第9話俺と彼女は友達になっていた
俺なりに要約すると千五百年前の
大帝。炎帝。水帝。雷帝。地帝。剣帝。武帝。白帝。黒帝。人間以外を除いた100を超える多種族たちにより選出される事実上の世界最高戦力。
現在ルコアはその内の1人雷帝であるらしく、魔王時代に敵として相対した時の彼女は間違いなく5本の指に入る強さだった(アリスは言うまでもなく除外)
この時代のルコアも似たり寄ったりの強さだと考えると、他に8人も大英雄クラスが存在することになる。魔王がいた時代と比較しても一つの時代にとんでもない戦力が集結していることになる。
「父さん このパンッ!には何を塗れば良い?多すぎて選べんぞ」
「僕のおすすめのスプレッドは、そうですね。
ハニーショコラかピーナッツバターでしょうか。
ハニーショコラは天然の蜂蜜の味と薫り高いチョコレートの匂いが合わさって、とても甘美な味わいです。
ピーナッツバターは、乾燥させたピーナッツをペーストにしたものですが、食感を楽しめるようにチャンクタイプにしてあります。他にも────」
「お願いだから選択肢を増やさないで!
う〜〜。迷う。これは迷うぞ。ハニーか?ピーナッツか?それともショコラか?バターか?どっちを選んでも美味しそうだがどっちか選べなかった事を後悔しそうだ!はわわ 私はどうしたらいいんだ」
「紅葉さん。別にお代わりしても良いんですよ?」
「ッッ!父さん大好きーーー!!!」
「娘っ子は騒々しいな。ご主人。オイラは卵の殻をくれ!銀貨一枚もするだけあってカラドリウスの卵の殻は絶品だな」
「銀貨の価値があるのは中身の方ですけどね。どうぞ グツグツ」
気になったのが、激減した人間たちは可能な限り帝たちの中から相手を見つけて結びの儀を行う必要がある、という条件だ。超越魔法インサザニアの呪いに対抗して、何らかの制約を課して呪いを緩和させたのだろうか。出生率0なら1500年も経って人間がいるのはおかしいし、まあ魔法の対抗策に関しては、正直な事を言うと配下にいた大魔法使いマナフに丸投げしてたので皆目検討もつかん。
「紅羽先輩。家族っていいですね。所で先輩って何歳の時に今の旦那様と結婚なされたんでしたっけ?」
「……18,いや19だっけ。紅葉が今10歳だから、うん。19歳の時だな。それが?」
「ぼく今25です。」
「それで?」
「恥ずかしいですけど言いますね。ぼくの夢は、可愛いお嫁さんになることです」
「……そうか」
「ぼく25です」
「……そうだな」
「結婚したいです」
「すれば良い。雷帝なんだし、選り取り見取りだろう」
「分かりました。では娘さんをぼくにください」
「パパー?ちょっとそこに置いてある魔剣ディールファングを取ってもらっていい?ううん。久しぶりに試し斬りしたくなっちゃっただけだよー。大丈夫。良い練習台見つけたからー!」
「わーっ!冗談だよ!
ところで先輩愛ってなんですか?」
「それも冗談にしてもらっていい?」
ルコアと話す母はどこかキリッとしてて、普段紅葉たち家族に見せる一面とまた違った顔だった。だがそれは決して偽りではなくそれもまた彼女が持つ様々な側面の一つなのだろうと思った。
「今日は助けてくれてありがとう ルコア」
「礼を言うのはこっちの方だよ。紅葉のお陰で無事に先輩にも会えたしね」
なぜ礼を言われるのだろう。こちらの命の危機を救ってくれた事と偶然とはいえあちらの探し人が見つかった件を比較しても凡そ釣り合いが取れているとは思えないのだが。
「ぼくは暫く此処に滞在するから何かあったらいつでも頼ってくれよ。あの出会った森の方にいると思うからさ」
「その時は頑張って相応の見返りを用意する」
今の俺は余りに無力だ。事態に対処出来ない以上は今後も彼女の力を借りる可能性は高い。どこまで可能かは分からないが、それに見合った対価を用意しておく必要があるだろう。
だがルコアは首を横に振って、俺の手を取った
「要らないよ。友達なんだ。こういうのは助け合いだろ」
「……そういうもんか」
「そういうもんだよ」
和やかに手を振ってルコアを見送った。
魔王だった頃、友と呼べる者はいなかった。作る必要もなかった。だがこの様な状況になって初めて自分の手で友達を作る事が出来た。いや、友達とは作るものではなく、自然となっているものなのだとしれた。貴重な体験だ。
胸の内側が少しだけポカポカする。これが"嬉しい"という感情なのだろうか?
死んだ魔王様。目が覚めたら人間になっていて……? 歯軋り男 @walkers613
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