第3話 そして紡ぐ
『お前を、始末する、、、!』
『、、、は?』
聡太の言う意味がわからない。
いや、そもそもわからないことだらけだ。
さっきのあいつは何なのか。
さっきの自分は何なのか。
なぜ聡太が敵意をむき出しにしているのか。
なぜ聡太の体に電流が走っているのか。
上げればきりがない。
また聡太が口を開く。
『なんとか言えよ!』
『なんとかって、、俺が言いたいぐらいだよ!なんにもわかんねえのはこっちなんだ!!』
聡太は顔をしかめる。
『嘘を言うな!!大体あの能力は一般人が使えるもんじゃない!!』
『そんなの俺だって分かる!普通は体に電気が走ったり勝手に体が動いたりするはずない!だから分かんねえんだよ!』
『そうじゃない!!』
またわからないことが増えた。何が違うのか。
『何が違うっていうんだ!俺は、、、』
いや違う。今は違うのだ。
『それより聡太聞いてくれ!今俺の母さんが重症なんだ!今すぐ助けがないと!』
『そんなのまかり通るわけがないだろ!!逃げる気か!?お前の母さんも内通者か!?』
『聡太!』
『だいたいもう言い逃れなんて、、、!』
『聡太!』
俺の呼びかけに聡太は静かになった。
少し静寂が流れる。
『聡太、、!信じてくれ!!』
『、、、』
『お前が混乱している理由も、自分のあの力も、襲ってきたやつの正体も、見当がつかない。全く嘘なんてついていないんだ!』
聡太の目が横に流れる。
『そんなこと言ったって、、、』
『それが全てだ!』
聡太の前に向き直る。
『信じてくれ。』
聡太は俺をじっと見た。
俺もあいつの顔を見た。
『頼む。』
『、、、』
何年も見た顔だ。
聡太がなぜ電気をまとっているかは気になるが、
どんな事があっても聡太やあいつらだけは、絶対俺の味方だと思う。
混乱しているのはどちらもそうだが、味方だと思うならなら頼るべきだ。
きっと信じてくれるだろう。
ぬるい風が吹く。
静寂は深く染まっていく。
焦りに加速させられた心臓の鼓動の音が聞こえてしまうほど静寂だった。
聡太は目を下へ泳がせ、溜息をつく。
やがて口を開いた。
『、、、分かった。』
『、、、!』
『ハルの母さんのところへ案内してくれ。一応、応急処置ぐらいならできるかもしれない。』
『ありがとう、、、!』
やはり信じてくれた。安堵と共にため息を吐く。
『こっちだ!!』
階段を駆け上がり、母のところへ案内する。
そのまま血まみれの母の元へ移動した。
改めて見るとひどい怪我だ。
異常事態に面積を取られていた心を、心配が再び占めた。
死なないでくれ。
聡太はそのまま母へ駆け寄る。
『、、、息はある。だが一刻を争う様態だ。今から山を降りるんじゃ間に合わないかもしれない。』
『そんな、どうするんだ!』
思わず声を荒げる。
『俺が今からハルの母さんを担いで、山頂の施設へ運び込む他ないな。』
『、、、!さっき爆発してたじゃんか!』
聡太が母を背負いながら答える
『そこまで被害はなかった。病院機能も麻痺してはいないと思う。』
『病院機能があるのか!?というか俺はどうすればいい!なにか手伝えることはないか!?田淵たちは!?』
聡太はこの言葉を無視して階段を下る。
『聡太!そもそもなんでこんなことに、、、』
遮るように聡太は言う。
『お前は今から山頂の施設へ向かえ。
今は何もわからなくても、そこで全て説明してもらえるだろう。
俺は最短ルートで山を登るが、ハルには無理だから普通の道で向かえ。
色々混乱しているだろうが落ち着いて向かうんだ。
襲いかかって来るやつは全員避けろ。
とにかく施設に入るまで走れ。
何があっても動揺するんじゃないぞ。』
妙に説得力のある言葉だった。
そのまま外に出る。
不安を押し殺し、聡太へ言葉をかける。
『聡太、よくわからないけど頼むぞ、、、』
聡太は山頂の施設を眺めて、こっちへ顔だけ向けて言う。
『施設に入ったら、保護対象二番
『保護対象二番、、、?、、覚えておく。』
俺は保護されていたのか?一体誰が?なんのために?一番は誰だ?
そんな事を考えていると、それが分かったのか少し聡太の口角が上がる。
『とにかくお前は大丈夫だ。ハルの母さんも任せろ。あと田淵たちは無事だ。』
そして聡太は息をつき目線を逸してこう言う。
『これから地獄だな。ハル。』
それはものすごい物憂げな表情だった。
間髪入れずに聡太は走り出した。
人間離れした跳躍で家を超えて、そのまま見えなくなった。
『一体何なんだ。聡太といい、この状況といい、、まるで異世界みたいだ。』
『それに地獄って、、』
少し体がこわばる。
これから、ということは今以上に大変なことが起こるのか。
一体施設では何が起きたのか。何を知る羽目になるのか。
色々な疲れに恐怖や心配、不安が合わさって思わず唇を噛む。
もう動きたくないとまで思った。
でも、今は頑張らなくては。
『よし。』
決意を固めて、走り出した。
しばらく爆発音が響いていたが、だんだん止んでくる。
少し整備不足が目立つ道路を、ただひたすらに走る。
向こうで燃え盛る施設に目線を合わせて走る。
15分ほどして特に何も異常はなく、施設の門の前へ立った。
一部が崩れた施設を前にして少したじろぐ。
勇気を胸に思い直す。
『待ってろ。』
そのまま施設へ歩みを進めた。
三話目までお付き合いいただきありがとうございました。
続きも綴らせていただきますが、一週間ほど執筆活動に入れない状況が続きますのでその後かと思います。
コメントありましたらぜひお願いします。上のとおりですので返信は遅くなるかもです。フォローも是非お願いします。
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