第112話クイーンホテルトップの惨い末路 孝太の不安が消える

孝太に対して、まずイタリア大使が深く頭を下げた。

「孝太君、本当に申し訳ない」

「あのクイーンホテルの男は、私の一族に仕えていた」

「100年前は、下僕、しかも低いクラスの家柄だったけれど」

「金稼ぎだけは好きで、いつのまにか出世した」

「もちろん、今回の酷い話を聞いて、一族からは追放したが」

「私の気持ちは、それではおさまらない」


フランス大使夫人

「イタリア大使は教皇庁とも関係が深い、ローマでも深い歴史を誇る大貴族です」

「彼の一族から追放させられるとなれば、教皇庁からも出入り禁止です」


ベルギー大使夫人

「今回の孝太君への暴言だけではないの」

「人種差別、女性差別、身分差別的な言動が多過ぎる」

「単なる成り上がり男なのに」


イギリス大使

「愛人騒動も多いし」

「我が国の女王に対しても、敬意を欠く行為があった」


ドイツ大使

「様々な悪行を考慮して、我々は、彼が経営者である限り、クイーンホテルを使用しないことを申し合わせた」

「彼にも通告したし、マスコミでも発表した」

「私たちの他には、教皇庁、EU関係、つまりヨーロッパの名立たる団体が、彼の関係するクイーンホテルを嫌がって、利用しなくなる」


孝太は黙って頷いて、聞いている。


フランス大使のスマホが光った。

フランス大使が、厳しい顔で、口を開いた。

「フランス本国からの情報です」

「彼は・・・殺されたようだ」

「なんでも、マルセイユの海岸で・・・首を切られていて・・・かなりな泥酔の証拠もあり?」

「マルセイユのクイーンホテルで、女性と酷い痴話喧嘩をしている様子が目撃されているとか、その席に極道がいたとか?」


ベルギー大使夫人

「要するに、まともな死に方ではないと」

「自業自得かな」


フランス大使が、孝太の顔を見た。

「彼が殺されるに至った経緯は、現段階では明確ではないけれど」

「少なくとも、孝太君への脅威はなくなった」


孝太は、厳しい顔ながら、少し安心した様子。

「私としては、万が一の時は、パン焼きもケーキもやめようと思っていましたので」


イタリア大使夫人が、いきなり立って、孝太の手を握る。

「この手は、人に幸せ、美食の楽しみを伝える神の手」

「決して、そんなことは言わせません」

「私たちが、孝太を守ります」


全員がイタリア大使夫人の言葉に頷くなか、孝太は珍しく目を潤ませている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る