第113話孝太の望み             (完)

田中珈琲豆店でのイベントも成功し、柿崎パン店と田中珈琲豆店の評判はさらに高まり、経営はさらに安定、両店舗は完全に軌道に乗った。


その後、数週間が過ぎたある日、完全休養日であるのに、孝太は、朝早く家を出た。

その考太に気づいた真奈が、後を追った。


真奈

「寝てればいいのに、せっかくの休みでしょ?」

孝太は苦笑。

「たまには散歩、と思ってね」

「真奈の方こそ」

「起こしちゃったかな」

真奈は歩きながら、顔を赤くする。

「兄ちゃん、いろいろよかったね、おめでとう」

孝太

「みんなのおかげ、うれしいよ、協力してくれて」


二人は、いつの間にか、山下公園に入っている。


考太

「真奈にアイスでも、思ったけれど、まだ売店が開いていないね」

真奈はプッと吹く。

「もう、子供じゃないの」

孝太は横を向く。

「そうか、恋人はできたか?」

真奈は、また、笑う。

「あのさ、忙しくて、身体も神経もバテバテで、そんな暇ないって」

「兄ちゃん、毎日一緒でわかるでしょ?」


そして、肩を考太に、ぶつける。

「自分の方こそ、どうするの?」

孝太は「え?」という顔。

「どうするって?何を?」

真奈は、頭を抱えた。

「だから、それが、私の一番の悩みなの」

孝太は空を見上げた。

「天が決める・・・とはいわないよ」

「俺の心は、とっくに決まっている」

真奈は、首を横に振る。

「兄ちゃん、そんな簡単な話ではないと思うよ」


孝太は、笑った。

「俺は悩むけれど、決める時には決めるよ」

真奈は「うん」と、ホッとした顔。

しかし、すぐに含みのある笑顔。

「美和さんも、ヴィヴィアンも諦めないって」

「奈津美さんも、気があるみたい」

「話が決まっても、当分は店に残るらしい」


孝太は、それには答えず、遥か彼方の海を見た。

「いつかは、後継者、結婚も決まる前に何だけれどさ」

真奈

「うん?何?」

孝太

「最低でも、三人以上の子供、それを後継者にしたい」

真奈

「その理由は?」

孝太は真顔。

「一人はパン屋」

「もう一人はケーキ屋」

真奈は孝太の次の言葉を読んだ。

「もう一人は、饅頭屋?」


孝太は、大声で笑い出している。



                             (完)

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柿崎孝太の悩み 舞夢 @maimu

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