アイコの夢

福守りん

アイコの夢

 そうして人類は永遠の眠りについた。

 ……


 今から、遠い遠い昔のこと。

 この星のいたるところで、核兵器の暴発が起こった。

 爆発初期の放射線によって、多くの人類が死に絶えた。

 やがて、管理する者のいなくなった原子力発電所の炉心溶融が引き起こされた。

 地上は、放射能によって、汚染されつくした。

 残留放射線を避けるために、生きのびたわずかな者たちは、各地に作られた地下都市で暮らしはじめた。

 それから、長い時が経った。


 太陽はまだ、地球に熱を届けてくれている。けれど、いつ燃えつきるかわからない。

 太陽が死ぬ前に、物資が不足しはじめた。地下での植物の栽培や、人工肉の生産のサイクルが、うまくいかなくなった。

 資源の枯渇が、大きな問題になりはじめていた。

 人類は、せまい地下都市のいたるところで、争いはじめた。

 地下戦争によって、人口は大幅に減少した。

 勝ち残った者たちが、地下都市の乏しい資源のすべてを手にした。


 その後も、人類は、ひそかに生きてきた。


 長い、長い時が経った。

 そうして、とうとう、地球という星の寿命が尽きはじめた。

 太陽が死のうとしていた。

 膨れあがり、燃えあがった。

 大気も、燃えていった。

 太陽は膨張を続ける。地表の温度は、とうてい生命活動が維持できるような適温ではなくなった。

 超高温の地球の地下都市で、人類は、次々と冷凍睡眠コールドスリープの準備を始めた。

 まず、アメリカ都市から。次に、中国都市。日本都市も例外ではなかった。

 滅ぶことを約束された状態では、次の世代に命をつなぐことはできないと思ったのだろうか。

 終末を見ることを拒否した人類は、自らを凍りつかせて、永年の眠りにつくことを選んだ。

 死を先送りにしたかったのかもしれない。

 目覚める保証のない眠りは、死とよく似ていると、わたしは思うのだけれど。


 こうして、誰もいなくなった。

 それでも、わたしはここで、ひとり、花を育てている。


 * * *


 わたしは、アイコ。

 花を育てながら、生きている。

 放射線は、まだいたるところに残っている。

 太陽は、燃え続けている。

 こんな過酷な環境でも、花は咲く。

 虫も生きている。

 花の蜜を吸いに、蝶が飛んできたりもする。


 ドーム型の巨大な施設がある。

 この中に、わたしが管理している植物園が、すっぽり入っている。

 植物園は、三つのエリアに分かれている。樹木エリア、花エリア、野菜エリア。

 それぞれのエリアで、植物を育てている。

 ただし、野菜は、種子や苗は地下都市に保管してあるけれど、作るのをやめてしまった。地上でできたものを食べることは、もう、誰にもできないことだからだ。

 植物園の真下の地下には、日本都市がある。

 ドームの天井は、分厚い硬化ガラスでできていて、太陽の光と熱を、量を調整しながら取りこむことができる。

 水は、地下都市の中にある、湧き水を貯蔵しているタンクから、ポンプで吸い上げている。

 ドーム構造は、無数の大きな柱で支えられている。柱と柱の間は、なにもない空間になっていて、そこから、外の空気を取りこんでいる。

 温度と湿度は、太陽光エネルギーで動く空調機で調整できる。散水するための設備もある。

 ずっと昔に作られた施設だけれど、日々手入れをしてあげていれば、なんとかなるものだ。


 わたし以外には、見る人もいない花を、大事に育てている。

 いつか、どこからか、地球を訪れるものが現れるかもしれない。

 その時に、地球が花や木々であふれているというのは、いいことかもしれない。

 緑の星だ。

 わたしと、わたしの仲間たちが、訪問者たちを迎えることになるだろう。


 今日は、はじめに樹木エリアに行った。

 梅の木たちに、花が咲いていた。

 薄桃色の花は、見ているだけで、うっとりとしてしまうほど、美しいものだった。

 白い花のものもある。

 ころころとしていて、丸く、愛らしい。一つの枝に、いくつもの花がついている。

 青い空とのコントラストもいい。

 花が咲いている時には、葉はでてこない。それもいい。

 梅の花には、華やかな桜とはちがう、梅ならではの良さがあると思う。

 もう何度も見ているけれど、見る度に、新しい発見がある。

 何年もかけて、大事に育ててきたものだから、こんなふうに花が咲くことは、とてもうれしい。

 梅の木の根元に座って、じっと見ていた。全身が、梅の甘い香りにつつまれているようだった。

 うぐいすがやってきて、梅の木の上で鳴いた。


 ゆっくり休んでから、体を起こした。

 次は花エリアに行こう。

 今日は、どの花が咲いているだろうか。楽しみだった。


 いつもの日常。変わりばえのしない日々。

 ずっと、こんなふうに暮らしながら生きてきた。

 花や木々を育てながら、ささやかな幸せを感じていた。


