第7話 エピローグ


「結局、どの公達も帰っては来なかったねえ」

 竹取の長者は嘆息した。一人は帰っては来たが、あれはもう公達ではなかった。

 高貴なる御方々のお声がかかったときは有頂天だったのに、姫があんな難題を出すものだから、すべて水の泡と消えてしまった。

 広い座敷の中央に鎮座ましました姫はコロコロと笑った。

「私は少しも惜しくありませんよ」

 本当にここまで美しい女性は今まで見たことはない。この娘が嫁ぐとすれば、相手はどのような男なのであろう。竹取の長者は本気でそれを知りたいと思った。

 空石が語った輝夜姫の正体に関しては敢えて無視することとした。きっと空石めの悔し紛れのデタラメに違いない。こんなに美しい姫の正体が妖怪などとそんなことがあるわけがない。

 この間、姫は恐れ多くも帝から手紙を頂戴した。帝からの手紙の内容は誰にも見せずに、姫は長い長い返事をしたたためると、それを帝に送り返した。帝からの連絡はそれで最後となった。

 帝にはいったいどのような宝物を要求したのだろうか?

 それはもしや日の本の国を根本から揺るがすような代物ではなかったのだろうか。

 竹取の長者はそれ以上考えるのを止めた。

 恐ろしかったのだ。


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御伽噺異聞:五人の行方 のいげる @noigel

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