草むらから突然幼馴染が飛び出してきた。どうする?

鬼頭星之衛

草むらから突然幼馴染が飛び出してきた。どうする?




 1,攻撃する。◁


 ―――ピッ


 タツナミは幼馴染に攻撃した。


 しかし、幼馴染にはきかなかった。


 2,説得する。◁


 ―――ピッ


 タツナミは幼馴染に説得をこころみた。


 しかし、幼馴染は聞く耳をもたなかった。


 3,にげる。◁


 ―――ピッ


 タツナミはにげようとした。


 しかし、まわりこまれてしまった。


 4,セッ○スする。◁


 ・・・・・・・・


「クソゲーじゃねぇかぁぁッ!!!」


 大きい声を上げたとは裏腹に、俺は手に持っていたコントローラーをそっと床に置いた。

 どれだけ怒っても物や人に当たるのは良くない。

 荒ぶる心とは裏腹に紳士の振る舞をするのが大事だ。


「ちょっと!いきなり大きな声出さないでよー! びっくりするじゃん!」


 びっくりしてるはこっちの方だつぅーの。


「なんなんだこのゲームは?! オマエがわざわざオレを呼び出してこんなのやらせたかったのか?」


「どう? 面白かった? 約一ヶ月の力作だよー 最近のアプリは凄いね。素人の私でもこんな立派なゲーム作れちゃうんだから。しかも、Bluetoothでコントローラーとスマホも繋げられるんだね」


 どこが立派なのか・・・?

 ゲームとしての体を全くなしていないんだが・・・


 俺たちは床に座り、小さい座卓の上にスマホを立て掛けている。

 そのスマホの画面には『お』と顔に書かれた棒人間に4つの選択肢。

 その内の3つは実質ないに等しい。

 最後の選択肢に関してはなんか怖いから選択したくない。


 ・・・・・・・・・・


 これを凄いと誇れることが凄いわ。

 まぁコイツ、あんまりゲームとかした事なさそうだしな・・・

 無知とは恐ろしい。

 ん? ちょっと待てよ。


「まさかッ?! 一ヶ月もかかったって事は最後の4の選択肢を選ぶと、そういった行為の映像が出てくるのか?!」


「えー、何言ってるの? そんなの出てこないよ? 全年齢対象で作ったんだからねッ」


 よく分からんが、人差し指をオレに向けながら、ドヤ顔も一緒に向けてくる。


「はぁー、オレが大事な話があるって呼び出しに一切応じずに、一ヶ月間もこんなの作ってたのかよ・・・」


 額に手を当てて大袈裟な仕草をして見せた。


「なッ?! こんなのってひどくない? わたしだって色々考えてこれ作ったんだよ!」


「じゃ、なんでこんなの作ったんだよ?」


「だって、知ってる? 幼馴染って負けヒロインなんだよ。 幼馴染ってだけで負けが確定してるんだよ? ひどくない?! だから、負けない、勝確ヒロインを自作したの」


「・・・言わんとしている事はなんとなく分かるけど、それは物語の中だけの話だろ? しかも、オマエのこのゲームだとすでに主人公と幼馴染は敵対してるっぽいし、選択肢の4に至っては過程を数段すっ飛ばしてる気がするが・・・?」


「なによッ! せっかく一番最初にプレイさせてあげたのに!」


 そんなにプンプン怒られてもオレの意見は変わらんぞ?

 こいつとの付き合いはそれなりに長いつもりだが、たまに突拍子もない行動をするから困る。

 しかし、怒った顔もかわいいと思ってしまう。

 大きな瞳に長く綺麗なまつ毛。

 ショートヘアの片方を耳にかけている為、少し見えるうなじに見惚れてしまう。

 

 ・・・・・・・・・


 って、見惚れている場合じゃない。そんなことよりもオレには大事な話があるんだ。


「なぁ、ヒヨリ」


「うん、なに?」


 俺の表情が真剣なものに変わり、声音も真面目なトーンになったことによってヒヨリも真面目な表情を浮かべた。


「俺さぁ、ヒヨリの事が好きだ」


「ふぇ?!」


 なんちゅー声を出してるだ。

 ヒヨリは驚いているみたいだが、話を続けるぞ。


「一か月以上前にさぁ、休みの日に二人で出掛けたじゃん。二人で出掛けるなんて珍しい事じゃないし、いつも一緒にいて気を遣わなくいいから俺も楽なんだよ」


「まぁ、私もたっちゃんと一緒にいてて楽・・・かな」


「それでさぁ、今まであんまり意識してなかったんだけど、この前の時に不意にオマエがこけそうになって俺が支えた事があったじゃん。その時に、体が密着して、至近距離でオマエの顔を見た時・・・すごいドキドキしたんだよ」


