第4話 産声

誰彼凪です。

前回までを読んでくれた方、ありがとうございます。

初見の方も読んでいってくださると嬉しいです。


前回、本作を閲覧してくださった方にご報告です。

各投稿サイトで、処女作である本作の様子を見ましたが、まさかの初日で応援と感想、レビューをそれぞれ何件か頂きました。

一ヶ月ぐらいは地道な作業を覚悟していましたが、何だかいい意味で肩透かしを食らいました!

本当にありがとうございます!

これからも頑張らさせて頂きます!

応援よろしくお願いします!








相生は車が不自由なく入れるぐらいの門を通り抜けた。

施設の中は、一般的な学校や市役所などの建物に酷似していた。

正面にL字型の大きな建物が1つ。

裏側にまっすぐとした建物が1つ。

あとは小さな施設が数棟、肩を寄せあうように乱立している。


爆発が起こったのはどうやら正面の建物らしく、上側が崩れ、所々火が起こっていた。

まるでその造形は巨大な怪物の死骸のようで、思わず見とれてしまう。

そのまま歩みを進める。


その時、突如足に違和感を感じた。


『ん、、、?』


おそらく何かを踏んだのだろうと下を確認する。



一瞬自分の目を疑った。


それはボロボロの死体だった。


『マジかよッ、、、!』


すぐに足を退ける。

あまりにも非現実的すぎて、一瞬ばっちい物を踏んだかのような反応をしてしまった。

しかし、その感覚は一瞬で吹き飛ぶ事になる。


それは、よく見れば自分の周り、


いや見える範囲全てに、ぶちまけられたような様子で散らばっていた。


まるでそこにあるのが普通かのように、そこにあった。



あまりに非現実的な状況。

更に、相生の体に起こりうる最悪のケースが具現化して周りに転がっている。

相生は、一瞬にして恐怖に包まれた。


先程、かなり厳しい状況を乗り越えたのはそうであるが、

所詮相生は一般人であるがため、このような状況は厳しいと言わざるを得ない。

相生は建物の方向へ逃げるように走る。

建物にたどり着いてから、少し深呼吸をした。


『落ち着け、、何があっても動揺しては駄目だ、、、!』


そうだ。これぐらいは予想の範囲内。

爆発があったんだ。死人ぐらい出るだろう。

落ち着け。落ち着け。


落ち着けるはずがないだろう、、、!

この死体がなぜ発生したのかすら分からないのだ。

爆発のせいかもしれないし、

この死体の数を発生させられるほどの化け物が、

ここら一体の死体の倍、どこかにいる可能性もあるのだ。


いくら母の為とはいえ、もうここにうずくまってしまいたい気分だった。

何なら逃げてしまいそうになった。

思わず建物に寄りかかる。

息は激しさを増す。


そのまま座り込み、周囲を見渡した。


建物の入口らしい物が、寄りかかった建物と平行な方向に見える。

その入口は、月明かりと炎の影で不気味な雰囲気を漂わせていた。


少し唇を噛む。

一瞬逃げようとした自分に鞭を打つ。


もう戻れないのなら、こんな現状よりもっと良い未来を信じるしかない。

母の、たった一人で愛情を注いでくれた恩人の行方を案じて、

決心を固めて立ち上がった。

目指すはあの入り口、、、


と、その時。

その入り口に数人の姿が見えた。

見間違えかと思うぐらいに一瞬通りかかっただけだったが、

その正体を頭の中でどうこう案じる前に、姿をそこにもう一度現した。


叫び声が響く。


『止まれぇッッ!!!』


思わず体がこわばる。

相生は怯えたように必死でその姿を捉えた。

入口のすぐ外で五人組の隊形を組み、そのほとんどが銃をこちらに向けている。

距離は30メートルほど。

その全員の目は、瞬きも忘れたように相生を捉えていた。


『何者だッ!!!!』


再び叫んだのは五人組の真ん中の人物。

刀を腰に携え、カジュアルにデザインされたような軍服を着用している。

その周りの四人は、まさに軍服、といった格好で銃を構えていた。

全員傷だらけだった。


相生はその仰々しい姿や、銃を向けられている事実に混乱していた。

返事をしなければいけないと解っているのに、声が全く出ない。


声が出ない、、、!


