Case.1 探偵なのに盗むんだゆ ㉔

 エレベーターに乗ると、一気に上っていくあの独特な重力を感じる。


「それにしても、ヨシナリ、よく見つけたゆ」

「さすが、伝説の勇者だけはありますなあ」

「だから、平凡な男子高校生ですって……、あ、着きましたね」


 チン、という小気味こきみいい音と共に、目の前に広がる世界は。


「……は?」


 照り付ける常夏の陽射しサンシャイン

 んだ青さを持ち、ところどころエメラルドグリーンが揺蕩たゆたう水面。

 白い砂浜ビーチでは、人種的にどう見ても日本の方ではない人々で賑わっており。


「あ、あのあの、やま田さん、ヨーグルさん、ここは」

グアムギャムゆ」

グアムギャムですなあ」

「へ? え、なんで? あんな凄いSFな地下世界の上が、グアムなんで? どうしてなんで、WHYホゥワーイ?!」

「はっはっは、良成様。早速ネイティヴな発音で海外ギャム気分を満喫まんきつとは、恐れ入りますな」

「さすが、ボクの見込んだ男ゆ」


 微笑ほほえむヨーグルに、なぜか視線を外しずかしそうに顔を赤らめるやま田。

 いや、もう、なんていうか。


「いや、俺、パスポート無しで外国はちょっと?! いや待って、マジでバカンスとかそんな気分になれませんし! あっ、なんか向こうからいかにも映画に出てきそうなグラサンかけた黒人ポリスメンが二人も!! いえ、僕は悪くないんです! 全ては宇宙人が、宇宙人がやったことなんだああああ!!!」


だまるゆ」


 鼻先に例のスプレーが吹きかけられるのを感じ、美しい景色が急速にぼやけていく。


 ああ、この先どうなるんだろう。

 俺の平凡な人生、どうしてこんなことに。

 自問自答じもんじとうする時間は一瞬で、起きたら夢オチだったらいいな、と思いつつ俺の意識は完全に断絶した。

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未確認な「やま田」とかいう存在のせいで平凡な人生終わりました。とりあえずコーヒー飲ませてください。 南方 華 @minakataharu

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