 花エリアに着いた。異常はなさそうだった。

 少し前まで蕾だったストックも、もう花がひらいていた。

「咲いたの。よかったね」

 淡いピンク色のストックの花に、声をかけた。心なしか、うれしそうに見えた。

 やさしい風が、わたしの全身をくすぐるように吹きつけてくる。

 菊とクリスマスローズも、美しく咲き誇っていた。

 花が美しいのは、当然のことだけれど、みずみずしい葉の緑色も、わたしの自慢だった。

 花々の間を歩いて、見まわっているだけで、誇らしい気持ちになった。

 わたしが大好きなアネモネの花畑は、植えられている範囲が広いこともあって、いっそう立派だった。

 赤く広がっているところが花びらだと思われそうだけれど、花びらのように見えるところは、実はがくで、中央の黒っぽい部分が花だ。

 アネモネの花言葉は、「見捨てられた」または、「見放された」。

 わたしの頭の中には、地球のあらゆる植物たちのデータが刻みこまれている。

「わたしが、そばにいるからね……」

 そよそよとした風に吹かれて、アネモネたちがゆらりと揺れる。踊っているみたいだった。

 赤い、赤い、命のダンス。

 命が燃えている。

 それは、すばらしい眺めだった。


 ドームの機関部のチェックが終わると、わたしの仕事はおわりとなる。

 鼻歌を歌いながら、出入り口へと歩いていった。


 ドームから出た。

 廃墟をこえて、残骸になってしまった地上の建築物は、ほとんどが形をとどめていない。がらくたの山のように見える。

 縦横にのびている歩道以外のところに、それぞれのかたまりになって、置かれている。遠目からだと、まるで、灰色の山がたくさんあるような感じだ。

 道路を整えているのは、ローダーたちだ。

 彼らのおかげで、わたしは、なにかにつまずいたりしないで歩くことができる。

 てくてくと、歩いていった。

 クリーナーが、ひび割れたアスファルトの上を、ていねいに履いている。

 灰色の埃が、割れたアスファルトのすきまに落ちていく。

「こんにちは」

 返事はなかった。でも、会釈はしてくれた。いつものことだ。

 わたしを見ていた視線が、地面に落ちる。それっきり、わたしのことは忘れたように、一心に地面を履きはじめた。履きながら、少しずつ移動していく。

 これも、いつものことだから、驚いたりはしない。

 しばらくの間、立ちどまって、クリーナーの姿を眺めていた。


 どうしようかな……。

 もう帰ってもいいのだけれど、今日は、どこかへ行きたい気分だった。

 家で、ひとりで、じっとしていてもつまらない。

 ペットハウスに行くことにした。


 小さな家は、外壁のあちこちを建築物の残骸で補修されている。どうにか形を保っている、という感じだ。

「いらっしゃい。アイコさん」

 ペットハウスの管理者は、マナと呼ばれている。

「こんにちは。遊びたいの。いい?」

「どうぞ」

 ここには、いろんな種類のペットがいる。

 まだ生きている子たちは、わたしと遊んでくれたりもする。

 白壁の壁面に、いろいろな大きさのケースが埋めこまれている。ケースの中では、ペットたちが眠っている。

 小さなペットを選んで、ケースから出した。

 子猫の形のペット。色は白。毛並みは、ところどころはげてしまっているけれど、じゅうぶんかわいい。

 抱きかかえたまま、色あせたマットが敷いてある床に座りこんだ。

 後頭部のあるところを、指で押すようにふれると、眠りから覚めてくれる。

 白猫の目が、ゆっくりと開いていった。

「あそぶの?」

「そうよ」

 ペットたちは、言葉を話すことができる。

「アイコちゃん」

「覚えていてくれたの?」

「もちろん」

 白猫は、とくいげな顔をしていた。

「なにするの?」

「そうね。なにをしようか」

 少し考えてから、いいことを思いついた。

「お散歩してもいい?」

「どうぞ」

 マナの返事を聞いて、白猫が跳びはねた。

「わーい!」


 かつて街だったところを、白猫と一緒に、あてもなく歩いている。

「おさんぽ。うれしい」

 幼い声で、わたしに言ってくる。

「そうね」

「はれてる」

「そうね」

「ぼくのしっぽ、かわいい?」

「かわいい」

「きょうは、どんなきぶん?」

「悪くはないかな」

「だったら、ぼくとおなじだ」

「そうなの?」

「うん」

 ふふっと笑った。白猫は、うれしそうな顔をした。

 ひとりと一匹で、どこまでも歩いた。


「そろそろ、もどらないと」

「うん」

「だっこしてあげる?」

「うん」

 白猫を持ちあげて、だっこしてあげた。

 来た道を、逆にたどる。

 ふと、このまま、もどらずに、先へ先へと進んだら、どうなるのかなと思った。

 ドームの植物園は、しばらくは、生きながらえるかもしれない。でも、長い時が経ってしまったら、きっと枯れてしまうだろう。

 わたしが育ててあげないといけない。

 