「そ、そうなんだ・・・」


「それでこの気持ちはなんだろうって考えたんだよ。結論から言って、多分好きって気持ちなんだろうと思ったんだよ。それで意を決してオマエに告白しようと思ったんだよ。それなのに・・・」


 俺は一つ大きく息を吸い込んだ。


「俺が大事な話があるって呼び出しに応じずに何をしているかと思えばこんなクソゲー作ってたのかよッ! 俺のこの一か月間のドキドキを返してくれよ。生きた心地しなかっただからなッ!」


「ご、ごめん。でも、怒らないでよ。たっちゃんがそんな風に思ってたなんて知らなかったんだから」


「あっ、悪い。それもそうだな」


 俺の話を聞いて、ヒヨリは俯いてしまった。

 なんだその反応は? オマエは俺の事どう思ってるんだ?

 ヤバイ・・・ 心臓が飛び出そうだ。


「お、おい。ヒヨリ・・・」


 顔を上げたヒヨリは泣いていた。


「私もたっちゃんの事好き。私もあの時、たっちゃんに支えられた時、すごいドキドキした。でも、同時に怖くなっちゃった」


「怖くなった?どういう事だ・・・?」


「だって、さっきも言ったでしょ? 幼馴染は負けヒロインなんだよ。たっちゃんの事好きになっても報われないなんて辛いじゃん。悲しいじゃん」


 ちょっと待て。ヒヨリは何を言っているんだ。

 俺とヒヨリが幼馴染・・・?


「だから、たっちゃんとは恋人同士になれない。今は良くても、いずれお互いの事を嫌いになって別れる未来がくる。幼馴染ってそういうものなの・・・」


「あの~、ヒヨリさん。一つツッコんでいいかな?」


「ごめん、たっちゃんの想いには答えられない」


「いや、俺たち幼馴染じゃないだろ!」


「えっ?」


 何をそんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているんだ。

 お前は何か根本から勘違いをしているじゃなのか?


「私たちは幼馴染でしょ? だって幼い頃から知り合いじゃん!」


「いや、俺とオマエが知り合ったのって、中二だろ? 幼いって言えるか?」


「中二なんてまだまだ子供じゃんッ!」


「いや、子供だけど、この場合の幼いはもっと下の年齢だと思うぞ」


「じゃ、いくつぐらいよ?」


「う~ん、大体幼稚園とか上の年齢でも小学校低学年までじゃないか?」


 幼馴染が何歳からの知り合いって定義はそもそもあるのか?

 ラノベだと大概は幼稚園から、ヘタすれば生まれた時から一緒ってパターンもあるからな。

 しかも、大概は家が隣同士。お互いの両親も仲が良いって事が多い。

 俺とヒヨリは小学校の校区が違っているので、当然家は隣同士ではない。

 お互いの両親も俺とヒヨリの事は知っているが、両親同士は大して面識はないだろう。

 俺とヒヨリは中学校から同じ学校に通っているが、クラスが一緒になって仲良くなったのが中二からだ。

 中三ではクラスは別々になった。

 高校も同じ所に通っているが、一年の時はクラスが一緒だったのに二年の今はまた別々のクラスになっている。

 だから、客観的に見ても俺とヒヨリは幼馴染ではない。


「じゃ、本当に私とたっちゃんは幼馴染じゃないの?」


「本当かどうかは知らんが、少なくとも俺は、オマエが俺の幼馴染だと思った事は一度もない」


「なーんだ。そっか・・・」


 一人納得したような顔をしているが、俺はまだオマエからちゃんとした答えを聞いていないからな。

 俺の事好きって言ってくれたけど、勘違いしていたとは言え、さっき一度断られてるからな。


「なぁ、ヒヨリ。もう一度言うぞ。俺はオマエの事が好きだ。付き合ってくれ」


「うん、私もたっちゃんの事好き・・・」


 ヒヨリは床に置いてある俺の手にそっと自分の手を重ねた。

 嬉しいやら恥ずかしいやらでお互い見つめ合いながら無言の時が流れた。


 どのぐらい見つめ合っただろう。ヒヨリが徐に床に置いてあったコントローラーを手にとった。

 そして、十字キーを操作した。


 4,セッ〇スする。◁


 ―――ピッ


 すると、スマホの画面いっぱいに無数の濃い赤色と薄いピンク色のハートが溢れかえった。


「セッ〇スする?」


 俺はその問いに大きく頷いた。


 その後、俺がAボタンを必死に連打した事は言うまでもない。





αβγδεεδγβααβγδεεδγβα

あとがき

初期設定を思いついたまでは良かったですが、書いている内によく分からなくなりました。

まぁ終わりよければ全て良しッ!


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