7月は、流れ星の道をとおって
JRは、豊橋駅近くの事故のため遅延していた。私は、海辺の街の駅で電光掲示板を見つめていた。該当する線路間が赤く塗られて、改札前で駅員が遅延を詫びるアナウンスをしていた。私は古い友人を待っていた。
私は駅を出て一人海を見に行こうとした。今は夕方の6時だが昼間のように明るかった。夏の熱気が胸を突いた。駅前広場で、学生たちがビールを飲みながら、騒いでいた。やけに長い信号に止められて少し苛立ったが、時間はあるんだ。
スーパーの横を通り、焼き芋の自動販売機をめずらしく思い少し見つめて、海洋博物館の前に来た。そこで私は立ち止まって、海を見るのはやめて、博物館に入ることにした。エントランスで、感染予防の手続きをして、中に入った。
アンモナイトの化石や、隕石、恐竜の化石のレプリカなどがあった。ビデオの上映会があるというので参加した、子供連れの親子が一組だけ参加していた。小劇場ほどのスペースがあり、大きなスクリーンに映像が流れた。
生物は海で始まり、微生物から、魚のようなものになり、私たち人間に進化した。それは、生まれて滅び、また生まれ、私たちに繋がった。進化の過程で、いくつものユニークな生物があった。
映像が終わり、案内の人が話をした。
「目、鼻、口にはそれぞれ二つの役割がある。鼻は匂いを嗅ぐ、また呼吸をする。口は、ものを食べる、そして話をする。では、目は何でしょう?…」
「一つは、ものを見る。今こうして見ているように」
それから、その人は机の下から爬虫類の頭蓋骨を手に取った。
「多くの生物は、この目と目の間の眉間のところに穴があります、ほら、ここ、空いていますね。そこから光を探知していたと言います。」
「いったいそこから何を見ていたのでしょうか、ぜひ考えてみてください。」
薄暗いホールから出て、ガラス張りの窓の外を見ると、日が沈みかけていた。出口の前で、化石や鉱物などが入ったガチャガチャがあった。一回だけ回して外に出た。
そのあと、しばらく海を見て過ごした。
三日月が海に浮かんだ頃に、駅に着いたと友人から連絡がきた。
改札で顔を合わせたとき、二人は笑った。
「行く店は決まってる?」と彼女が聞いた。
「決まってないよ、少し歩いてよさそうな所に入ろう」と私は言った。
そして、長い信号に止められてる間に、
「琥珀色の弓張り月か」と私は言った。
「なんの話」
「昔そういう歌があったでしょ、ほら見て」と言って、空を指さした、三日月が浮かんでいた。
「これあげるよ」と言って、ポケットから、ガチャガチャの景品を渡した。
「なにこれ」と彼女は言った。
「琥珀だよ」
「どうしたのこれ」と彼女は言った。私は彼女を待っている間に、博物館に行っていたことを話した。
「ありがとう。どうだった、面白かった」と彼女が聞いた。
ひと呼吸、間をおいて、
「あんまり面白くなかったかな」と私は言って。
そして、二人は笑った。
owari
短編 花の香水のビンが割れた 星降雨独 ーセイコウウドクー @matawari
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