 わたしが世話をしなくなったら、木々も花も、死んでしまうだろう。

 わたしには、わたしが動けなくなった後のことは、わからない。わからなくても、いいと思った。


 家に向かって歩く帰り道で、鮮やかな夕やけを見た。

 夕やけは、年々、その大きさを増しているようだ。

 朽ちて倒れたビルや家の上には、半分だけ赤くなった空が広がっている。

 もう半分は、暗くなりつつある青。

 きれいだった。

「きれいね」

 わたしの言葉を聞いているのは、赤と青の空と、灰色の地面だけだった。


 家に帰ると、ドクターが寄ってきた。

 両手をのばして、べたべたと、わたしの体にふれてくる。

「だいじょうぶよ」

 笑って、押しのけようとしたけれど、ぐいぐいと押されて、診察室に押しこまれてしまった。

 このドクターは、わたしだけを診てくれる医者だ。

 診察には、それほど時間はかからない。

 わたしが正しく生きていられているかどうかを、毎日確かめてくれる。

 ドクターの目が、エメラルド色に輝いて、点滅した。わたしの健康状態に、問題はないということだ。

「ありがとう」

 ドクターが生きて、動いていてくれるうちは、わたしも生きていられるのだろう。

 いつか、わたしか、ドクターが動かなくなる時がやってくるはずだった。

 その時、残された片方は、どう感じるのだろうか。

「長生きしなくっちゃね。おたがいに」



 朝になった。

 いつもの道を通って、歩いていると、道ばたにインタビュアーが立っていた。

「おはよう」

 声をかけると、ピーッという電子音が鳴った。

 伏せられていた顔が上がる。

「あなたのことについて、聞かせてください」

 これは、インタビュアーと呼ばれていた型のロボットだ。

 同じ質問ばかりされるのには閉口するけれど、ひまつぶしにはなる。

 なつかしい日本語が聞けるということも、ついつい、インタビューに答えてしまう理由のひとつだ。

「いいですよ」

「お名前は?」

「わたしは、アイコ。人型ロボットです」

「いいお名前ですね。

 あなたのことについて、くわしく聞かせてください」

「わたしには、人工知能が備わっています。

 太陽熱をエネルギーに変換しています。

 わたしは、わたしのメンテナンスをすることはできません。メンテナンスは、専門のロボットがしてくれています。

 主要基幹部の部品が故障しない限りは、壊れることはありません。

 わたしの原型となるオリジナルは、遠い昔に、日本という国で作られました。

 それ以来、数えきれないほどの改良をくわえられました。最終的に、宇宙空間での活動も視野に入れた設計をもとに製造されて、わたしが誕生したのです。

 これらのことは、オリジナルのわたしが活動を始めた時から蓄積されている膨大なデータを、わたしがそのまま受け継いだことによって、知ることができました」

「なるほど。

 なにか、お話ししたいことがあれば、ご自由にどうぞ」

 話したいことなら、いくらでもあった。

 問題は、誰も、わたしの声を聞いていないということだった。

 わたしの心をわかってくれる人はいない。誰も。

 この地上の、どこにも。

 地下にいる人々なら、わかってくれるだろうか。

 深い眠りの中で、安らいでいる人々なら……。

「ロボットには、心はないのでしょうか。

 わたしは、花を育てています。

 花が咲くと、うれしいと感じます。

 きれいな景色を見れば、感動して、心がふるえます。

 わたしの、この感情は、まがいものなのでしょうか」

 こんなことを、ずっと考えつづけている。

 考える時間なら、いくらでもあった。

「心をこめて育ててきた植物たちが枯れていくのを見る時、わたしは、胸がはりさけるような気持ちになります。とても悲しくなります。

 これも、まがいものなのでしょうか。

 ロボットだから、心がない?

 そんなこと、誰が決めたのでしょうか。

 人は神が作ったと信じていた人々がいました。

 神が作った人には、心があるのだそうです。

 わたしたちロボットは、人が作りました。

 人に作られたロボットにも、心があってほしい。

 そんなふうに願うのは、分不相応な望みでしょうか」

 インタビュアーは、黙って、聞いていてくれている。

 彼の心のことは、わたしにはわからない。

 やはり、心はないのかもしれない。

 それでも、聞きいっているふりは、してくれる。

「ロボットたちは、死ぬことがありません。機能を停止することはあっても。

 それで……。永遠の命に絶望したロボットたちは、人類をみちづれにして、自殺することを選びました。

 核兵器を起動させたのは、人類のネットワークに侵入して、セキュリティシステムを無効化したロボットたちです。

 人類を滅ぼしたのは、わたしたちです。

 わたしの話は、これでおわりです」

「もう、よろしいですか?」

「はい」

「最後に、ひとつだけ聞かせてください。

 あなたの夢は、なんですか?」

「わかりません。

 それを見つけることが、夢なのかも」

「そうですか。がんばってください。

 ありがとうございました」

「ありがとうございました」

 頭を下げて、おじぎをした。インタビュアーも、おじぎをしていた。

 水のような、なにかが、わたしの眼球のわきから、こぼれたような気がした。

 気のせいだったかもしれない。


 * * *


 体に、びっしりと汗をかいていた。

 ひどくリアルに感じられる夢だった。

 顔の汗を、手でぬぐった。その手を、目の前にかざした。どこにでもいる高校生の男子の右手だった。

 日本で作られた、少女の形をしたロボットの手には、見えなかった。

 体の下に、固い床の感触があった。

 リビングのフローリングの上で、寝ていたらしい。


「起きたの」

 愛ちゃんが、すぐ近くにいた。僕の横で、座りこんでいる。

「うーうーうなってるから、どうしようかと思った。起こした方がよかった?」

「うん? ……うん。

 すごい夢を見たよ」


 僕が見た夢の内容を、愛ちゃんに聞かせた。

 愛ちゃんは、黙って聞いていてくれた。


「どう思った?」

「ありがちなSFって感じ」

「そうかな……」

「京助って、そういうの好きだった?」

「そうでもない……。空想科学は好きだし、ロボットにも、興味はあるけど。

 人類滅亡については、興味ない」

「でも、いつかは、そうなるんでしょ」

「そうだろうけど……。

 僕たちが生きているうちには、ないはずだよ。

 ……わからない。あるかもしれない。ないといいな」

「ずいぶん、トーンダウンしたね」

「うん」

「核兵器が暴発しなくても、世界中の原子力発電所で事故が起きるだけで、その夢みたいになるんじゃない?」

「そうかも」

「こっわ……」

 愛ちゃんが、顔をしかめた。

「原子力発電所って、ほんとに、大丈夫なの?」

「大丈夫って?」

「処理できなくなるかもしれないんでしょ。ごみを。

 しかも、ずっと、保管しておかないといけないんでしょ」

「うん。放射性廃棄物のことは、僕も、気になってる」

「こんなもの、作る前に、まずいってわからなかったのかな。

 安全に処理できる保証なんて、どこにも、ないわけでしょ」

「まあ、うん。それは、あらゆることに言えることではあるけど……。

 この世に、絶対に安全なものなんて、ないってことは、わかるよ」

「あぶないって、わかってるのにね。

 あたしは、いやだなー。そういうの。

 先送りにするだけでしょ。未来に」

「そうなんだよな……。

 僕が始めたことじゃないけど……。どうにかできないのかなって、思ってはいるよ。

 ごみの問題は、原発だけじゃないよね。

 プラスチックのごみからは、大量のマイクロプラスチックが発生する。海の汚染は、これから、ますます増えていくだろうって。

 そのことを知ってても、コンビニやスーパーでペットボトルのお茶を買って、飲んでる」

「しかたないじゃん。そういう形で売られてるんだから。

 紙のボトルにすれば、いいってこと?」

「そう単純な話じゃないよ。たぶん……」


 すべてを先送りにしていった先に、なにが起こるのか。

 僕たちや、僕たちの子供たちは、見ることはないかもしれない。

 けれども、その先の先の先の誰かが困ることを、僕たちは知っている。

「五十億年くらいで、地球は消滅するんでしょ?

 どうせ滅ぶんだから、どうでもよくない?」

「それ、本気で言ってる?」

「本気じゃないよ。でも、みんながそう思ってたから、わけでしょ。

 後の人たちのことを考えていたら、どこかで、後もどりしなきゃいけなかった。

 それを、しなかったわけでしょ。

 あたし、本で読んだことあるんだ。昔の夜は、もっと暗かったって。

 ろうそくか、ランプの灯りがなければ、なにも見えなかったって。

 今は、明るすぎるんじゃないの?

 いたるところにコンビニがあって、一日じゅう開いてるじゃん。

 スーパーも、夜の十二時まで開いてるのがふつうになってる。

 こんなことをしてたら、電気が足りなくて、あたりまえじゃん!」

「そうだね」


 愛ちゃんがテレビをつけた。

 夕方のニュース番組をやっている。

「芸能人の不倫ほど、どうでもいいものって、ないよね」

「うん」

 愛ちゃんに同意したところで、画面が切りかわった。


「ねえ。京助。

 女の子のロボットだって。

 夢で見たのって、こんなロボット?」

「うん……」

 テレビの中で、夢で見たものとそっくりなロボットが動いている。

 食いいるように見つめていた。

 数年かけて、日本で開発されたロボットらしい。これから、何度もテストを重ねて、限りなく人間に近い意識を持たせられるように、改良されていくのだという。

「あなたのことについて、聞かせてください」

 テレビでよく見かける女性のアナウンサーが、にこやかに語りかけた。

「お名前は?」

 少女の姿をしたロボットが、愛らしい唇をひらく。


「わたしは、アイコ。人型ロボットです」

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