:(はじめ教室に山下(※4)がいたが遠慮してもらった)
山下は良い奴。
顔のほくろがデカくて、本人は気にしていたけど。
唄がうまくて、一緒に音楽の発表会で僕のギターの伴奏で歌いました。
本当に良い奴でした。
学校であんた(※4-2)からも話し(かけ)てとか言っていた。
→あんたは方言。中学生の言葉にしては浮いてます。
※5:あの人は市立は●●館を受けて公立は通ったら三郡(※5)
進学系の公立高校。このころは2高同時の受験でした。
※6:だから今はがんばらなければならない時期でやはりつきあいはやめるべきかもしれない。けどそんなことになれば余計に気になると思う。
彼女の言い訳だったのか、今でも分かりません。大人の今の私ならいざ知らず、その頃の僕は素直に信じてました。年をとるのが嫌に思う瞬間です。
兎に角、一緒に帰りたかったなぁ・・・。
※※※※※※※※※※※※※※※
三学期のある日。
僕は思い切って、彼女に話しかけました。
それまで声をかけることすらできなくて。
それで、毎日の切なさに日記を書き始めたのです。
二度目の告白は理科室脇の階段ではありませんでした。
人影もまばらな放課後の教室。
当然、好奇心で何人かは眺めていて。
山下には帰ってもらいましたが。
この時を逃すと一生、後悔すると思った僕は必死でした。
僕の想いに再び、コクリと頷いてくれた歓びは最初よりも強く記憶に残っています。
それでもお父さんに叱られたという事実は変わりません。
彼女の辛そうな表情に僕はそれ以上のことは言えませんでした。
かろうじて話しかける権利だけ回復できたことに満足して、僕達は別々に帰りました。
楽しみにしていた映画も男友達とみることになりましたが、映画自体は素敵で、レコードも買ったくらいですから。
結局、高校が別々になった二人はフェイドアウトするように別れました。
恋人らしい期間も無いので、別れたという表現は正しくないかもしれませんが。
ここで一旦、エッセイは終了させていただきます。
これ以上は皆様には退屈と思われるので。
それでも、続きが気になる僕は日記を書き写そうと思っていますが。
15歳の僕が、どんな風に失恋を味わっていったのかを改めて知るために。
皆さんはいかがでしょうか。
平凡な田舎の少年の「失恋物語」が続けられるかは自信がありませんが。
機会があれば投稿したいと思います。
その時。
一緒に笑っていただければ、幸いです。
ではでは。
お休みなさい。
うれしはずかし日記帳 進藤 進 @0035toto
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