7話 出撃!! 愛しき欠陥兵器

王国歴216年 11月6日03時16分

戦艦フィーア 後部甲板


後部甲板に到着し、格納庫の扉を開けた俺の視界に入ってきたのは、

長い4脚を畳み、上からボロ布が被せてあるアクアストライダーだった。


「あれで戦うなんて無茶だ!」


いつの間にか追いかけてきていたラースに肩を掴まれる。


「…戦闘中だぞ。持ち場にいなくていいのか?」


「そんなことはどうでもいい!ろくな武装も付いていなければ搭乗員を守る最低限の装備すらない。あんなのただの水に浮く棺桶だろ!」


「ラースもその棺桶に試験の時は楽しそうに乗ってただろ」


「実戦となると話は違う。あれは遊びみたいなものだったが…今回は死ぬかもしれないんだぞ」


そう言うラースはいつになく真剣な表情をしていた。


「…心配してくれてありがとうな。だけど、このままだと間違いなくヘイルダムやディアナ、フィーアも沈められる。やれることはやりたいんだ」


「やる気なんだな。本当に…」


「ああ」


「……お前は士官学校の時からこういうところで頑固な性格だったからな。俺が言ったところで今更変わらないよな」


「もう四年も一緒にいるんだ。これくらい慣れっこだろ」


「そうだったな。…この艦は何としても守ってやるから絶対に帰ってこい。死ぬなよ、クルト」


「おう!」



ー戦艦フィーア 指揮所内ー



「艦長!速力が落ちたヘイルダムと突如針路を反転したディアナに砲撃が集中しています!」


「ディアナはヘイルダムを守るため、要塞方向に針路を変えたな…。アンナ准尉!」


「は!」


「こちらへの砲撃が散発的になっている今が好機だ。クルト少尉の状況を確認してくれ」


「了解しました!」


「針路そのまま。急ぎアクアストライダーの発進準備を!」



王国歴216年 11月6日03時19分

戦艦フィーア 後部格納庫


〈クルト少尉、聞こえますか?〉


アクアストライダーに乗り込み、動力を始動させた直後、通信機からアンナの声が聞こえてきた。


「聞こえてるよ。感度良好だ」


〈良かったです。本艦への砲撃が手薄になっている今が発進の好機です。艦長より急ぎ発進準備せよと〉


「どうして砲撃が手薄に…」


「了解。精々頑張ってくるよ」


外で待機しているラースに合図を送るとクレーンが動き出し、アクアストライダーはワイヤーで吊り下げられた状態で海へと移動する。


〈こちらでも逐一状況を報告します。…無理はなさらずどうかお気を付けて〉


「ありがとう」


少しして、海上にクレーンのアームがせり出し、ゆっくりとワイヤーが降りていく。

ここまで至近弾が一発も来ていないのは運がいいというべきなのか。

固定されていたワイヤーが切り離され、軽く機体が揺れた後、脚先のフロートが海面に着水する感覚が伝わる。

操縦席に備え付けてある各計器を確認し、問題がないことを確認した俺はフィーアの指揮所へ通信を入れる。


「アクアストライダーより指揮所へ。発進準備完了」


〈指揮所了解。アクアストライダー発進願います!〉


「了解!」

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落ちこぼれ海軍士官だった俺がクーデターに巻き込まれ、昼寝する時間を奪われたので、姫様と叛乱したがもう遅い? スズツキスズ @suzutukisuzu

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