第21話 任期終了

「約一年間お疲れさま、つむぎ」

古詠こよみさんの方こそ、委員長業務お疲れさま」


 次代の生徒会の選挙が始まって数日。私は日課となった、生徒会室の整理と掃除を行うために、生徒会室へ行こうとすると古詠さんに声を掛けられた。


「もうすぐ終わりなのね」

「そうだね……。けど言うて、引き継ぎが終わるまでは続くけどね」

「そうは言っても、もう一ヶ月も残ってないでしょ?」

「まぁ、そうだねぇ」


 ここで会話が途切れる。古詠さんは何かを考えているようで、しばらくするとまた口を開いた。


「キミはこれから、生徒会室の掃除に行くの?」

「そうだよ。もう一年続けていると日課だわな。ってこれも、もうしなくなるって考えると感慨深いなぁ」

「……ねぇつむぎ」

「ん?」

「今日一緒に帰らない?」

「ん~そうだなぁ」


 掃除にはそこまで時間は掛からないだろうし、残る理由もないんだよなぁ。


「……だめ、かな?」


 うっ……その表情はズルいなぁ。


「あ~分かった。教室で待ってるよ」

「ほんと!」

「ほんとだよ。本を読んで待ってるから」

「約束ね。じゃあ私、部活へ行くから」

「はいよ。部活頑張って」


 部活へ行く古詠さんを見送ってから自分も生徒会室へ向かう。生徒会室に到着すると、いつも通り掃除を始める。


「毎日こまめに掃除してるから、意外ときれいなんだよなぁ。この部屋」

「それはつーくんが、ほぼ毎日掃除と整理をしてくれるからでしょ。去年の生徒会の人たちは、月に一回くらいしか掃除はしなくて、備品の迷子とかよくあったって言ったし」

「あら?天音あまね、どうしたの?」


 掃除をしながら呟いていると、いつの間にか天音がやって来ていた。


「ちょっと野暮用だよ。つーくんは今日も掃除?」

「まぁそうだけど……時間潰しも兼ねてるかな」

「時間潰し?掃除が終わったら帰るんじゃないの?」

「……古詠さんから、一緒に帰ろうって言われて……了承した」

「あぁ~OK、理解した。……どうやら根回しは必要なさそうね」

「理解?」

「こっちの話。気にしないで」


 天音は理解したと言った後、何か言った気がするが、小声でよく聞こえなかった。そして露骨に話題を変えてきた。


「そうそう!丁度いいから先に伝えておくけど、生徒会室の最後の利用日。引き継ぎの前日になると思うけど、その日はみんなで生徒会室を掃除するからね!くれぐれも、一人でやろうとしないで、私たちにも仕事を割り振ってよ?」


 釘を刺されてしまった。まぁそりゃそうか。一年間使わせて貰ってありがとうございます、っていう意味合いの掃除になるのだから。こればかりは全員でやらないと意味がないだろう。……あれそう言えば。


「それは了解。でだが……自分が掃除の割り振りをするの?」

「そりゃこの部屋を実質管理していたのは、つーくんじゃない。よーく、知っている人が指示だしすれば、効率よく終わるはずでしょ?」

「まぁ確かに……そうかもしれないけれど」

「自身持ちなよ。一年間やりきった事でしょ?」


 天音の中で既に決定事項となっているようだ。……まぁ大した動力でもないし、そのぐらいやるか。


「ん。分かった。やりますよ」

「ならよし……っと、そろそろ部活に行かなきゃ」

「自分ももう切り上げて、教室で時間を潰すよ」

「あ、なら戸締まりは私がやっておくから、先に行きな」

「ん。ならお先に」


 そう言って先に生徒会室を出る。


「――――――が――――に」


 扉を閉じる瞬間、天音が何かを言った気がするが……小声でよく聞き取れなかった。多分気のせいと思い、私は放課後の教室へ向かう。

 無人の教室だと思っていたら、先客がいた。私はその先客に声を掛ける。


「部活に行ったんじゃないの?」

「休憩を貰ってきたの。今なら二人きりになれて、話ができるから」

「話?」

「つむぎ、私はキミの事が―――――」

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人前が苦手な私は、生徒会を陰から支える事にしました 東條 九音 @kuon_tojyou

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