第6話 ディクショナリー

午後8時真夜香は目を覚ました。頭はズキズキする。布団から出ると、昨日夜通し書いた日記があった。書いたばかりなので、内容は覚えているけれど、読み直したら涙が出てきた。そして止まらない。

「もう限界だ。」

真夜香は、そう呟くとお化粧をし、今までで一番のオシャレをし、昨日一晩かけて書いた3冊の日記を持ってて家を出た。

行き先は決まっていたため迷いなく歩みを進めていった。気持ちとは裏腹に夜風が心地よく感じられた。


途中でバスも使いつつ、30分くらいすると、山の自然を活かした国営公園に着いた。勉と何回かきたことのある思い出の公園である。暗がりのなか、勉とのデートを少し思い出しながら散歩を続けると、橋に着いた。下は崖のようになっていて、小さな川が流れている。ここが最終目的地であった。

「飛び降りるにはちょうどいいかな。」


真夜香は勉に

「今までありがとう。幸せで生きてね」

「最後に私の日記を置いておくから、読んでほしい」

とLINEを2通送信した。


靴を並べ、その隣に日記を3冊縦においた。

一息ついた。

そして、その橋の上から暗い谷へと躊躇なく飛び降りた。

「あの日記は感情の参考書みたいなものです。だから解いてみてね。私がどんな思いだったかを。」

そう心の中で思いつつ。



LINEに気づいた勉は、

「いきなりどうした?笑   大丈夫か?」

とLINEを送信した。

しかし、この文章に既読がつくことはなかった。

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ディクショナリー @かあ @kaa999

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