あるお星様のお話

奇行師(kikoumaster)

姫星とキラ星…そして屑星

 ある宇宙そらの片隅に、姫星と呼ばれる光り輝く星がありました

 姫星には沢山の星の友達がいて仲良く暮らしていました


 ある時、散歩中に1人で漂う小さな星と出会います

 姫星はその星に惹かれ

「私は姫星と言います。貴方のお名前は?」

 小さな星は

「私はキラ星と言います」

「小さくて可愛いキラ星さん、もし良かったらお友達になってくれませんか?」

「私で良ければお友達になりたいです」

 こうして姫星とキラ星はお友達になりました

 いつしか姫星とキラ星は姉妹の様に仲良くなり後に親友となりました

 姫星は多くの星の友達を紹介してキラ星達と楽しく暮らしました



 ときは流れてキラ星は光り輝く星へと成長を遂げました

 その光は姫星をも上回る輝きでこれまで友達ではなかった星まで友達になる程でした

 しかしキラ星は自分の光が強いため、姫星の陰りのその変化に気付きませんでした

 じつは友達が減って心の力が少なくなった姫星は輝きに陰りが現れ、ますます心の力は減っていきます



 そんな心を痛める姫星はある時、大きくて輝かない星と出会います

 その星はかつてのキラ星の様に1人で漂っていたので気になり声をかけます

「私は姫星と言います。貴方のお名前は?」

「俺は屑星と言います」

「大きな屑星さん、私と友達になりませんか?」と

「俺なんかで良ければ…」

 こうして姫星と屑星はお友達になりました


 姫星は屑星と出会ってから心を徐々に回復していきました。

 しかしキラ星達とは7日のうち、6日過ごしてましたが屑星とは7日の内、1日しか遊びませんでした

 ある時、姫星は

「1日しか遊べなくてごめんなさい」と謝りました

「たった1日でも会ってくれるなら嬉しいです」

 と言う屑星に姫星は優しさを感じ、だんだんと惹かれていきます

 屑星も孤独だった自分が姫星と過ごす事で心が満たされていくのを感じました

 そしてキラ星とその他の友達には屑星の事を隠して紹介もしませんでした

 いつも大きな屑星の影に隠れていた為、キラ星や周囲の星達は気付かないと思ってました




 更にときは流れて、屑星と隠れて遊んでいた姫星…


 突然、キラ星が現れました

 屑星に隠れて見えない姫星に言います

「姫星……お願い出てきて、お話がしたいの」

 姫星は覚悟した様子で屑星の陰から出てきました

「キラ星…」

 バツの悪そうな顔をしてキラ星の前に出てくる姫星


「私ね、隠れて屑星さんと会ってるの知っていたよ。友達が私を見るのと同じように、私の親友のことをずっと見てたから、でもなんで紹介してくれなかったの?

 新しい友達ができて隠れて遊んでいるのは知っていたけどいつか紹介してくれると信じて待っていたのに…姫星ならいつか言ってくれるって私、ずっと待ってたのに」


 姫星は何も答えず、ただただ震えていた


「どうして何も言ってくれないの? 私のことが信用できないから? 親友だって思ってるのは私だけで、姫星にとってはもう親友じゃないの?」


「…屑星とのことをずっと内緒にしてたのは事実だけど、私は今でもキラ星のことを親友だと思ってる」

「じゃあ、なんで屑星さんのことを私に紹介してくれなかったの? 友達の皆には知られたくないって、こっそり仲良くしていたいって、そう言ってくれればちゃんと秘密にしたのに」


「キラ星なら、打ち明けてもきっと秘密にしてくれるだろうって」


「ならどうして…」


「それはキラ星がどんどん本来の輝きを増す度に、いつもは私に話しかけてくれた友達が友達じゃなくなっていって…でも、キラ星と楽しく暮らそうって言ったのは私だから。昔みたいに独りぼっちの寂しい星に戻れだなんて、言えないよ。」


 屑星は

「キラ星さんにずっと打ち明けなかったのは…」

「もし屑星がキラ星の友達になったら、また私の元を離れていくかもと思って怖かったの…私が頑張って作った友達を取られると思ったから…

 私はもう失いたくないと思ってしまったから…」


 少し沈黙してから

「ねえ、キラ星」

「なに?」

「私のこと、好き?」

「好きだよ。ずっと大好きな親友だよ」

「私も。キラ星のこと、本当に大好き。…でも、それと同じくらい、私はキラ星のことが嫌い、…ごめんね勝手なことばかり…」

「姫星…」


「本当に全部言っちゃった。全部全部……最低だ、ほんともう最低で最悪だ」

 と泣き崩れる姫星


 屑星は

「姫星は自分のことが嫌いなの?」

「嫌いだよ、屑星と仲良しなの秘密にして、自分だけ屑星と楽しく遊んで…こんな自分を、どうやって好きになれっていうの」

 姫星は光が消滅し始めて震えながら

「私は何も失いたくなかった…

 ただそれだけ…

 キラ星、屑星ごめんなさい」

 と言うと心の力を消失した姫星は宇宙そらの下へと堕ちていきました

「姫星!」

 キラ星はすぐに追おうとしましたが沢山の友達と繋がっている為、下には行けませんでした

「キラ星さんはここで待っていて!俺が姫星を必ず連れて帰るから!」

 屑星は言い、姫星を追って宇宙そらの下へ落ちていきます

 屑星には繋がりが姫星としか無かったから…


「気を付けて…無事に戻って…2人とも…」

 キラ星は宇宙そらで姫星たちの無事を祈りながら待ち続ける…




 どれだけの時間ときが流れたか…


 屑星は宇宙そらの底に着くと姫星を見つけました

 姫星は心の力を失っていたので、屑星は姫星の手を繋ぐと今まで姫星との間に育んだ心の力を与えました

 ようやく心を取り戻した姫星は

「ごめんなさい…私の我儘で屑星を1人のままにして誰にも会わせず私だけのものにしてしまって…」

「俺は孤独だったから、姫星と友達になって救われたから…だから

 姫星と君の親友のキラ星さんだけいれば良い。戻ろうキラ星さんの元に」

 屑星は姫星と手を繋いだまま宇宙そらの上へ昇っていきます


 黒い穴、白い穴、ガス雲などの危険なものと遭遇しますが屑星は姫星を守って傷付きながら上昇していきました

 そんな屑星を見ながら姫星は

『暖かいね、屑星の優しい心が手から伝わるよ…ありがとう…』

 そう心で感謝しながら屑星の手を強く握り締めた

 二つの星の心はいつしか友情から恋に変わり愛へと変化していく…

 いつしか屑星と姫星はより強固に繋がって宇宙そらの上に帰ってくる頃には一つの星に変わってました



 宇宙そらへ帰ってくると1人になったキラ星が待っていました

「おかえり、良かった…帰ってきてくれて…そしてごめんね。気が付かなくて…無事に帰ってきてくれてありがとう」

「ごめんねキラ星、そしてありがとう待っててくれて…」

「私と姫星は親友だもの。いつまでも待つよ、屑星さんもお帰り…と言うか夫婦星かな?」


 後に姫星と屑星は夫婦星と呼ばれる星となり、キラ星以上の光の輝きで帰ってきたのでした。

「おかえり、おかえり!」と

 キラ星は夫婦星の周りを回りながら、いつまでも帰ってきてくれた事を喜び2人を祝福して3人はいつまでも仲良く暮らしました

 いつまでも…

 いつまでも…


 終わり

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あるお星様のお話 奇行師(kikoumaster) @kikoumaster99

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