1
1
ミューリエが町から戻り、準備を整えた僕たちは再び試練の洞窟へ入った。
完全に自力での探索という意味なら、本当は灯りに関しても僕がたいまつを持つなどしなければならないんだけど、その点はサービスとしてミューリエが
ちなみに彼女が買ってきてくれた魔法薬のおかげで、走ったことによる疲労は完全に回復している。――と言っても、あの岩のモンスターが回復魔法みたいなものを僕にかけてくれていたから、使わなくても大丈夫だったんだけどね。
ただ、その時の話はまだ彼女に内緒にしているから、そういう展開になるのも無理はない。
やっぱり実際にモンスターと対峙した時に力を発動させて、ビックリさせたいしね。もっとも、熊を追い払った際のことがあるから、そこまで驚かない可能性もあるかもだけど。
「……と、ここの分かれ道は右か」
僕は自作の地図を参照しながら通路を進んでいく。今回の探索では僕が先に進み、後ろからミューリエが付いてきている。洞窟の道順については、最初の探索の時にマッピングしているから迷うことはない。
周囲には僕たちの足音だけが小さく響き、ひんやりとした空気が漂っている。今のところ、モンスターの気配は感じられない。ただ、洞窟内のどこかに潜んでいるのは確実だから、油断しないようにしないと。
……それはそれとして、やっぱり緊張するなぁ。
一応、わずかな期間だけど基礎体力作りをして、自分の力や戦い方も認識した。現時点では最大限にやれることはやったし、ベストな状態だとは思う。
ただ、そもそももし僕の『あの力』が通用しなかったら、タックさんのいる場所まで辿り着けるかどうか微妙なところ。それが出来なかったら勇者の証を手に入れるどころか、ミューリエとの旅はここまでになる。
逆に言えば、タックさんのところへ辿り着けたならミューリエとのパーティ解消は避けられる。『あの力』がうまく使えれば、勇者の証が手に入る可能性だって出てくる。
だから最低でも最奥部には辿り着かなきゃ。死に物狂いで、這ってでも成し遂げてみせる。
「――これでアレスとの旅も終わりだな。最奥部へ辿り着けるとは思えんしな」
不意にミューリエが声をかけてきた。軽く振り返ってチラリと視線を向けると、彼女は不適に冷ややかな薄笑いを浮かべている。
僕を挑発しているのか、冗談なのか、真意は掴めない。
――さて、どう答えよう?
●ひとりの方が気楽で良いよ……→11へ
https://kakuyomu.jp/works/16817139554483667802/episodes/16817139554483999717
●奇跡が起きるかもしれないよ?……→24へ
https://kakuyomu.jp/works/16817139554483667802/episodes/16817139554484227005
●僕のこと、忘れないでね……→13へ
https://kakuyomu.jp/works/16817139554483667802/episodes/16817139554484051000
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます