アブノーマル◆ロワイヤルゲーム
平谷すらら
第1話プロローグ
それは突然と不意に起こった。
私達が見た悪夢の始まりだった。
父に手を引かれた私は手を振った。バイバイとまたねの両者の意味を込めて。
母は微笑みを浮かべて少しばかり眉間にシワを寄せて手を振り返した。
白いベッドで自由にならない身体で手を振る母はどこか辛そう。
「ナミ行こう。またママに会える」
そう言う父の表情はどこか儚いものを見るようで、切なそうな。
「今度ママといつ会えるの?」
父は私の問いかけに何か堪えるように上を見上げた。病院の廊下の天井の照明を見上げて父は何を思ったのだろう。
この時の私にそんなことを思うすべがなかった。
父はしばらく数秒の沈黙の後、私の手を少しばかり強く握った。
「またすぐに会える。パパはそう信じているんだ」
父の顔がこちらを向いた。微笑む姿。
私も無邪気に微笑みを返す。
「だからそれまでママと会うのを楽しみに待とう。ナミ」
そうして屈んで、私の頭を撫でた。私はそんな父を見て「うん」と笑み、頷いた。
母はその次の日に亡くなった。
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