『答えろッッ!!!』


彼らの感情が熱を持ち始める。

どうやら相手も物凄い混乱状態にあるようで、一歩間違えれば引き金を引くだろう。


それでもなお、声が出ない。


なんと答えればいいか分からないのだ。


さっきの自分の体に起こった事も相まって、何者なのかなんて自分でも分からないというのに、

あの武装集団になんと言えば殺されないかなんて分かるはずもない。


『最終警告だッ!お前は何者なんだッ!』


もう終わりだと思った。


半ば諦めた気持ちだった。


自分が何者なのかわからずに死ぬのかと、

冗談交じりに呟いた。


、、、いや待て、


自分が何者なのかなんて言うのは、聡太にさっき教わったではないか。

それがなんの意味を孕むのかは分からない。

しかし根拠はわからなくても、叫ぶしかない。

相生はその言葉が自分を守るように祈った。


『俺は、、!』

『俺は、保護対象二番です!!!』





彼らはキョトンとしていた。

一度は緊迫していた状況が、一瞬にして冷めていた。



しかし、また熱を感じ始める。


嫌な予感がする。



『、、、なんだそれは!』


失敗だ。


『適当に言葉を並べていたら撃たれないとでも!?』

『決まりだ!ぶっ殺してやる!』


彼らの興奮は最高潮に達し、もはや歯止めの効かない状況だった。

今度こそ終わりだと思った。


また相手の声が響いた。


『射撃用意!!』

『待てぇッ!!!!』



二つの声が響いた。

彼らとは別の、もう一つの声の方向へ顔を向けた。

五階分ぐらいの高さの建物の、その屋上から声が響く。

誰かが覗き込んでいた。


『銃を下ろせ!』


入り口の彼らに向かって叫ぶ。

彼らは戸惑いながらも銃を下ろし、直立不動になる。


『お前たちは任務に戻れ!ここは任せろ!』


屋上の誰かがそう叫ぶと、入り口のその奥へ消えていった。

そのまま呆気にとられていると、


いつの間にか隣に人がいた。

おそらく屋上から飛び降りて来たのだろう。


少し驚いて後ろに下がり、その顔を捉えた。

しかし、それは見覚えのある顔だった。


『ハル君、だよな?』


『、、、!スカイおじさん、、、!』


それは相生の遠い親戚。

たまに家に来てくれる、お父さん代わりのような存在。

『シャルル スカイアロー』だった。

名前の通り外国の人種で、185センチ超えの身長を持つ男。

彼も同様に、カジュアルなデザインの軍服を着ていた。


相生はその顔を、少し顔を上げて見つめた。

安堵と共に疑問が浮かぶ。


何故おじさんはここにいるのだろう。

この人は一般人ではないのか。



『大丈夫だったか!話は聡太から聞いている!』

『スカイおじさん、何でここに、、、?』

『話は後だ!お母さんが運び込まれたのを追ってきたんだろ!?』


乱暴に手を引かれる。


『今、病室で処置中だ!行くぞ!』


スカイアローはそのまま、脇目も振らず走り出した。

少し足がもつれながらもその動きに追順した。


その顔は真剣だった。

もしかして、母はかなり悪い様態なのかと心配になる。

相生は再びスカイアローに声をかけようとした。


しかし、スカイアローは急に足を止めた。

あまりに急なストップで思わず転びかける。


『、、、!おじさん!?』


動揺任せにスカイアローに声をかけた相生だったが、

スカイアローがただ一点を見つめているのを見てその方向に目を移す。

その方向には、家で遭遇したのと同じな、まるでゾンビのような人間が群れになってそこにいた。

さっきまで死体が散乱していたはずの場所なのに、死体はなかった。


相生は少し恐怖を感じた。

その気持ちを悟ったのか、手を離して相生の前へ出る。

少しこっちを見て、視線を戻してから言った。


『ハルくん。少し教えてあげよう。』

『、、、?』

『色々わからないことばかりだと思うが、まずは君の体に起こったことについて。

君の体に電気が走ったり、体が勝手に動いたりしたことについてだが、、、』


スカイアローはおもむろに携帯を取り出した。


『君、ひいては聡太や僕には超能力が備わっている。

それが要因となって起こった事だというのをまず理解してもらいたい。

そして、その超能力の種類は二つ。

「環境的能力」と「血統的能力」だ。』


スカイアローは向かってき始めたゾンビに向かって構えを取った。


『環境的能力は「才能があれば誰でも身に着けられる能力」で、体中のあるエネルギーを電気に変換し顕現させる。

ただし、特殊な訓練を要するので、聡太はもともと使えなかった。』


『じゃあ俺はどうして、、、?』


『まあ待て。』


スカイアローは一息置いた。

よく見ると手に持った携帯が震えている。


『そして、血統的能力。

これは決められた血統にしか発生しない能力だ。

その内容は、なぜこうなるのか説明できないものが多い。

環境的能力のように理屈がはっきりしていない。

例としては、念力だとか、引力だとかを操れたりするものだ。

人によって違うから一概には言えないが、、、』


スカイアローは携帯を地面に落とした。

着地と同時に、震えていた携帯が変形しだす。

どんどん携帯の体積が増えていく。


『その能力を自覚するのは、18歳から前だと言われている。

おそらくハルくんのその現象は、その自覚症状の延長線だろう。

何かが引き金になったのだろうね。本能が覚えていた能力の使い方を、ただ思い出しただけだ。』


だんだんその携帯は、人型を擁してきた。

どこからともなく物質が発生して、だんだん人並みに大きくなる。


『ここまで言えばひとまず十分だ。あとはここを方付けて、ゆっくり話そう。

そして今から見せるのは、これもまた君の中に眠る特殊能力の一例。

世界の常識を覆す、恐怖の軍事力。

我らが一族の、揺るがない栄光の力。』


その携帯はもう原型を留めていなかった。

デザインの奇抜な、それでいて無骨な、人型ロボットになっていた。


『俺の能力は、様々な機械から戦闘ロボットを一つ創り出す、概念的な能力だ。』


ロボットが動き出す。


『少し見てろ。』


スカイアローは走り出した。







次回は明日、もしくは明後日公開の予定です。

更新が遅いのは、まだ小説に慣れておらず書くのに時間がかかるうえ、忙しく限られた時間内で執筆しているためです。

申し訳ありません。お許しください。

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