第20話 文化祭の予定

「文化祭まで残り一週間と少し。生徒会の役割を、改めて確認しておくよ」


 天音あまねの言葉に生徒会室に集まった全員が頷く。


「と言っても基本、来場者の受付を交代で受け持つだけなんだよねぇ」

「あとは確か、前日に体育館に座席出しをして、文化祭終了後に体育館内の片付け。それと当日の司会進行を全員で持ち回りね」


 副会長の咲耶さくやさんが会長の天音の言葉を補足する。……にしても、言葉で聞く分には簡単そうだが、どちらも大変な仕事だ。受付は基本立ちっぱなしだし、座席の用意と片付けは少人数で準備するので重労働と予想ができる。


「そうだね。生徒会としては、前日当日が一番忙しいだろうし、部活によっては当日の発表も。ともかく、みんなよろしくね」


 天音の言葉に全員が返事をして、この場は解散となり、各々部活へ向かった。

 私はいつものように生徒会室に残り、整理と掃除を行う。その間に考えるのは文化祭の事。一年生は劇を行い、二年生は修学旅行で学んだ事の発表。三年生は合唱を行う。


「一年の時は大道具の係。今年は生徒会としてのお仕事か」


 一年生の時も劇に出たくなくて、大道具係をやっていた。おかげで当日は座って見るだけ。けど今年はお仕事づめ……。


「何か不満があるの?つーくん」


 独り言を呟いているところを天音に見られた。


「あれ?部活に行ったんじゃ?」

「忘れ物を取りに来たのよ」


 天音は自身の座席の場所まで行くと、クリアファイルを手にする。その中を確認すると頷く。チラッと見えたが、どうやら楽譜を忘れて行ったようだ。


「あった、あった。……で、さっきの独り言は?」

「いや、大した事じゃあ無いんだけどね。今年の文化祭は忙しそうだなぁ、って思ってさ」

「あぁ、そう言うこと?」

「そう言うこと」

「まぁ確かに大変だろうけど、こう言う行事ごとの時とかは、私たちみたいな影で頑張ってる人たちがいるから、成り立つんじゃない」

「そうなんだよなぁ。ほんと生徒会役員になってから、それは身に染みたよ」


 進んで裏方の仕事をやってみて感じたこと。それは誰かの支えがあるから、その事に集中できる。影の功労者は評価はされにくいけれど、そこには確かなやりがいが存在している。……でも普通はちゃんと評価されることを選ぶよな。うん、私が特殊なだけかも。


「そう言う点で言えばつーくん、いつもありがとね」

「お礼を言われるような事はしてないよ」

「つーくんはそう考えているかもだけど、大切なことだよ」


 何か恥ずかしい……話題を変えるか。


「文化祭と言えば、吹奏楽部と軽音部は今年もやるんだよな?」

「あ、うん。そうだよ。今年も演奏するよ」

「練習に行った方がよくないの?部長さん」

「なんだか、話題の切り替えが強引な気がしなくも無いけど……つーくんの言う通りだし、もう行くね」

「おう、本番期待してるよ。頑張って」


 生徒会室を出て行く天音を見送る。


「……うし。もうひと頑張りするか」


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