第2話◆始動
西暦2125年。元号、帝王。
人類は数多の危機から脱した。
内乱、戦争、未知のウィルス、自然災害、大気汚染。
そのどれもから脱した。人類は形態を変えて生活も変わることになった。
それは日本も例外ではない。
日本も大きな変革を迎え、徐々にではあるものの変わっていった。
かく各々の国に一つは存在する機械仕掛けの神。通称
マザーブレーンは秩序を正すため
マザーブレーンの製作に大きな点はマイクロチップ制度にある。
マイクロチップ制度とは国民の五歳以上を対象にした制度で、マイクロチップを国民に埋め込む制度である。
マイクロチップはマザーブレーンと繋がっており、もしも仮に誰かを誰かが誘拐してもすぐに犯人の居場所を探知出来てしまう。
メリットは数多にあるが、デメリットも存在する。
反マザーブレーン派と呼ばれる集団が存在する。反マザーブレーン派はマイクロチップを埋め込まず、聖府にたいして何かしらの不満を持つ因子である。
反マザーブレーン派はマイクロチップを埋め込んでいないので探知は不可能であり、何かしらの行動をしても探知はできない。
マイクロチップ制度は強制されるものではない。あくまで聖府がオススメする制度であり、人権の問題から強制するに至らなかった。
反マザーブレーン派はマイクロチップ制度に出来た歪みとして存在した。
第三次世界大戦から復興まで日本は大きなダメージを負った。そこで多くの歪みが出来て、多くの癒えない傷を抱えた。当然ながら反乱因子が誕生するのは必然的だった。
各国々が手を取り合い和解した。収束平和協定が結ばれ、平和が事実上成り立った。しかし、それをよく思わない国民も多くいた。
マザーブレーン製造過程は戦争や内乱を未然に防ぐための意図もある。マザーブレーンは間違いを犯さない。そのため、一国の大統領もマザーブレーンの指示に従わなければいけない。
人は間違いを犯す。ならば間違いを修正する擬似的な神様が必要となる。
マザーブレーンは数多の犠牲から誕生した唯一の各々の国々の神だった。
宗教的に認められていないマザーブレーンはあくまで平和を保つための神。特定の宗教を信じている人は当然良く思わない。
反マザーブレーン派がここに誕生してしまう。それは仕方のないことだった。
日本全体にスポットを当てよう。
国民が減少傾向にある。少子高齢化の進行は年々日本を苦しめてきた。
アンドロイドの適応により、職場での専門的分野はアンドロイドが担うのがベタなパターンとなっていた。危ない仕事も人ではなくアンドロイドが担っている。
国民約300万人。桁外れに少子高齢化問題は危機迫り、猛威を振るう。
聖府上位機関、通称聖府大五老師はこの日本の未曾有の危機に動き出した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
真っ白なベール。玉座五つ。
それぞれが玉座に座る。中央には陽が射している。ダイヤのオブジェ。一輪の花が花瓶の中で窮屈そうに咲いていた。紫色のスターチス。
天井は開けていて中央は硝子張。
天秤の図柄が黒を基調に玉座の後ろに描かれていた。
「それでは会議を始める」
四つの玉座が円を成してその中央にアルファは座る。まるで籠の中の鳥。
ナンバー1は一番地位が高く。2、3、4、5は等しい関係にある。
ナンバー2。
ナンバー3。
ナンバー4。
ナンバー5。
アルファは咳払いをして本題に入った。
「人口累計363万人。スラムを含めると370万人に相当するか。我々にとって危機を感じるのは少子高齢化という不治の病だ」
「減少傾向にあるのね」
デルタはブロンド色の髪を撫でつけて口にした。アルファは「うむ」と言い、デルタに向けて頷いた。
「それで。何か策は?」
イプシロンは先を促した。中肉中背の四十代半ばと言うところか。ガタイがいい。
アルファは一呼吸間を起き、言った。
「人権の問題上、強制的な未婚禁止なんて出来ない」
「それはそうだよ。未婚の男女に今日からあなた達はパートナーだからなんて人権もクソもない」
やや毒舌のベータ。
「ベータの言う通りだ。だからここのこの場で会議をもうけた訳だ」
ガンマはアルファの話しを俯いて聞いていた。オールバックに端正な顔立ち。眉目秀麗。
「だが、それも
ガンマは俯きつつも視線を順繰りと皆に向けた後、アルファに向けた。アルファは意味がわからないとガンマに問う。
「どういう意味だ?」
ガンマはフッと鼻で笑う。笑みが溢れ、端正な顔が歪む。
「そのままの意味ですよ。
人権を無視した未婚かもしくは子供のいない男女を対象にした政策を設ける。
つまり絶対性交。
逃れようのない性交の果てに子供を増やす政策をすればいい」
デルタは驚愕して声にならない。ベータはガンマを見てその美しい顔から垣間見える狂喜を見た気がした。
唯一イプシロンが怒りを露にわなわなと身体を振るわせていた。
アルファは中央でガンマを見る目は冷静。ガンマの絶対性交という政策は人権の問題上できない。しかし、ここにいる誰もが一度は解決の糸口として焦点に入れていた事柄だった。
「それでそれを行う意味を問う。
仮に子供がその政策で増えたとする。それで人権を無視された国民はどうすると?」
「アルファ殿!ガンマの意見に賛成か!?そんな下らないことに付き合う会議じゃない!!!」
アルファは手のひらでイプシロンを静止た。イプシロンは怒りを抑えるのに必死だ。
「派閥が出来、デモ、内乱が起こる。今考えうる限りではそれらは我々大五老師に降り注がれる。
なぜ、そんな政策を?
