第二章 アリサト
“ピッピッ、ピッピッ、ピピピピーッ”
時刻は6時半。
俺は、手探りで目覚まし時計をつかみ、目を擦りながら重たい身体を起こした。
「んーっ…もう朝かぁ…」
俺の職場は、自宅から車で1時間程度走ったところにある大学。少しでも長く寝ていたい俺は、運転しながら車内で朝食を済ませる。そして、今日もいつも通りの一日が始まった。
「おはようございまーす」
事務室の扉を開けた途端、同僚からの挨拶を書き消すボリュームで、一人の女の子が走ってきた。
「アリサトくーん!おっはよ!」
面倒を見ているうちになつかれてしまった挙げ句、いつからか俺を下の名前で呼ぶ学生だ。
「おはよ、早く授業に行けよ!遅刻するぞ?」
追い払う仕草をしようとジャケットのポケットから手を出した瞬間、何かが“ペラッ”と落ちたのをすかさず学生が拾った。
「はい…いつでも電話してねっ♡」
そこに書いてある文字を見てニヤリと笑った学生は、それを俺に差し出し走り去っていった。
「何だ…あいつ?」
受け取ったものを見てみると、昨日駅まで送った時にもらった連絡先だった。
「あ、しまった…またしばらくこのネタで遊ばれる…」
俺は、印刷室にあるシュレッダーにそれを差し込み、「すいません…」と一礼して、自分の席についた。
“キーンコーンカーンコーン…”
昼休み、休憩室に向かう途中でLINEが届いた。ヒヨリだ。休憩室の座席に腰掛け、カップラーメンが出来上がるのを待ちながら、ヒヨリに返事を返した。
ヒヨ『アリサトくーん!昨日はうまくいったのかな?w』
アリサト『何のこと?』
ヒヨ『またまたー!昨日のあの子とに決まってんでしょー!!』
アリサト『うまく?あの後ちゃんと駅まで送ったけど??』
ヒヨ『へぇ~…あれから二人で一緒にいたでしょ~?w』
アリサト『いや、俺、すぐに別れてそのまま帰ったから』
ヒヨ『ふーん…私、アリサトがどこにいたか知ってるんだけどぉ?w』
アリサト『はぁ?何言ってんだ!酔っぱらいめw』
ヒヨ『うっ…否定できない…私、ちょっと昨日の記憶ないんだよね…?』
アリサト『バーカw 飲みすぎなんだよ!ちなみに、あの子とは何ともならないから心配すんな!もうシュレッダーしたし…』
ヒヨ『えっ!?シュレッダー?連絡先もらったってことでしょ!?あの子、可愛いのに…』
アリサト『んーそうだっけ??』
ヒヨ『アリサトくん?君のそういうとこ、私は心配だぞ?!』
アリサト『はーいはいw そろそろ仕事戻る時間だから、またな!』
俺はスマホをポケットにしまい、休憩室を後にした。
【SWITCH】 asato @asato1019
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