ようこそ迷宮カフェへ。元軍人の兵器少女の喫茶店物語

 ブリュワード王国の都市ルーヴェンの地下迷宮十階層にある不思議な喫茶店『カフェ・ノーラ』の店員ノエルは、見た目はメイド服の美少女だが、その正体はSランクの迷宮探索者で、亡国の禁断の技術で生み出された機械兵士だった。

 精霊と融合した軍事兵器である彼女は、人間離れした身体能力と索敵能力、脚部のバーニアで高速飛翔し、腕部に隠された重火器によって魔物を瞬殺する戦闘力の持ち主だ。

 迷宮に慣れた探索者でも苦戦する階層にある『カフェ・ノーラ』には、いつも閑古鳥が鳴いている。しかし時折、店には迷い込んだり、魔物に追われたり、それぞれ事情を抱えた客が訪れる。

 ノエルが主に受ける依頼は、探索者の救出だ。その依頼のほとんどは遺体の回収という無惨な結末を迎える。普段から感情の起伏が少なく無表情な彼女だが、遺体を発見したときにはかすかな悲しみを覚える。

 戦争を経験し、大切な人と死に別れ、国も守れず、死に場所を失ってただ生きる彼女の境遇を思うと、たまらなく切ない気持ちになります。

 生死に向き合い続ける彼女に救いは訪れるのか。クールだけれどほんのり温かく、冷たくて優しい少女の物語です。


(「魔法と科学の融合」4選/文=愛咲 優詩)