なぜ、人権を無視した?
どこにこの怒りをぶつけたらいい?
それらの因子は自ずと規模を拡大させて行く。それら因子は
場合によっては腐った部分を
「ほう。。。」
アルファは表情一つ変えず、ガンマを見つめた。そして、耳鳴りがするほどの静けさの中で言い放つ。
「その意見、却下だ」
フッとガンマは笑う。周りは安堵する。
「やはりな。さてと」
ガンマの声音が低く冷たいものになる。
バン─────────
爆発音が鳴ると同時にアルファの頭部が飛び散った。鮮血が色鮮やかな紅色をして、噴水のように流れ出た。
会議室の扉がガタンと乱暴に開くと中から自衛軍が武装をして現れる。足音を立てて手にはライフル銃が握られている。
「どーいうことだ!?」
ベータは怯えた様子で言葉を発した。ガンマは周りを見渡すと問うた。
「さて、お前らには権限が与えられる。神が与える権限だ。
選択しろ。
1、俺の政策に賛成する。
2、俺の政策に反対する。
はてさてどちらにするかだ」
ベータは我先に「賛成だ!賛成する!!!」。次に便乗してデルタも「賛成するわ!!!」。
己が助かるのに必死。唯一イプシロンが沈黙していた。
「どうした。イプシロン?選択しないのか」
イプシロンは俯きつつガンマを睨み「くたばれ。これが俺の選択だ」。
ガンマは高笑いをした。上を見上げ、両手を広げた。
「ふっふふふふ。
ハハハハハハッ」
笑いが込み上げてくるらしい。この会議室にこだまする高笑いはしばらく続き、「決まりだ」とガンマが言うと自衛軍はベータとデルタに発砲した。
ベータは頭を撃たれた。
デルタは胸を撃たれた。
ガンマはイプシロンに言う。
「答えは3、そもそも選択なんてないだ」
自衛軍は銃口をイプシロンに向けた。ガンマはそれを手で静止た。
「イプシロン。お前は選択の問いをせずに自分の意見を通した。
だから、ご褒美に俺がこの手で殺してやろう」
「ガンマ。お前は何がしたかったんだ?初めからこの会議室でこれらをするためにこのタイミングで実行したとしか俺は思わない。違うか?」
ガンマはマグナム銃を取り出してイプシロンに向けた。
「察しの通り。このタイミングを狙っていた。お前だけは薄々気づいたらしいな。
なら教えてやる。
お前は本当の意味で助からない」
ガンマは引き金を引いた。
バン─────────
頭に一発。マグナムの威力で後頭部が吹き飛んで脳が飛び散っていた。白い床が血だまり。
「時に悪は正義にもなるんだよ。園田さん」
地獄絵図の光景。その中で中央に鎮座するナンバー1の玉座。陽を浴びる玉座。
アルファの首なし死体を足で蹴りどけた。
そこへゆっくりと座る。
自衛軍は中央を横並びに開けて道を作る。
扉を潜って現れたのは眼帯をした白髪の男だった。
「ガンマ。いや、安西様。これから手筈通りに事を運びます」
「ああ。頼む。
シータはお辞儀を安西にした。
安西は周りの遺体を見て笑う。冷静、冷徹、狂気、それらを含む微笑み。
「ここより、俺が神となり、庶民に救済という慈悲を与えよう」
アブノーマル◆ロワイヤルゲーム
次の政策を西暦2125年に本日実行する。
1、男女13歳が該当され60歳以上は該当から除外される。
2、強制的な性交を義務づけると共に反乱因子は排除される。
3、同性愛者も性交を義務づけるが、出来ない場合は処刑される。
4、身体障害、不妊症などの病的に性交が不可能とされる者は区役所に申請を出し、保護区へ移送となる。
5、女性は妊娠したら1000万円の給与が支払われる。男性は妊娠させたら50万円のボーナスが得られる。
6、すでに妊娠した女性、または障害により不妊の女性に大しての性交を行った者は処刑か1000万円の支払いを命じる。
7、公務員、国家公務員、特別国家公務員は免除である。
8、ルールは絶対である。
アブノーマル◆ロワイヤルゲーム 平谷すらら @05180218
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