第八章 夫の返信
夫の入院の荷物や洗濯物を整理していると、洗面所からブーンと音が聞こえた。
そっと覗くと、圭君が鏡に向かって電動シェーバーを顔にあてている。
夫は家に着くと、修理から戻った携帯電話の設定をしながら、暫らくポチポチといじっていた。
そして、おもむろに洗面所に向かったのだった。
剃り終わると、水で顔をバシャバシャと洗っている。
タオルで拭きながらリビングに戻ってきた。
「フゥッー・・・。」
サッパリした顔と嬉しそうな表情で、圭君は大きな息を吐き出した。
さっきまでの無精ひげがなくなり、イケメン顔にもどった夫の顔を、私も眩しそうに見上げた。
すると、圭君は座り込むなり、私を引き寄せた。
「キャッ・・・。」
小さく悲鳴をあげる私を、ギュッと抱きしめてくれる。
「圭君・・・。」
私も広い背中に両腕を廻し、ギュッとした。
心配した分、今の安心感が心地良い。
私はウットリと、夫の温もりに浸っていた。
「んっ・・・・。」
圭君の唇が重なる。
柔らかな感触に、私は抵抗できなかった。
そのまま夫の背中をギュッとしながら、目を閉じていた。
私のバックの中。
携帯電話には返信のメッセージが、何通も届いていたようだ。
ラインの画面には。
圭君、夫からの返信が。
「今朝のこと、ゴメンナサイ。」
→怒ってなんか、ないよ。
「圭君、返事して。」
→ゴメン、あの時、手術中だったから。
「怒ってるなら、謝るから」
→だから、怒ってないって。
「おヒゲ、チクチクしても絶対、言わないから。」
→本当だなぁ?
「ねぇ、お願い。」
→ゆい。
「返事、ください。」
→愛してるよ。
「チュウ、して!」
→いっぱい、してあげるよ!
私は一生、このラインを消さないで保存します。
大好きな人からの返信だから。
神様、ありがとうございました。
チュー、したい! 進藤 進 @0035toto
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